稽古89回目
■謡…「船弁慶」1回目今日思ひ立つ旅衣。今日思ひ立つ旅衣。帰洛をいつと定めん。かやうに候者は、西塔の傍に住居する武蔵坊弁慶にて候。さても我が君判官殿は、頼朝の御代官として平家を亡ぼし給ひ、御兄弟の御中日月の如く御座候ふべきを、言ひかひなき者の讒言により、御中違はれ候事。返すがえすも口惜しき次第にて候。然れども我が君親兄の礼を重んじ給ひ、一まづ都を御開きあつて、西国の方へ御下向あり。御身に過りなき通りを御歎きあるべき為に、今日夜をこめ淀より御船に召され、津の国尼が崎大物の浦へと急ぎ候。今回の注意点1、1ウ「日月の如く」、2オ「尼が崎大物の」の「含」の謡い方が違う。「ん」と力を入れて発音するのではなく、舌を上あごにつけて鼻に抜く。口は開けても閉じても良い。2、「。」をしっかりと区切って息を継ぎ、吸ったすぐに発声するのではなく、吸った息を溜めて発声する。3、1オ「何時と定めん」は「と」のところにある「もち」を利用して息を吸って、それから「定めん」と謡うと良い。4、1ウ「御中違はれ候事」はこの曲での大事な意味を持つ言葉なので、もっとしっかりと謡う。4、2オ「尼が崎大物の」は「尼が崎」で息を吸っても良い。慌てないで謡う。5、2オ「急ぎ候」は「確カリ」と書いているので、もっとしっかりと謡う。・感想 今日から黒い本です。1冊2,050円。同じ弁慶が出てくる曲でも、この「船弁慶」は義経達が追われていく話なので、稽古をし始めてから2曲目に習った「橋弁慶」のような若さはありません。 今日は「含」の謡い方を何度も注意されてしまいました。気をつけて謡っているつもりでも謡えていません。「含」は最初に習った「鶴亀」で出てきた符号で、その時は謡えていたはずなのにと、先生と二人して首をひねりました。家に帰って録音した自分の声を聞くと、確かに謡えていません。これは困りました。 先生は次回謡うところをれこーだーに吹き込んで下さいます。次回謡うところにも「含」が何か所も出てきます。困ったな。■仕舞「巴」5回目今回の注意点1、「見れば敵の大勢」で前へ出る時は、舞台の3分の2以上は出ない。2、「あれは巴か女武者」で左足を掛け、右足の延長線上より左足が左側に来るようにする。3、「巴少しも騒がず」と「一所に当たるを木の葉返し」の足拍子は、最後の二足は大きく、思い切り踏みつける。4、「長刀ひきそばめ」は型をかたちだけするのではなく、本当に長刀を引きそばめるのだという思いを持って、足を引き体を引く。そしてゆっくりと足を運び、動き始めたらザザザッと動き、左足にしっかりと体重を掛けて止まる。5、「四方を払ふ」は長刀を払う。左手を左腰に確実に固定し、スパッと敵を切る。振り下ろしたらそこでピタッと止める。6、「∞」を書く前、四ツ共ニ取直シた後は左足を下げ、そのまま後ろに下がる。7、「切り立てられて」で角へ行く時に長刀を下げない。体全体で勢いよく突く。8、一回目の「後も遙かに見えざりけり」は遠くを見つめて呆然とする。9、一足一足を戦っている感じで踏み出す。・感想 大分できるようになりました。体重移動や力の入れ様が少しわかりました。でも、正月休みの間に忘れたりして。 長刀を右左と四回振るう時は、本当は型ごとに止めずに流れるようにするのだそうですが、私にはまだ無理だし、型を体で覚えるまではきっちりき型ごとに止めて舞っています。