おちちうえと伯耆大山
2年前、家内のお父さん、つまり俺のお義父さん、通称おちちうえのたっての希望で二人で富士山に登った。 それまで登山に全く縁の無かったおちちうえが、いきなり日本一の富士山登頂。 御年四捨五入70歳。 この富士山登山のおかげで、どうも山登りに目覚められたようだ。 下山後、よくテレビのCMでやってるシリーズ雑誌、1冊買うとシリーズ最後まで買わなければという強迫観念にかられてしまうあの雑誌あるでしょ。1冊に2座、これを合計50冊ってのがあって、それで日本百名山シリーズを全部購入されてしまった。 「渓遊ちゃん、ワシはのぉ、槍ヶ岳に登りたいんじゃ」(広島弁) 気持ちはよ~く分かる。 山を登る人なら誰でも憧れる、あの見事なとんがりを写真で見せられたら、誰でも登りたくなるよなあ。 しかし一発勝負の富士山と違って、槍ヶ岳の場合は、普通に7時間とか歩いても3日くらいはかかるので、いきなり「じゃ、行きましょう!」とも言えず。 「お義父さん、まずは手近に日帰りで行ける山に行きましょう。」 ということで、鳥取の大山(だいせん)に登ることになった。 シルバーウィークの初日に家内の郷の広島へ移動。 そして、今朝3時出発で、広島から車で登山口の大山寺へ。 大山寺から見上げる大山は頂上付近だけガスっていた。 「はぁ、ずっと登りかいの!やれんのぉ!」(広島弁) 富士山をミニチュアにしたような大山はずっと登りなのである。 そして、裾野に広がる西日本最大級のブナの原生林は、湿度が高く、汗だくだく。 六合目避難小屋。 連休ってこともあり、人だらけ。 三鈷峰(さんこほう)と左奥に甲ヶ山(かぶとがぜん) 小学生だった頃、オヤジに連れられて登った甲ヶ山、懐かしい山だ。 我がふるさと、鳥取およびその周辺地域では、○○山と書けば、その山のことを”せん”と読む習慣がある。 だから、大山はだいせん。 だが、大山という漢字の山は、他の地方にもあるので、我々ジモティは敢えて伯耆の国の大山で、伯耆大山と呼ぶことがある。 霞はかかっているが、ぼちぼち下界も見えて、高度感バッチリ。 見下ろせば、人だらけ。 おちちうえは、20分ごとに小休止で、ゆっくりゆっくりじわりじわりと歩いていらっしゃる。 標高が上がれば、ハイマツが生えそうだが、ここ大山では、ダイセンキャラボクの純林となる。 イチイの仲間。 で、この赤い実、実は甘くて旨い。歩きながらつまんでは口に含んで、種だけプッと吹き出していた。(種には毒があるとか) 7時に大山寺を出発してから4時間半後の11時半、無事大山山頂に到着。 1,710m。 おちちうえ、ようやく一安心。 さて、恒例イベントのピークラーメンは、今日はどん兵衛。 頂上の気温は14度くらいで、結構寒い。あったかどん兵衛のおかげで、胃袋から温まる。 のんびりコーヒーなんぞも入れて、ピークで1時間。 残念ながら、頂上はガスってて、特に南側の岡山県側の展望が得られず、ちと残念。 下りは、途中から行者谷(ぎょうじゃだに)コースへ。 大山には小学校~中学校の時に3回登ったが、このコースは今回が初めて。 木道や階段で一気に元谷(もとだに)まで急降下。 おちちうえも足にきているようで、ゆっくりゆっくり転ばぬよう歩かれている。 周囲はうっそうとしたブナ林。 元谷に下りると、険しい大山の北壁をゴージャスに眺められる。 標高1,700mで比較的気軽に日帰りできる大山なのだが、実は大山寺からの標高差は900mもあって、登り応えがあるし、てっぺんは十分寒いので、ナメたらバチがあたる山なのである。 その上、近年のオーバーユースで登山道が痛んで、その補修のために岩を金属メッシュに入れて段々が無数に作られている。その段差が自分の膝の高さよりもあるので、足への負担がでかい。 それが特に下りで負担となって、今日も膝がもたなくなってずっこける人を何人も見かけた。 そんな山である。 元谷からは傾斜も緩くなり、あとは惰性で大山寺へ。 ただ、おちちうえには、大神山神社の参道の石畳道がかなりつらかったとのこと。 だが、無事下山。 すかさず、近くの宿のお風呂に入らせて頂いて、ざっぷり体を綺麗にした。 下山直後の風呂はええですなぁ。 おちちうえも、ぷはぁとご満悦の様子。 車での帰り道、溝口インター手前で車のバックミラーに映った大山が美しかったものだから、つい車を停めてカメラを取り出した。 20数年ぶりに登った大山は、やっぱり清く正しい我がふるさとの名峰なのであった。 「渓遊ちゃん、ワシは、はぁ満足したよぉ。登れて良かったよぉ。ありがとうのぉ。またチャンスがあったら頼みますわ。」(広島弁) 終わり