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カテゴリ:その他
当初は3~4回に分けて述べる記事だったのですが、項目が多くもう少し続けていきます。5回目は観光客の増加策、いわば集客についての素案を考えていきます。もう少し皆様お付き合いくださいませ。
観光客をどうやって増やしていくか、これは各事業者によって戦略をどう立てていくかですが、複数の項目に分けて考察を立ててみましょう。 A:付加価値の高い車両の導入 近鉄の場合、しまかぜや青の交響曲のように「乗ること自体が旅の目的になる」ことをコンセプトに車両を新造したり改造したりして沿線のニーズに合うように投入しています。同様にJR九州の場合はD&S列車として、沿線のデザインとストーリーが調和した観光列車を九州各地に投入して路線の活性化を図っています。ゆふいんの森はその最たる例で、代表的な成功例として海外から多くの観光客を呼び込むことに成功しています。 木次線の場合、奥出雲おろち号が集客の目玉になっていましたが、この列車の代替はあめつちで済ませるという、消極的な施策としか考えられないようなカードをJR西日本は切ってきました。米子支社は話し合いの場は作るとはいえ、路線の活性化に消極的な態度を見せているとしか思えません。クリティカルな視点になりますが、これでは沿線住民だけでなく島根県民を愚弄しているとも言えるでしょう。キハ40は確かに、北海道や東日本であれば車両が少なくなっているだけに希少価値が高く、小湊鉄道のように再利用を図って観光客を呼び込むことは可能なのですが、保有車両数の特段に多いJR西日本管内でキハ40を使って目玉になるかといえば答えは明らかに「No」です。希少性がないですし、特定の路線に行けば確実に乗れる形式であるだけに、経営幹部の発想の乏しさが際立ちます。 そこで、新規に車両を導入する場合、新造車両を作って・・・ということが真っ先に考えられますが、新造車は特殊な装備を施すと1両当たり3億~4億円かかるので、JR西日本も赤字ローカル線のために作るのを嫌がる理由は分かります。ここで思い切った方法ですが、既存の海外の車両を入れることを選択肢に含めていくのも手です。敢えて新造車でなく、その土地でしか乗れない車両を導入して来てもらうことは戦略の一つとして、メディアに注目してもらう方法としても有効かと思われます。海外車は広島電鉄や福井鉄道、とさでん交通などの路面電車では既に主力車に混じって活躍をしています。しかしながらJRでは、海外で走っていた車両を転籍させて営業路線に入れたことは一例もありません。 その理由として、車両幅や車体長、線路幅など規格の違いや保安システムの違い、車両の輸送費の高さなど、新造車よりもお金がかかるからです。また、台車の履き替えやATSの改造など、大掛かりな改造も必要なため、効率が悪く導入をしたがらないのが実情ではあります。しかしながら、デメリット以上のインパクトを与えられることは大きな魅力である他、ここでしか乗れないという付加価値も大いに与えられます。例として、車体長が少し長いのですが、比較的新しい車両としては英国の170型ディーゼル車(ターボスター)はデザインもスタイリッシュで内装もモダンなので、木次線のイメージをガラッと変えるのには持ってこいだとは思いますが。 戦略は違うのですが、いすみ鉄道や越後トキめき鉄道は希少性の高い旧国鉄の車両を再活用して沿線の集客に成功しています。これは、鉄道に造詣の深い鳥塚亮社長だからこそ出来た戦略でもありますが、海外車の導入について、鳥塚社長ならどのような見解を示すか、一度ファンとしては伺ってみたいものです。 もし、海外の車両を走らせるということになれば、ATSの設置や台車の交換、運転台の改造、車内の改造など手を加えないといけない部分は多くなりますが、転用改造を施すことは可能です。それだけの技術を持つ会社は数多いですし、京王重機や京急ファインテックなどは他社向けの転用改造の実績があるだけに、できないことはありません。JR西日本でも後藤総合車両所を持っているだけに、対応は十分に出来ます。 B:付加価値の高いサービスの提供 サービス提供のメインとしては、これが肝となるでしょう。現地を訪れるお客さんは、普段体験できないことや食事を求めているからです。食については奥出雲おろち号で実績を持っているため、活かさない手はありません。ただ、寄せ集めでいろんなところから食事を提供するだけではインパクトに欠けます。食事での成功例を挙げると、JR四国のものがたり列車がこれに該当します。特に伊予灘ものがたりは、2か月に1回メニューの更新を行っていること、この4月からホットミールを充実させることで食事のテコ入れを図っていく計画です。事前予約の食事以外にもオプションとして注文できるメニューの幅が広いので、間際に切符を手に入れて事前予約の食事が頼めなかった乗客への配慮もものすごくきめ細やかなので、こういった点も搭乗率の高さを後押ししているところです。 付加価値の高い食事の例としては以下のものが挙げられます。 