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カテゴリ:SCHOOL EVENTS
もしもリライトするならば
私がリライトしたい作品は、飯田雪子の『夏空に、きみと見た夢』だ。この話のあらすじは以下の通りである。 男の子から告白されることなど日常茶飯事の、気の強い女子高生・悠里。彼女の元に、ある日見知らぬ男子高校生・岸川が現れる。また告白かと思いきや、悠里に片思いしていた広瀬天也という男子の葬式に参列して欲しいと彼が頼み込んできたからさぁ大変。悠里は岸川を疎ましく思い、諦めて貰えるように「半日で一万円。バイトなら行ってやってもいいわよ」とつっけんどんに言う。すると男は財布から前金として五千円を悠里に手渡したのだ。これでは今更断る訳にもいかない。 しぶしぶ知り合いの一人もいない葬式に参列し退屈しながら、会ったこともない「天也」を見送ることに……。 祭壇の遺影を見ても何の感傷も持てない悠里は、「天也」の母親から渡された、悠里への想いが綴られた大切な日記も「気持ち悪い」と燃やしてしまい、葬式に出て欲しいと頼んだ岸川からも「お前なんかのどこが良くて…」と軽蔑される始末。そして葬式の後、間もなく始まった携帯への無言電話や、誰かにじっと見つめられている気味の悪い視線を「天也」のものと思い込み、いるはずのない相手に向かって悪態をつく悠里。しかしその、実体を伴わない「天也」に彼女は危機を救われることに。 いつしか、誰にも心を許せず泣くことの出来なかった悠里が「天也」にだけ心の内を見せられるようになっていく。このままこの時がずっと続くかに思われたが、何の前触れもなく、現れた時と同じように別れを告げられ、悠里は彼を喪った。何度でも生まれ変わって悠里の側にいるという彼の言葉を信じ、温かな思いを胸に日々を生きていく。 この作品は、主人公と恋愛する男子生徒を故人としてしまった時点で、結ばれない恋の話になることがほぼ確定している。こうした、覆せぬ程大きな恋の障害がある小説にありがちな「もし」という仮定が、作中にも登場した。それは「もし天也が生きている内に悠里に告白していたら、二人はどうなっただろうか」というものだ。付き合っていたのだろうか。そして、天也は死を免れたのだろうか。しかし二人が話して得た結論は、きっと現状と変わらなかっただろう、というシンプルなものだった。何せ天也は平々凡々の外見をしている。悠里はとにかく気位が高く、「自分の外見に釣り合う男子でないと付き合わない」などと、男性判断基準に中々に厳しい条件を幾つも設けていたのだ。これでは二人が付き合えるようになるのは、生きている頃では有り得なかったということになる。それこそ……、死後にコンタクトを取る位しか、二人が惹かれ合うまでの過程は存在しない。 しかし私は、だからこそ敢えて生きている頃に彼らの間で幾度となく接触が取られる話が書きたいと思う。リライトするにあたり、オリジナルと変えたい部分は「天也の死」と、「天也と悠里の(生きている時の)交流」だ。私の書き直す世界では、天也が悠里に告白をするところから始まる。そうして手酷く振られてしまうのだ。しかしそれでも天也は悠里を思い続ける。諦めずに何度も彼女に顔を見せる天也。悠里は彼を疎ましい存在に思うが、しかしそれでも天也は彼女を追い続ける。顔を合わせる回数が増えていき、悠里は天也に絆されていく自分に気づく。そして悠里からももう少し歩み寄りをしようかというところに……突然の天也の死。悠里はただ天也を思い慟哭するばかり。 ありがちなストーリーと言われてしまえばそれまでなのだけれど、それでも私はこの二人のこうした出会い方で始まる話も読んでみたいと思うのだ。何故なら、こうなった時には悠里は他人面して葬儀場に立つことなど不可能だからだ。彼女は、天也を焼き尽くした煙を吐く細長い煙突を眺めながら、果たして何を思うのだろう。まだこの話を書き始めてすらいないのに、既に話の結末に思いを馳せてしまう私がいる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.11.16 23:50:26
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