カテゴリ:音楽
非常に恥ずかしいが、今日は通算で2時間くらい滂沱たる涙にくれてしまった。
最近、涙もろいのだ。 じゃあ前は違ったのかというと、前からもろかったのだが(爆)最近は催涙スイッチが年のせいもあって甘くなってしまっている。 これから生活環境が変わるということも手伝って、感情的になりやすい部分も確かにあるのだろう。 で、なんでそんな2時間も泣いていたのかというと、歌を聴いたからだ。 歌にやられたからだ。 Eva Cassidy。 ここまでボロボロになったのは音楽ではおそらく初めてかもしれず、程度で言えば、以前に一度読んだ後は封印してしまったアレ以来かもしれない。 あんまり泣いていたのでクマイチがびっくりして「どーしたん」と言っていたが、うまく説明できなかった。 Eva Cassidyという名前は、いつ頃からか記憶にはうっすらあった気がするのだが、ジャズの人だったはずだと思っていた以外には具体的にはほとんど知らなかった。 が、自分では「私がよく知らないだけで、知っている人は知っているのだろう」とずっと思っていたら、どうもそうでもなさそうだと今日わかった。 この人の歌を日本の人がいちばん聴いて覚えている機会があるとすれば、おそらくそれはイギリスの映画「ラブ・アクチュアリー」の中の場面ではないかと思う。 (この映画については実はまだひとことも書いていない。書くのが結構難しい) この「ラブ・アクチュアリー」で、ローラ・リニー扮するサラが、片想いしていたカール(ロドリゴ・サントロ)を初めて家に連れ帰り、いよいよというところでサラに、精神を病んで入院している兄から電話がはいり、万事休すという場面がある。 このサラの寝室になっているロフト(かな?ともかく上の階)をカメラが捉えるシーンで、Eva Cassidyの「Songbird」という曲が静かに流れる。 1回目にこの映画を観た時には気づかなかったが、次にこの映画を観た時に初めてこの曲に耳が止まり、誰が歌っているのだろうと思って少し映画のサントラの情報を調べてみたところ、その歌い手がEva Cassidyだとわかった。 その時、そういえば前に買った女性シンガーばかりのJazzの2枚組のCDにもEva Cassidyが1曲はいっていたことを思い出した。 そのCDを買った時も「ラブ・アクチュアリー」を観た時もEva Cassidyについてちょっと調べた気がするのだが、今一つ何も印象深く残っていないので、たまたま今日「Songbird」を聴きながらAMGでもう一度Eva Cassidyを調べてみて愕然とした。 この人、私と年齢は同い年だというのに、すでに1996年に33歳で夭折していたのだ。 彼女は生前、アメリカ・ワシントン界隈だけで名が知られている程度のシンガーだったにも関わらず、没後に編集・発売されたレコードによって、遅まきながらも彼女の実力がようやく世に出たというストーリーがあったとは今日まで知らなかった・・・ 私はだいたい女性シンガーというのをあまり好まない。 基本的に私が誰かの歌を聴きたいと思うのは、最終的にそれを自分で歌いたいというのが理由なので(ハタメイワクもいいとこだが)地声も歌う声も低いこちとら、歌える女性のシンガーというのが極めて少ない。 そういうこともあって、女性シンガーで影響を受ける人というのは男性のそれに比べると遥かに少ないのだが、このEva Cassidyの声には伸びやかさとうまさの他に、限りないFrailty・Fragility(もろさ、はかなさ、壊れやすさ)が感じられ、イギリスの短い秋の青くて遠い空のようなイメージがある。 すでにこの世の人ではないからそんなふうに感じるのかもしれない。わからない。 曲調はフォーク・カントリー(ギターの弾き語りが多いため)の基調路線を辿りつつも、アンテナはやはりジャズや多少のソウルにも向いていることがわかる。 今日、夢中になって彼女のレパートリーを聴いた。 (ホントはYou Tubeで画像を見てもらうのが目的ではなくて、やっぱりせめてCDを買うか借りるかして、ちゃんとした音で耳から聴くべきだと思う。私は今日、ずーっと耳だけで聴いていたので泣けて泣けてしかたなかったのだが、You Tubeではちょっとねぇ) Time After Time 83年にシンディ・ローパーが出した曲だが、私はシンディ・ローパーは下から数えたほうが速いくらいキライで(すみません)この女が歌っていたと思うだけでこの曲もイヤだったのにカバーしている人たちが多くて驚いていた・・・まあ偏見さえなければそれなりにいい曲だったのかもしれないが・・・ この曲をEva Cassidyがカバーしているのだが、初めてこの曲をいい曲だと思うことができた。 この歌はこんなふうに歌うべきだというお手本のようだったから。 貼り付けた映像は1996年1月のBlues Alley(ワシントンDC)でのライヴ。 Fields of Gold・・・画像は2002年の冬季オリンピックの女子フィギュアのエキシビション。 元はStingの歌だが、2002年の冬季オリンピックのフィギュアスケートで、アメリカのミシェル・クワンのエキシビションでEva Cassidyがカバーしたこの曲が使われた。 ミシェル・クワン自身は銅メダルに終わってしまったが、その時にこの曲がクローズアップされたというエピソード付き。 Over the rainbow(ミュージカル「オズの魔法使い」より「虹のかなたに」) この曲も今や定番として、歌ったことのある人を数えたら数え切れないだろうが、Eva Cassidyのバージョンは素晴らしい。 You Tubeではライヴの画像もあったが、スタジオ録音のバージョンのほうに魅せられたクチなので。 去年のX-Factorで優勝したLeona Lewisも去年のAmerican Idol 5で2位になったKatharine McPheeも、本選で歌った「Over the Rainbow」はこのEva Cassidyの解釈のものだった。 What a Wonderful World 言わずとしれたルイ・アームストロングの名曲だが、後で探して読んだ記事によると、Eva Cassidyは96年の7月以来、体の痛みに悩まされ始め、それからまもなく悪性黒色腫の診断を受ける。 病魔はいち早く彼女を蝕み、状況が悪化する中、彼女はこの年の9月に歩行器を使って舞台に上がり、この曲を熱唱したのだという。 (貼り付けた画像は最後のライヴではなく、やはり1996年1月のBlues Alleyでのもの) Eva Cassidyはそれを最後に入院したが、ついに2ヶ月後の11月に33歳の若さで他界してしまう。 そんな彼女が世に出るきっかけとなった編集アルバムの「Songbird」は彼女の没後2年経って発売され、それによってたぐいまれな才能を世間に遅まきながら知らしめることになったのは運命のいたずらではあるが、幼い頃からの歌の才能に9歳で父親から教えてもらったギターが加わり、シンプルながらも人の心を打つSongbirdとして、その声を求める人の間に静かに降り立ってくるようだ。 左から発売順に Eva by Heart(1997) Live at Blues alley(1997) Imagine(2002) American Tune(2003) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[音楽] カテゴリの最新記事
|
|