411776 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

MORITA in Cyberland

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

mrtk@jp

mrtk@jp

Category

Archives

September , 2024
August , 2024
July , 2024
June , 2024
May , 2024
October 1, 2007
XML
カテゴリ:読書
小難しいミステリー論はさておき、ミステリーを読むことは、
私にとっては最高の娯楽の一つなのです。

おそらく。
「現実」は、やるせない事件と、不合理に満ち満ちているわけですが、
「本格推理小説」においては、最終的に「悪」は暴かれ、「不合理」は秩序の中に回収されます。
私がミステリーに惹かれるのは、だから、やるせなさと不合理に満ちた「現実」に対する
反発であり、逃避である、ということなのでしょう。

=====


百器徒然袋-風
』 京極夏彦


傍若無人、唯一絶対の名探偵、榎木津礼二郎
日常の謎から大仕掛を暴き、仕掛けられた罠を容赦なく粉砕し、
売られた喧嘩を仕掛けて返す、痛快娯楽探偵小説集。

-----
前作は、それでも、哀しむべき「現実」に対しての勧善懲悪という面がありましたが、
今回は、コンゲーム的な騙し合いが中心に据えられているため、
3篇とも、陽気で明るい雰囲気が漂い、読んで楽しい。

-----
「招き猫」の挙げている肢が問題になる『五徳猫』は、ひこにゃん活躍の今、タイムリーですし、
(「ひこにゃん」のモデルになった白猫の話も、もちろん載っています。)
雲外鏡』の「魔鏡」の説明は、私が今まで見た中で、一番分かりやすい。
また、『面霊気』では、能面の変遷についてのアプローチ方法が語られます。

-----
うーん。やっぱり京極夏彦先生はすごい。

=====


『生首に聞いてみろ』
 法月綸太郎


2005年「このミス!」1位作品、文庫に登場です。

-----
彫刻家の遺作から頭部が盗まれるという、
奇妙な事件に関わることになった法月綸太郎
「犯人」の目的は? そもそも頭部はあったのか?
謎を追いかける探偵をあざ笑うかのように、本物の生首が。
探偵は、もつれた「誤解」の糸を解きほぐすことが出来るのか?

-----
そして、全ての謎が解けた時、冒頭に置かれた謎への解答こそが、
物語を紡ぐ糸へと繋がっていきます。
閃き型の天才探偵ではない、苦悩する名探偵法月綸太郎だからこそ、
この物語は、物語としての輝きを、いや増すのです。

=====

 麻耶雄嵩


戦慄の旋律」の帯は、伊達ではありません。

島田荘司先生の「斜め屋敷」で、狂った論理が、
綾辻行人先生の「時計館」で、狂った時が、
麻耶雄嵩先生の「和音島」で、狂った芸術論が、
物語を紡いだように、この「ファイアフライ館」では、
狂った音楽が、狂った旋律が、物語の主人公なのです。

-----
跳梁跋扈する殺人鬼の物語と、クローズドサークルの舞台立て。
この二つがクロスする先に、この先鋭的な物語が屹立します。

物語が進むほどに加速していく「違和感」。
その理由もはっきりしないままに、作者の仕掛けたミスリードと、張り巡らされた伏線に、
読み手としての自分が反応していながら、見抜くことは、かないませんでした。
事件の謎以上に、"あまりに大胆であからさまなミスリード"に度肝を抜かれたことを告白しましょう。
そして、あっさりと描かれる、驚愕のラスト。

-----
読み終わってなお残る違和感、割り切れなさからくる酩酊感は、
「現実」の事件で感じる「割り切れなさ」とは全く違うもので、
そのズレからくる非現実感こそが、私が麻耶雄嵩先生を読む理由。

=====

少年探偵・春田龍介
 山本周五郎


「好きな作家を一人だけ」と聞かれたら、私は迷わず山本周五郎先生の名前を挙げます。
もちろん、と言って先生方の名前を挙げ始めるとキリがありませんが、
「一人だけ」なら、山本周五郎先生以外には、考えられません。

笑わせて、泣かせて、しみじみさせて。
そして、その山本周五郎先生は、探偵小説もお書きになっているのです。

作家当て企画で、覆面作家として執筆された『寝ぼけ署長』はじめ、
短編・長編問わず、ミステリ的手法が使われていることもよく指摘されます。
(Whoよりも、HowとかWhyが謎の中心となる場合が多いです。)
しかし、戦前の探偵小説群は、「習作」扱いされて、今まで文庫化されてきませんでした。
今回のシリーズは、雑誌の中に埋もれていた作品群に焦点を当てたもの。
いやぁ、編者の末國善己先生のご尽力に、ただただ脱帽です。

-----
第一回の『少年探偵・春田龍介』は、題名の通り、
少年探偵が、智力の限りをつくして「悪」に立ち向かい活躍する、周五郎版「少年探偵団」。

確かに「少年向け」ではあるのですが、それだけに、自分が子供の頃に読んでいたら、
手に汗を握ったろうな、という読み応えがあります。
特に、『ウラルの東』では、これでもかというほど連続するピンチ、逆転につぐ逆転、
冒頭から登場する悪役、残虐な敵の首領など、冒険、奇想なんでもあり。

「満州」をめぐる時代背景が垣間見えるのも、違った意味での読み応え、でしょう。

-----
とは言え、この本、人には勧めません。
あくまで、この本は、周五郎ファンの、お遊びみたいなものです。
どうせ読むなら、こちらの短編集の方が、断然面白いです。

   
『寝ぼけ署長』 『つゆのひぬま』 『人情裏長屋』


山本周五郎先生は言います。
世の中は、つらいこと、苦しいことに満ちている。
 だからこそ、せめて小説の中では、楽しい気分になって欲しい。


=====
私にとって、読書とは、最高の娯楽なのです。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  November 4, 2007 04:54:36 PM
コメント(0) | コメントを書く
[読書] カテゴリの最新記事


Calendar

Comments

mrtk@jp@ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
I read your post and wished I'd wrtietn it@ I read your post and I read your post and wished I'd wr…
mrtk@jp@ Re:★芝居★ 劇団ここから 『春の遭難者』 (10/13) こちらこそ、素晴らしい時間を過ごさせて…

Favorite Blog

ロシア生活2004-2012 koshka0467さん
 eco-blog 環境エン… 拓也@エコブログさん
Chobi's Garden chobi-rinさん
紺洲堂の文化的生活 紺洲堂主人さん
mypo MihO in Berlinさん

© Rakuten Group, Inc.
X