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東京なな猫通信

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2009年01月03日
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カテゴリ:立原道造の森
立原道造記念館の新春企画展が始まりました。
テーマは「立原道造の世界6 書簡を中心として[後期]」ですが
内容は記念館に足を運んでいただき
ご自分の目でご覧になっていただくとして、
今日はひとつ、立原道造の書簡についてちょっとお話を。

立原道造ってダレ?
知らない方も多いのかも。
中原中也の名前は知っていても
道造を知らない方は結構いたりします。
この名前をなんて読むんですか?とお聞きになる来館者もときどきおられて
たちはらみちぞう、と改めてお話したりします。

詩人で、建築家で、昭和14年に24歳で亡くなって、
こう定番情報をとりあえずお知らせしまして、
さて、その書簡、てがみですが、
わたしが立原道造に凝るようになったのも
何を隠そう、その手紙からなんです。

大体ワタシは、詩を読むのが実は苦手で(^^;)
作者の世界になかなか入り込めない。
それがこんなに詩を読むようになったのも、
ある日、道造の全集の端本を鎌倉の古書店で見つけ
その5巻本全集の体裁がいたく気に入ったことに加えて
その全集は編年体というのでしたっけ、
年代ごとに、ちょっと無理しつつまとめてあって
『日曜日』とか「萱草に寄す』とか、それぞれ、そのときの代表的な詩集名を
帯のタイトルとしてあったのもとても素敵で
そしてその中でそれぞれ、詩、物語、ノオト、書簡、というふうに
載せられていたので、道造の書いた手紙を初めて読むことになったわけです。

そこですっかり、立原道造という詩人にはまってしまいました。
ハナシには聞いていたけれど、という感じで【笑
いいだろうなとは思っていたけど、
こんなにイイとは思いませんでした。

さて、わたしがそんなに夢中になった手紙のひとつを
その5巻本全集第一巻(『日曜日』)からお知らせしましょう。


    五五 [国友則房宛 九月三日]

  則房よ。僕は上野ステーションの三等待合室にゐるんだ。ここがすつかり
 気にいつちやつた。僕の部屋の二○○倍位広いよ。いろんな人が汽車を待つ
 てゐる。僕だけなにも持つてゐない。今はおひるすこし前だ。この待合室で
 汽車弁を売つてゐないからどうしよう。今、僕の前を四つか五つの女の子が
 お尻をまくつて裸足でかけて行く。その母らしい若い女の人がいつしよに。
 女の子はおしつこつて叫んでゐるよ。それから僕の前に、若い夫婦づれが荷
 をいつぱい持つて坐つてゐる。ちやうど今拡声器が何か告げた所だ。僕には
 いつでもその声が何をいつてゐるのかわからないんだ。大ぜいの人がすこし
 あたふたと立つて行く。前にゐた人たちも行つてしまつた。お腹[「ナカ」
 とルビ]がへつて来たよ。上野ステーションの外は雨降る天気だ。僕はコー
 モリ傘を持つてゐない。おひるをどうしたらいいかしら。なぜこんな心配の
 あるとき、君に向つてたよりを書き出したんだらう。ここに坐つてゐるとい
 つもはもつとすばらしいことばかり書きたくなるのに。


                           角川版5巻本全集第一巻所収


なんでもない手紙なのですが、なんだか好きで、
この、立原が良く、用がなくても行った上野駅のその場所、
今はもうないけれど、わたしもちょっと行ってみたりしました。

ほかにも素敵な手紙が全集には満載。
筑摩版の新全集の中の書簡集も楽しみです。
立原道造記念館の新春企画展では
道造が死の前に旅した九州旅行の途上で
婚約者の水戸部アサイさんに送った
デパートのレストランの紙ナプキンに書いた手紙も展示されており、
展示チラシにはそのナプキンの手紙がデザインされています。

2009年のお正月も今日で3日目。
正月ドラマやお笑い番組に見飽きたら、ちょっと足を伸ばして
文京区弥生、東大の弥生門の前にある
立原道造記念館にぶらぶらお運びください。
70数年前の古くて新しい手紙があなたをお待ちしています。




☆☆☆コメントにご返信☆☆☆

書込禁止範囲を設けてあるのですが
そのためか、いただいたコメントに
なな猫本人もコメントできない不具合が生じました(-_-)
楽天さんの今後の課題です:-)

というわけで、シーナさんへのご返信を
ここに書かせていただきます。

シーナさん、書込ありがとうございました!
立原道造って、当時でもいろんなことに夢や関心を持った人でしたから
現代のツールを使ったらどんな新しいことに挑戦しただろうかと思いますね!

拙いサイトにお寄りいただき、本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします(*^_^*)







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Last updated  2009年01月08日 18時59分02秒
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