カテゴリ:美術
ミッドタウンにある21_21デザインサイト。
今回は、さかなそらさんと一緒に訪れました。 ===== 入ってすぐの所に、「さかさかさ」の展示があります。 この「water」展のポスターにも使われている逆さに釣られた傘。 この先を握って写真が撮れるようになっています。 ポスターは、白地に青のイメージが、とてもスッキリして爽やか。 しかし、この「さかさかさ」、単なる奇を衒っただけの作品ではありません。 「傘を逆さにすれば、雨を集める道具になる」として、 「雨水利用」をテーマにしています。 ----- 水がどれほど大切な資源か、というのは、この展覧会に流れる通奏低音でした。 それに対する、一つのアイデアとしての雨水利用。 ----- 会場内には、村瀬誠さんの「Sky Water Harvesters」という、 「さかさかさ」を握った、世界中の人々の写真も展示されていました。 ===== メッセージ性の高い作品としては、ディレクターの佐藤卓さんと 文化人類学者の竹村真一さんが関わられた、 「見えない水の券売機(Virtual Water Serve)」も挙げておきましょう。 ----- 食べ物のサンプルがずらりと並び、その先に、食券販売機のような機械が置かれています。 例えば…と今、自分が手にした券が見当たらないので、カタログからですが、 「牛丼」は「2000l」となっています。 牛丼一杯で2000l? そう。 食糧の生産には、大量の水が必要になるのです。 例えば、牛の飲む水、牛の食べる牧草に与える水、 お米を、玉ねぎを、育てるのに必要な水…。 牛丼一杯が私たちに届くまでには、2000lの水がどこかで使われている。 ----- この考え方を「ヴァーチャル・ウォーター」と言い、 ロンドン大学のアンソニー・アラン教授が提唱しました。 今回の展示に当たってのデータ提供は、東京大学生産技術研究所 沖・鼎研究室。 カタログのデータから引用すると、私たちが一日に摂取する水の量は 3l。 シャワーやトイレなど生活用水は、日本人一人当たり 300l/日。 しかし、この食糧生産に使われている水まで考えると、日本人一人当たり 3000l/日。 ----- こうやってデータだけ並べると堅い話になってしまいますが、 券売機の形になっていることで、驚きと発見の提示になっています。 うーん。うまい。 ----- 携帯で見られるサイトもあります。こちら→http://v-water.jp 詳しい説明や、他の食糧生産についてのお話も載っていて、勉強になります。 環境系必見。 ===== 「水球儀」は、地球上の水にまつわるデータを目に見える形にした地球儀。 雲や海流、自分でデータを選んで、しかも、手で回したりもできて楽しい。 それにしても、雲の表情なんて、とてもダイナミック。 地球って、やっぱりすごい。 (これは普通の地球儀です) 2006年、神奈川県立地球市民かながわプラザ(あーすぷらざ)で、インゴ・ギュンター氏による 『地球108の顔』展という展覧会がありました。(web版はこちら) 地球の様々なデータを載せた地球儀を展示する、という 非常にメッセージ性の高い展覧会で…私はドイツにいたので行けなかったのですが、 地球惑星環境学科にいる後輩がお手伝いで参加していました。 この手伝いに行った後輩が、この展覧会にも行くと言っていたので、 その感想を聞くのが楽しみだったりします。 ===== トイレにも仕掛けが。 私には、どこにあるか、見つけられなかったのですが、 さかなそらさんに教えてもらいました。 ----- 「飲水思源」は、「蛇口」の「尻尾」を考える作品。 手洗いの所で、受けるように手を差し出すと、その手に映像が映し出されます。 それは、流れてきた「水の記憶」。 (これは私がドイツで撮った写真) 日本には、有名な「玉川上水」をはじめ、たくさんの「上水」があります。 水を、多くの人に届けるために、汗を流し、時には命を懸けた、立派な先人達。 そんな記憶も呼び起こされる、ちょっと不思議なインスタレーション。 ===== 広い展示室には、カップの形をした器を覗き込むようにして見る12の映像作品。 中には実際に水が湛えられていて、水ごしに作品を見ます。 単に映像作品として並べられているだけでは、スルーしてしまうかもしれません。 しかし、こういう展示のされ方をすると、全部覗いてしまいたくなるから不思議。 ----- どれも面白い作品でしたが、個人的には、その中に、 中谷宇吉郎先生の「雪の結晶」が上映されていたのが、嬉しいサプライズでした。 ===== 体験型で面白かったのは、超撥水素材を利用した takram(田川欣哉・畑中元秀・渡邉康太郎)さんの「Furumai」、 原研哉さんの「Shishiodoshi」。 超撥水素材は、本気で超撥水で、その上では、水が、コロコロと珠になって転がるのです。 いや、これは。 面白い。可愛らしい。楽しい。 ----- 「Furumai」は、12の色々な「お皿」を軽く回すと、 その上で水が小さな珠になって転げまわる、という作品。 水の珠が、くっついたり、細かく分かれたり、見てて飽きない。 最後の羽毛作品は、ちょっと幻想的。 ----- 「鹿威し」も水の振る舞いが面白い作品。 えっと、さかなそらさん、水が溜まる前に、鹿威しを傾けちゃうのは、 ルール違反じゃないかしら(笑)? ===== 私好みの作品は、何と言っても、「猫の傘」「ねずみの水滴」。 これは、猫のための傘でも、ねずみの大きさの水滴でもなく、 私たちが、猫、ねずみの大きさになって、という、 えっと、いや、でも、大きすぎるだろう、この青い傘。 ちょっと、御伽噺の、あるいは童話の世界に紛れこんだような、 幸せ気分を楽しめる作品でした。 ===== 最初にもらった展示作品表の中に「かぱ」という作品が載っていて、 「どこに展示してあるか秘密です。」となっているのですが…? うーん。 二人がかりで見つけられませんでした。残念。 ちょっと気になる…。 ===== 最後に、「さかさかさ」の所で、さかなそらさんに傘を持った写真を撮って頂きました。 いやぁ。 「飲水思源」の場所を教えてもらったりとか、 「鹿威し」の楽しみ方とか(笑)、「Furumai」で遊んだりとか、 お陰様で、独りで行くより、楽しく回れました。 本当に、ありがとうございました♪ また、どこかで遊んでくださいね。 ===== さて、ディレクターをされている佐藤卓さんは 「おいしい牛乳」やロッテの「ミントガム」「キシリトール」などの商品デザイン、 NHKの「にほんごであそぼ」のアートディレクターなどをされているデザイナー。 Wiki解説: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E8%97%A4%E5%8D%93 公式HP: http://www.tsdo.jp/ ----- また、文化人類学者の竹村真一さんがスーパーバイザーとして、 単なる「デザイン」に終わらせない、深い視点を加えて下さっています。 ----- 何と言っても、見せ方がうまい展覧会で、とっても楽しめました。 それに、カタログがすごい! 小さな女の子が、この展覧会を観て回っている写真で構成されていて、 こんなカタログ見たことありません。すごくお洒落で素敵なカタログ。 うーん。素敵だ。21_21デザインサイト。 ===== 佐藤 卓ディレクション「water」展 @21_21デザインサイト (六本木) [会期]2007.10/05(金)~2008.01/14(月) [開館]11:00-20:00(入場は19:30まで) [休館] 火曜日、12/31~01/03 [料金] 一般 1,000円 / 大学生 800円 / 中高校生 500円 / 小学生以下無料 ★★★★★ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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