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カテゴリ:NOVEL
母さんを殺そうと思った。
それは前々から考えていたことで、今になって突発的に考え付いたことなどではなかった。 母さんに支配されて蹂躙される生活が苦痛だった。 「お前はなんて馬鹿な子なの」 「母さんがいなければお前は何にも出来ないクズだわ」 自分が上だと、全てを搾取する側の人間なのだと常に口調や態度で示し、僕が何を頑張ろうと全く見ちゃいなかった。 僕は彼女の中では常に低俗で野蛮で粗野な人間として認定されているらしかった。 このまま彼女の支配下に居てはいずれ息も出来なくなる。 僕にはそういう確信めいた思いがあった。 台所に誰も居なくなる隙を見ては、僕はまな板の側に添えられた包丁を手に取って振るった。 突きの動作をし、目の前に架空の人間を配置して刺し込む練習もした。しかしやはりそれはただのシュミレーションでしかなく、実際に刺す人間がいなければただの料理の練習にしか見えない。 誰もいない静寂の中、僕はただひたすらに憎悪の気持ちをその刃に送った。刃の鈍色の輝きが、彼が今にも血を欲しているのだと教えてくれる。 いずれくれてやるよ。飽きる程の鮮血を。 僕が小さく呟くと、包丁は嬉しそうに手の中で踊った。 ********* 彼も私もチキンなので、実際に殺しはしないです。 ただ包丁を手に取ってみるだけ。それ以上でもそれ以下でもなく。 包丁を手にとってじーっと眺めてる度に「本当にこれで人を殺せるんだぁー」と、妙な感慨が沸いてきます。 大根や人参や林檎を剥いたことのあるその刃物が、人の命を絶てるのか、と。 感動というより、感嘆って感じです。へぇ、って感じ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.10.07 16:03:42
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