テーマ:海外生活(7779)
カテゴリ:茶会記
士門先生にお稽古をつけて頂いた上に、夕食をご馳走になりました。
本当に有難いことです。 ----- 先生は小柄な女性ではありますが、そのエネルギーは本当にすごい。 もともと、京都の公家出身のお嬢様で、それにまつわる話も色々聞かせて頂きましたが、それは割愛。 大学医学部在学中に、事故にあわれ、医学の道を断念。 東欧を2年間旅し(「ユーゴスラビアで着物姿」だったそうです) その中で出会った、ドイツ人男性(この方も「シモン」だったそうです)と恋に落ち、 3年間の遠距離恋愛(この間に嵯峨流の免許を取得)を経て渡独。 大学で日本文化の紹介を行いながら、アーティストとしても活躍。 ----- 先生は言います。 「お茶をやるからには、ちゃんと良い着物を買いなさいと言います。」 「形だけ、というのなら、私がやる意味はありません。」 強い。 凛と胸を張って歩んで来られた生き様が、言葉の端々から伺えます。 「ユダヤ商人」と命懸けで渡り合ったお話もお伺いしましたが、これも割愛。 ----- 尾崎放哉の話をさせて頂いたら、お礼にと、テレビで見たという、 新橋の靴磨きの女性の話をして頂きました。 ===== 80歳を越えられた、その女性が、靴磨きを始められたのは、50年以上も前のこと。 東北から出てきた彼女は、夫を戦争で失い、子供を抱え、途方に暮れていました。 無学を恥じる彼女に、職安が紹介したのは、靴磨きの仕事。 「それなら出来る」 と彼女は、この仕事を自分の天職と定めます。 息子が小学校に上がった時、 「お母さん、靴磨きの仕事はやめてくれ。」 と言ったそうです。理由を問うと 「お母さんが靴磨きだと馬鹿にされた。」 と。彼女は息子に諭しました。 「何も恥じることは無いじゃないの。靴磨きの仕事で何が悪いの。 人様に迷惑をかけているわけでも、人様を傷つけているわけでもない。 お天道様に恥じることは何にもない。私はね。日本一の靴磨きになるの。」 夏の日も、雨の日も、雪の日も。 80を越えた彼女は、温泉に行ったこともないそうです。 「行きたいと思ったことが無いわけじゃないですけど。仕事がありますから。」 2時間かけて、満員電車に揺られて、彼女は「通勤」しているそうです。 「この生活では、小さなアパートで精一杯ですから。」 先生からその話を聞いた、アメリカ在住の友人が、 東京に行った時に、彼女を訪れたそうです。 「アメリカから。わざわざ有難うございました。」 お礼を言うのはこちらの方です、というその友人に、 手を合わせて彼女はそう言ったそうです。 彼女のもとには、紳士達が、たいして汚れてもない靴で 慎ましやかに、列をなしていたそうです。 病気になったらどうするのですか?との問いに 「きっと、お天道様が、良くしてくれると思います。 それに、この場所で人生を終えることが出来るのが、私には、本望なんです。」 ===== 鴎外記念館のお茶席に、掲げられている先生の自筆の書が 「一道」 先生は言います。 どうして、日本は、こういう人を人間国宝に出来ない?しようとしない? 立派な袈裟を着ている坊さんよりも、よっぽど彼女の方が尊いじゃないの。 「一道」 それは美しく、とても尊い。 帰国したら、私も彼女を訪ねたいと思います。 ===== この方の名前は、沢村ちづさん。 2006.05/09 毎日新聞 東京夕刊に記事が掲載されているそうです。 http://d.hatena.ne.jp/natunokaori/20060507 2006.12/09 「出没!アド街ック天国」でも紹介があったとのこと。 http://www.tv-tokyo.co.jp/adomachi/061209/20.html お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[茶会記] カテゴリの最新記事
|
|