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テーマ:本のある暮らし(3315)
カテゴリ:本
オリジナルはラルフ・イーザウの2003年の作品。邦訳は2008年。
世界史をなぞるようにして、その隙間を想像力で埋めていくファンタジー。1978年の人民寺院のガイアナでの集団自殺事件、ナチスによる千里眼研究の中心人物とされるハヌッセンやアメリカのテレパシー研究、9.11世界貿易センタービル爆破事件、古代マヤ文明やインカ文明、伝説のアトランティス文明に対する考察などが絡み合い、ひとつの物語を形づくっている。 これらの中で、キーワードは「共感力」である。人と人が共感し、共に生きるという方向性を探っていくならば、よい方向へと向かうはずなのに、その力を悪用し、人を操作しようとしているグループがある。 優秀な考古学者エレミーは、人民寺院の集団自殺事件の生き残りで心にトラウマを抱えているため、なかなか他人に心を開けない。二度と行きたくなかったガイアナに研究のため赴き、銀の民(白い神々)と出会い、そのリーダー・サラーフと親しくなる。人の夢にまで影響を与えるような「共感力」を持つサラーフに導かれ、その彼女が、自身の中にある「共感力」(=銀の感覚)に目覚めていき、世界にめぐらされた陰謀を阻止していく。 現代の人間のおろかさが、銀の民の長サラーフによって語られる様は、まるで『パパラギ』を思い起こさせるが、エレミーがトラウマを克服しながら、自分のありのままを発見していく様は、誰にでも思い当たるところがあるのではないだろうか。 カルト宗教、軍事産業と戦争がモチーフとなり、個人の心の傷とその癒し、人間関係における大切なことといった現代的テーマを考えさせる作品であった。個人的な癒しという観点だけでなく、世界の問題が重なっているところが、この作品の魅力かと思わされた。 パパラギ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jul 15, 2010 08:51:33 AM
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