JR四国のものがたり列車:現地のレストランとタイアップした食事メニューとバリエーション豊かなオプション(酒、おつまみ、軽食、おみやげ、ソフトドリンク、お土産品) いすみ鉄道:車内で本格的な伊勢エビ料理やイタリアンが楽しめるコースを用意 JR九州の36ぷらす3:現地のレストランや料亭が提供する豪華な食事やお弁当 或る列車:NARISAWAのコース料理(東京で食べるとディナーだけで50000円は軽く飛びます。) 西鉄The Rail Kitchen Chikugo:焼き立てのピザを提供 JR東日本のTOHOKU EMOTION:本格的コース料理とスイーツビュッフェを提供 越乃Shu*Kura:新潟の地酒が堪能できる列車 越後トキめき鉄道雪月花:豪華な食事とグレードの高いお土産 長野電鉄:ワインバレー列車の運行 各社とも工夫を凝らして、ここでしか味わえないものを提供していることが伺えます。木次線の場合、食事にフォーカスを当てると、ワインだけでなく、仁多牛やそば、木次乳業のスイーツなど、こだわりの食事を売りにして特別列車を運行することは大きな目玉になります。JR西日本の観光列車の場合、事前予約制の食事は弁当やスイーツセットであることがほとんどで、レストランや有名シェフが提供する食事はトワイライトエクスプレス瑞風に限られているのが実情です。他に挙げるとなれば、ベル・モンターニュ・エ・メールの車内で大将の握りたての寿司が食べられるのが例外なところなので、ケータリングのテコ入れは必要な部分です。 英国の場合、近年の保存鉄道では食事が楽しめる列車の設定が増えています。中でもブルーベル鉄道のように伝統的なコース料理を提供するディナー列車や、フィッシュアンドチップス列車、カレー列車など、提供する食事を多様化することで集客を図っているところもあるのです。日本だと、明智鉄道のじねんじょ列車や寒天列車、きのこ列車、桝酒列車などがこれに該当します。長良川鉄道でもよく似た企画が行われていて、観光列車のながらで、多彩な料理やスイーツ列車が走っています。 こうなりますと、食で観光客を引き寄せる工夫は是非とも欲しいところです。特にスイーツを売りにする場合、木次乳業さんの力をお借りすることが絶対に欠かせません。無添加スイーツは他の地域や列車では真似の出来ない企画でありますし、何よりも乳製品が特段にハイグレードなので、お客さんを満足できる内容は絶対にできます。 C:複数運賃制の採用 これはJRグループの共通で運用している旅客運用規則があるため難しいところもあるのですが、特定の線区において複数運賃制を取り入れて増収を図る策も考えていく必要があります。 現在の運賃制 木次線は地方交通線に分類されているため、地方交通線の旅客運賃を採用。 奥出雲おろち号は指定券530円を加算する。 これだけだと維持が確かに難しいです。そこで、以下のように計算が少しややこしくなる面も出てきますが、海外の鉄道や航空機のように複数の運賃を出しておき、その対価に見合った額をユーザーに出してもらうのも維持していくための方策になります。一例をあげておきます。 1,通常の乗車運賃 2,観光列車の運賃(例としてSL人吉号の指定券は1680円、36ぷらす3は通常のグリーン券に2000円を加算したものを適用) 3,パッケージツアーの運賃(食事、サービス料などを包括した運賃を設定) 4,特別列車の運賃(イメージとして特急のグリーン車や近鉄の観光列車の特別料金を考えてもらえると近いかと思います。しまかぜや青の交響曲、あをによし、ひのとりには低廉ながらも通常の特急料金にプラスして特別料金を徴収しています。) 5,地元住民向けの運賃(ここも肝になります。沿線住民の足を確保するのと、地方の人口増加策として、公共交通機関を安く利用できる施策は福祉では必要です。) 6,繁忙期運賃 7,貸し切り運賃 などなど、設定によっては距離が短いながらも大きな収益を得ることも工夫次第で可能です。そこで前項のBの内容と絡めて魅力あるサービスを提供できるか、伊予灘ものがたりのように大きな成功を収めて車両の更新にまでこぎ着けた例もあるだけに、食の充実やソフト面のアップデートはリピーターを増やしていくためのカギとなってくるでしょう。 D:ファンクラブ、メンバーズクラブの設立 これは第3セクターが主に行っている施策ですが、枕木オーナーや吊革オーナーなど、路線に愛着をもってもらうこと、ファンを作っていく路線にしていくことも重要なのです。平成筑豊鉄道などでは駅のネーミングライツを導入したりするなど、個人・法人問わずサポーターを増やしていく方法を真剣に考えて路線の存続を図っています。また、ファンイベントを開催して付加価値を高め、ここに行かないと出来ないような体験を提供していくことも必要になってゆくかもしれません。 あと1回、その他の項目を複数挙げて、まとめに入ります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.03.25 00:36:50
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