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MY HIDEOUT ~私の隠れ家~

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Feb 12, 2009
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カテゴリ:映画鑑賞記録
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"REVOLUTIONARY ROAD"
監督・・・サム・メンデス
原作・・・リチャード・イェーツ『家族の終わりに』(ヴィレッジブックス刊)
出演・・・レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、キャシー・ベイツ、マイケル・シャノン、キャスリン・ハーン、デヴィッド・ハーバー、ゾーイ・カザン、ディラン・ベイカー、ジェイ・O・サンダース、リチャード・イーストン、マックス・ベイカー、マックス・カセラ、、他。

・物語序盤・
第二次大戦後のアメリカ・コネチカット州で出会った若い男女フランクとエイプリルは一目で恋に落ちる。
エイプリルは女優を夢見る女性、陸軍の兵役から解放されたフランクも将来に希望を持っていた。
やがて二人は結婚し、"レボリューショナリー・ロード"にある閑静な住宅街に、小奇麗な白い家を買って生活を始めた。
結婚後7年の月日が流れ、二人の子供にも恵まれたウィーラー夫妻の暮らしは安定しており、周囲からは理想の家族と見做されていた。
しかし漸く市民劇団を立ち上げたエイプリルの初舞台は散々な内容で、彼女は女優の夢も砕け打ちのめされる。
フランクはかつて軽蔑していた父親が勤めていた事務機器会社のオフィスで働き、家族の生計を支えるだけの毎日。
思い描いていた未来と虚しい現実とのギャップに、夫妻は互いを傷付け、口論を繰り返していた。
30歳の誕生日に会社の事務員と浮気をしたフランク。
帰宅した彼を待っていたのは、エイプリルの謝罪と子供達とバースデーケーキ。
思わず涙を零すフランクに、翌日エイプリルは思わぬ提案を持ち出した。
兵隊時代フランクが暮らしたパリへ渡り、本来の自分を取り戻すべきだと言うのだ。
突然の事に戸惑っていたフランクだったが、話を聞く内に忘れ去っていた希望を思い出し、夫妻はフランスへの移住を決める。
会社の同僚や近隣の住人に、活き活きとした顔で新天地へ行く事を触れ回る二人を、周囲の人々は複雑な心境で見守っていた。
だが皮肉にも、好い加減に片付けた仕事が高く評価され、フランクには昇進と破格の昇給のチャンスが巡ってくる。
またエイプリルの妊娠も発覚し、二人の立てた計画は徐々に狂ってゆく…。

tuta
先月末に公開が始まったばかりというのに、いつも行く映画館では既に上映終了。
代わりにアカデミー賞ノミネート記念に「おくりびと」が再上映に。
こっちだって、アカデミー賞ノミネート作品なんですけど…。
確かに、あっちは良くも悪くも綺麗事で纏めてあるので、観終わった後に良かったねとなります。
比べて、この作品は何処までもリアルなので、気持ちが凹みます。
でも敢えて優越を付けるとしたら、私はこの作品に軍配を揚げますね。
観ている間、一秒もこの虚構の世界から這い出せない隙の無い脚本と演出、そして俳優陣の演技力、どれを取っても一級品だと思います。
それ故に、物凄くしんどい。正直。
涙も出ないとはこの事。
もしも声を上げて泣けるのなら、其処にはまだ救いがあります。
喩えるならば、方々から投げ付けられた石の礫を、お腹いっぱい呑み込んだまま、作り笑いを浮かべさせられている気分。

判る人には、判り切った話です。
「自分とは全然関係ないや」「何が不満な訳?」という人でないと、間違いなく凹みますので要注意かな。(^_^;)
観た事は後悔していませんけどね、勿論。

キャシー・ベイツ演じる不動産会社社員ヘレンの息子ジョンがまた、唯でさえボロボロで、神経毛羽立ってる夫婦に追い討ちを掛けるんだ。
(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
ジョンは元は数学者だったものの、心を患って精神病院で治療を受けている男性。
ヘレンの頼みで、ジョンの話し相手役を引き受けたエイプリルですが、この息子を連れたギヴィングス夫妻が、フランク達の都合もお構いなしに訪ねてくるのよ。
原因は判りませんが、心を病んでいるだけで、知能的にはインテリなジョンは雄弁です。
心のど真ん中を抉るような真実をズケズケと二人の目の前に突き付ける。
自分がトラブルを抱えている時は、こういうタイプの人との交流は避けた方が無難ですよ。
事ある毎に罵り合って、破綻しかかっている夫婦なのに。
そこは黙らなければ…と思う所で、怒りを抑えられないフランクに、相手が「一人にして」と懇願している時は、距離を置かないと駄目なんだけどなぁ、と溜息が。(--)
激昂して口にした言葉が良い結果を生む筈がない。
致命的な暴言を投げ付けて、常に"崖っぷち"を歩いていた最愛の人を突き落としてしまったフランク。
翌日のエイプリルの温和な笑顔には、もう二度と会えない人のような空気が漂っていて、悲劇の訪れを予感させました。

近所に住むキャンベル一家の描写も巧みでしたね。
皆から羨まれるウィーラー一家より、全てに於いて明らかに格下。
呼んでも返事もしない、だらしない息子達。
女神のように美しいエイプリルに比べ、冴えない容姿の妻ミリー。
これが俺の人生か…という面持ちで、一人庭先でビールを飲む夫シェップ。
ミリーはミリーで、やはり自分の生活に不安と不満の入り混じった複雑な感情を持っている。
パリ行きの計画で輝いて見える二人に、急に惨めな気持ちが起こり咽び泣く。
二人の計画が頓挫すれば、苦渋を滲ませるエイプリルに、これで元通りの親友ねと大喜び。
フランクには「女は3日も経てば、何でも忘れてしまうものよ。」と笑い掛ける。
そうでない事は自分自身が誰より承知しているのに。
この辺の人間心理が実に厭らしくてナイスです。(*^^)v

「絶望的な虚しさ」という言葉に対して、ジョンが虚しさは誰もが感じられるが、絶望するには勇気が要ると応えた台詞は好き。
心底、絶望した時、人はその場に留まれず、誤魔化しと惰性で続けてきた生活を破壊するしかない。
絶望するには、確かに勇気が要る。無謀と紙一重の世界だが。(^_^;)

「逃げるのではない、全く逆、私は真剣に生きられる場所が欲しい」と訴えるエイプリル。
その言葉に偽りは無いけれど、パリへ行っても、心を埋めてくれるものは見付からなかったと思う。
人は満たされず、常に此処ではない何処かを求めるが、此処で手に入らぬものは何処に行っても結局手に入る事はない。
要するに、それを手にする能力が欠落している。ただそれ丈の結果に過ぎない。

ラストシーンはなかなか印象的です。
ウィーラー一家の暮らしていた輝かしい幸福の象徴である白い邸宅には、希望に満ちた新婚カップルが引っ越してくる。
そしてウィーラー夫妻を最高のカップルと褒め称えていたギヴィングス夫人は、夫にあの二人は変わり者で付き合いにくかった、"革命家"夫婦のようだったと肩を竦める。
その夫人を黙って見詰める夫の顔のアップ。
妻の言葉に何を思うのか、口達者で仕切り屋の妻は考えもしない。
ジ・エンド。

原作小説『家族の終わりに』は、半世紀以上も前に書かれた本ですが、人間の営みって変わらないね。

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最終更新日  Feb 14, 2009 11:33:27 AM
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