テーマ:たわごと(26875)
カテゴリ:ルンゲ警部とクーパー捜査官
「大変です! 早く来てください!!」
通報があったのは深夜の1時を過ぎた頃だった。 帰宅途中だったルンゲ警部は連絡を受けて現場に急行。 現場付近にさしかかったとき、ちょうどクーパー捜査官の車が到着するのが見えた。 ドアの隙間から光が漏れているのが見える。 留守ではないようだが、人の気配はしなかった。 「久しぶりですね、ルンゲ警部」 クーパーは緊張した面持ちのまま呟いた。 顔がちょっと笑って見えるのは、彼は緊張すると半笑いになるからだ。 「久しぶり過ぎて、誰も我々の事を覚えてはいないだろうな」 ルンゲの方は自嘲ぎみに笑った。 「3回目だというのに、まだコピー&ペーストか…」 ドアノブに手をかける。ノブは何の抵抗もなく回った。 「鍵はかかっていない」 ルンゲが断言をした。 「被害者は西尾環那(28歳・会社員)だ」 そして凄い勢いで決めつけた。 「ルンゲ警部、あれを!」 クーパーが指さした先、そこには一人の男がうつぶせで横たわっていた。 すぐさま駆け寄ったクーパーは男の首筋で脈をとる。 「至極健康体です」 手がかりは携帯電話だった。 「FOMA D901iか…」 手袋をしたクーパーが珍しそうに携帯を眺める。 「これ、今月発売になったやつですよ」 手際よく履歴を調査する。 まだ誰にも電話はかけてないようだったが、着信は2件あった。 「おかしいなぁ」 クーパーが首を傾げる。 「どうした、クーパー」 クーパーはルンゲの方に携帯電話の画面を見せた。 「電話番号は出ているんですが、名前が表示されていないんですよ」 「どういう事だ?」 「つまり、この相手は電話帳には登録されていないという事です」 「知り合いでは無いという事か」 「うぅ…」 男がうめき声をあげた。 「環那さん、聞こえますか?」 「うぅ…」 クーパーが大きな声を上げる 「この着信は誰からなんですか!」 事件はこうして幕を閉じた。 運転席のクーパーは運転中に着信したメールの内容が気になってしょうがないようだ。 しかし、助手席の警部が気になって確認ができないらしい。 交通課じゃないからいいか?なんて甘い考えをおこしてみたが、ルンゲの視線が怖かった。 見られている事に気付いたルンゲが振り向く。クーパーは気まずそうに 「ガイシャはそんなに甘いモノが食べたかったんですかね?」 と適当な事を言った。 「『俺、甘いモノが好きなんです』って、知り合いの女性にメールをするぐらいだからな」 ネオンもまばらな夜の景色。 窓の外の風景にむかってルンゲは問いかけるのだった。 「チョコレートが1個も貰えなかったからって、そんなに落ち込むかねぇ」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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