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カテゴリ:お酒の話
相変わらずのコロナ禍で、飲食店に対する自粛要請が続いている。
私の住んでいるところでは晴れて解除されたが、まだ大都市圏を中心に時短要請が続いている。 私の記憶もあいまいで間違っているかもしれないが、飲食店への時短要請が初めて出されたのは、 今年の正月明けに出された2回目の「緊急事態宣言」が最初ではなかったかと思う。 人流を抑えるという点では、飲食店の時短はまあやむを得ないかな、と思っていた。 ところがその後、4月23日に発出された3回目の緊急事態宣言において、 まさに耳を疑うような信じられない話が飛び込んできた。 「飲食店での酒類提供の終日自粛」 これには開いた口がふさがらなかった。前代未聞のとんでもないことになったと思った。 まあ私のところは対象外だったので、対象地域への同情の念くらいで済んでいたが、5月7日には、 「まん延防止等重点措置」が当地も対象となって発出され、ついにわが身に降りかかってきた。 この措置は当初5月31日までだったのが延長され、結果的に6月20日まで続いた。 ウチの店は店頭販売に比べて飲食店への卸売りがかなりの割合を占めているが、 その分の売り上げがこの40日間、ほぼゼロになるのだ。 ノンアルコールドリンクなどの他の商材を提案していけばいいじゃないかと言われそうだが、 そもそもお酒を提供できない飲食店は期間中休業するしかなく、売り先自体がほぼ無い状態だ。 もちろん店頭で一般のお客さんに売る分が多少増えたところで、到底カバーできる金額ではなく、 我々小売店には飲食店に対する協力金のようなものもなく、店の経営は大ピンチである。 (一応県からの支援金は出ているが、飲食店への協力金に比べれば雀の涙みたいなものだ) 今は「まん延防止等重点措置」も解除になり、得意先の飲食店の営業も平常に戻ったが、 人の流れはまだまだ戻らず、経営的には依然として苦しい状態が続いている。 ただ今回の様々な措置を通じて私が不満に思うのは、経営が苦しくなった恨み言だけではない。 なぜ酒類を「一律」で自粛させたのか、ということに納得がいかないからだ。 政府や自治体の言い分としては、 「酒に酔うとつい声が大きくなったり、顔を近づけて話したりして、感染リスクが高まる」 というようなことらしい。 確かに飲食店で発生したクラスターはいくつかあった。それは認めよう。 ただクラスターが発生した状況は限られており、それをつぶさに分析し対応策を提示すれば、 何も一律に禁止させるには及ばないはず、と思うのだ。 酒を飲むシチュエーションというのは様々で、狭い場所で大人数でバカ騒ぎする飲み方もあれば、 一人や二人でしんみりと飲む人だっているし、その中間的なケースもある。 要は飲み方の問題なのである。 クラスターが発生するとしたら、それは感染対策がよほどずさんだったか、 もしくは「飲み方」が悪かった、というだけのことではないかと推察される。 イベントなどはコロナ初期と今とを比べると、当初すべて中止ということになっていたのが、 感染に関する科学的な解析をすることで、上限を決めて開催OKというように変わってきた。 コロナのことが分かってくるにつれ、状況はそうやって緩和されつつある。 なのにこと酒に関しては、昨年まで全くなかった「一律自粛」という考え方が 今年に入ってから出てくるというのは、どう考えてもこの流れに逆行している。 クラスター発生を阻止するなら、発生の可能性が高い業種に絞って休業要請を出すとか、 その他の店でも来店人数をあらかじめ絞ったりさせるなど、対策はいろいろ考えられる。 店側の感染対策を調査して、不十分なところだけ禁止する、という手もあったはずだ。 そういった施策を講じることなく「一律に」酒類の提供を禁じるというのは、 言い換えれば「酒そのものを悪者にしている」ことに他ならない。 それがどうにも我慢ならないのだ。 さらに言えば、国の酒に対する姿勢にも一貫性がない。 酒に関してはメリットもデメリットも両方あるというのは、いまさら言うまでもないことだ。 で、今回の一律自粛措置では明らかにデメリットの部分をクローズアップしている。 その結果居酒屋がバタバタつぶれたりして飲酒文化が廃れても構わないと思っているのだろう。 しかし今年の5月末に報じられたあるニュースを、私は決して忘れない。 東京都がまだ緊急事態宣言下にあり、飲食店での酒類の提供が禁じられている中で、 東京オリンピック選手村内での酒類持込を容認するとの見解が出された。(→コチラ) まあ個人的には選手だって人間だし、お酒ぐらい飲んだっていいじゃないか、とは思う。 ところがこの容認発言の根拠として 「選手村は元々異なった国の選手同士の交流の場なので云々」 というフレースが飛び出したのには呆れた。 飲食店に対しては酒のデメリットを振りかざして謂れのない規制をしておきながら、 オリンピック向けには酒のメリットを声高に訴える。これを二枚舌と言わず何と言おうか。 さらにオリンピックに関してはもう一つ、これは結局後になって撤回されたことだが、 当初禁止されていた会場内での酒類販売を限定的に認める、という決定も話題になった。 どこかの誰かが横車を押そうとしたのかもしれないが、 ことオリンピックなら例外的に考えてもいいのでは、といった空気も十分に感じられた。 私はもともと今回の東京オリンピックは、誘致時点から賛成ではなかった。 しかし決まった以上は仕方ない、穏便に開催してくれ、と思って今まで来た。 ただここへきてコロナのまん延が深刻になってきても、「オリンピックだけは特別」 といった意識が日を追うごとに大きくなってきているのに、苛立ちを感じてきた。 そして私たち酒類業者の商環境がズタズタに壊され、先行きが全く分からなくなるに至って、 それでもオリンピックを優先させてやっていこうという国の姿勢に、もはや堪忍袋の緒が切れた。 選手たちは何も悪くないのは言うまでもないことだが、オリンピック関連の映像を見たりすると そのたびにはらわたが煮えくり返りそうで精神衛生上よくないので、 今回のオリンピックからは距離を置こうと思っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年07月07日 10時35分45秒
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