カテゴリ:環境
【総合討論】<2>「フェア・トレードが出来ること」
===== フェアトレードの考え方は、1960年代からありました。 生産者との継続的な取引を通じて、生産者に利益を還元していく、 国際開発協力の新しい形として、注目を集めました。 ===== NGOの立場から長年活躍された大橋さんからは、 このフェアトレードという考え方は、NGOが先鞭をつけた、 という指摘がありました。 そして、援助は薬にも毒にもなるのだ、と。 ----- つまり、「世界の国際開発協力の潮流と日本の貢献」 の中で 話があったように、一方的な援助が、本当にその国のためになるかは、分からない。 「助長」という言葉があります。 これは、植物を早く成長させようと、植物を引っ張って 枯らしてしまった故事に由来するもの。 援助が「助長」になっていないかを考える必要があるのです。 ----- また、フェアトレードは、交易という形を取っているので、 相手国の自尊心を傷つけない、そして、継続的であるという点が 利点として挙げられる、とのことでした。 ===== 写真家の大石さんからは、経済的に自立することの重要性について、指摘がありました。 バングラディシュの水害については、TVで目にしたことのある方も多いかと思います。 バングラディシュ・ダッカのスラムに行かれた大石さんは、 自然災害が、貧しい人達を直撃する現実を目の当たりにした、と言います。 貧しいから、水害の被害にあってしまうような所に住む、そこにしか住む所がない。 そして、水害にあって、再び全財産を失う、その悪循環。 ===== 国際協力銀行の新井さんは、フェアトレードは、途上国の現場に対する エンパワーメントの手法として、市民の側から提示されたものであり、 国際協力銀行の意織とも近いものがある、と評価します。 現在、日本は、「人間の安全保障」の観点からODAを行っており、 1995年には、グラミン銀行へ円借款を行い、 その他マイクロファイナンスにも援助を行っているそうです。 マイクロファイナンスの方向は、途上国の貧しい人たちを、経済的な自立に導くこと。 その意味では、フェアトレードと非常に親和性のあるODAです。 ===== 再び、大橋さんから、バングラディシュという国の歴史を絡めて、 活躍されていたNGO「シャプラニール」の活動についての解説がありました。 当時、フェアトレードという言葉を意識していたわけではないのだが、 現地の手工芸品を買うことは、必然だった、と大橋さんは言います。 まず、女性の生活自立、収入確保が目的としてあって、 それを考えたときに、麻布加工、カンタ手工業という 手工業品の生産-販売が一番行いやすいものであった、と。 それが、結果としてフェアトレードと呼ばれるものとなっている。 今は国内市場も整備され、国内での売買も盛んになっているそうです。 そして、それは、非常に良いことだ、と。 ===== 国立民族学博物館の鈴木さんからは、 先ほどの話(「フェアトレード:チョコレートを食べて友達を増やそう」 )を踏まえて 中南米のカカオを例に、技術指導を受けることで、付加価値を高め、市場価値を高める、 フェアトレードの手法の紹介がありました。 ===== 市場化、グローバリゼーションは、決してマイナスの側面だけではありません。 国際市場を通じて、お互いハッピーな「一方的ではない援助」を行える、 というのも、グローバリゼーションの一面ではあるのです。 ===== 人間文化研究機構 第7回公開講演会・シンポジウム 国立民族学博物館開館30周年記念 「国際開発協力へのまなざし:実践とフィールドワーク」 【主催】人間文化研究機構 【日時】2007.11/30(金) 18:00-21:00 【場所】IMPホール 【講演1】「世界の国際開発協力の潮流と日本の貢献」 佐藤 寛 氏 (アジア経済研究所・研究支援部長) 【講演2】「フェアトレード:チョコレートを食べて友達を増やそう」 鈴木 紀 氏 (国立民族学博物館・准教授) 【総合討論】「国際開発協力のあり方とフェアトレード」 岸上 伸啓 氏 (国立民族学博物館・教授) 新井 泉 氏 (国際協力銀行・理事) 石原 聡 氏 (世界銀行・社会開発専門官) 大石 芳野 氏 (写真家) 大橋 正明 氏 (恵泉女学園大学・教授) 鈴木 紀 氏 (国立民族学博物館・准教授) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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