「ごめんねー、兄ちゃん言い出したら聞かんし、仕方なかったと」

「ひーどーいー」

「あっ、その言い方可愛い、しっほーの真似やん？」

「なんがね、しっほーは原宿のHRJ345やけん、真似やらせんよ」

「そうやった、蘭子は中洲のNKS345箱推しの一本槍やもんね」

「中洲いうても劇場は黒田藩の舞鶴城跡にあるけん、中洲じゃなかとよ」

「うんうん、何度も聞いたけんよう知っとうよ、やっと泣きやんだね」

その後二人は黙ってソフトクリームを食べることに集中し食べ終わって

「蘭子、今日は家まで送るけん」

「はーずーいー、そんなん男子の制服着とったら彼氏と間違われるたいね」

「また、しっほーの真似しとる。わざとやろ？」

二人は談笑しながら歩き蘭子の家へと向かった。

家の前には二人の中学の制服を着たスラリとしたショートカットの
女の子が立っていた。

「あっ、愛宕下！待っとったよ」

「先輩！うっうっ」

それは蘭子の所属していた陸上部の部長の朝宮美穂（あさみやみほ）だった。
またしても号泣しはじめる蘭子。

「愛宕下、なんで退部届出したと？もうできるとやろ？」

「みんなに会わせる顔のなかですけん、うっうっ」

「みんながあんたば責めたとはそんだけみんながあんたに期待しとったけん
やけん、あんたはちっとも悪くなかことは私はようわかっとうよ」

「みんなに会わせる顔のなかですけん、うっうっ」

蘭子は怪我のために大きな大会を欠場したのだが短距離のエースと
言われていただけに部活仲間の落胆は大きくみんなは責めるつもりは
なかったのだが、愚痴をしつこく言ったのが責めたような形に
なってしまい責任を感じた蘭子は顧問に退部届を出してしまったのだ。
その話になると蘭子が号泣するため、みんなも顧問の先生もそれ以上
引き留めることができなかった。

「愛宕下、戻ってくれんね？」

「うっうっ」

膝を折って泣き崩れる蘭子。
見かねて葵子が口を挟んだ。

「先輩そのことに関しては蘭子はこういう精神状態ですけん
しばらくそっとしてくれませんか？」

「あんたに言われたくなかっちゃけど、仕方なかね、私は今日はもう帰るけん。
愛宕下、悪かったね」

「せっ、先輩、ごっごめんなさいー」

TO BE CONTINUED