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カテゴリ:NOVEL
…あ、ダメだ。
訳もなくそう思った次の瞬間、ぼくは背をかがめて彼に口付けていた。 ふっくらとした、茜色の唇に。 ゆっくりと顔を離し、にっこり微笑んでやる。 最初はポカンと呆気にとられた表情だったおデコくんは、見る見る内にその表情を怒りに染め上げていく。顔はもう真っ赤っ赤で、茹でダコでさえかくも赤くはなるまいといった趣だ。 「…っな、何ふざけて」 「ふざけて同性にキスする程、ぼくは見境のない男じゃないつもりなんだけどね」 さり気ない素振りで肩を竦めて、さっき開けた間合いをちょびっとだけ詰める。 そうすると危機感を感じたのか、彼もさっと後ろへ退いた。 ちぇ、何だか面白くない。 「…じゃ、じゃあ、なんでキスなんか」 遮るように口を挟んでみる。 「好きだから…」 ぎょっとした顔でこちらを眺める彼の額にキスの雨でも降らせてやろうかなどと画策しつつ、表面上は涼しい顔を保ちながらぼくはその続きを話す。 「っていう理由じゃ、キミはお気に召さないかな?」 右手の人差し指を唇にもっていき、しぃっと小さく息を吐く。 「…召す訳が、ない…でしょう!!」 腹の底からたぎるような大声を、ムリヤリ押さえつけているといった風情だ。こもった声が彼の怒りをかなり的確に表現している。 「…でも、これは事実さ。ぼくはキミが好き。シンプルだろう?キミが好き、だからキスをした。オーケイ?」 「全くもってオーケイじゃありません!」 ぴぃぴぃと、小鳥のようにさえずる彼を間近で見ているのは結構楽しい。終始飽きずにいられる。 それはまぁ有り難いのだけれど、しかし大声で喚きたてられては、ぼくの耳がバカになってしまうかもしれないしなぁ。 …ちょっと黙ってもらおうかな。 もう一回、さっきみたいに背をかがめる。目線を若干彼に近づけ、そっと体も近寄せる。 ゆるぅりと。 王泥喜法介を、味わって。 その体を己から引き離してやる。 ☆眠いので強制END☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.09.03 01:42:13
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