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東京なな猫通信

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2009年01月09日
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カテゴリ:立原道造の森
今日の道造詩ひとつ。。





    一日は……



   I

揺られながら あかりが消えて行くと
鴎のやうに眼をさます
朝 真珠色の空気から
よい詩が生れる



   II

天気のよい日 機嫌良く笑つてゐる
机の上を片づけてものを書いたり
ときどき眼をあげ うつとりと
窓のところに 空を見てゐる
壁によりかかつて いつまでも
おまへを考へることがある
そらまめのにほひのする田舎など



   III

貧乏な天使が小鳥に変装する
枝に来て それはうたふ
わざとたのしい唄を
すると庭がだまされて小さな薔薇の花をつける



   IV

ちつぽけな一日 失はれた子たち
あて名のない手紙 ひとりぼつちのマドリガル
虹にのぼれない海の鳥 消えた土曜日



   V

北向きの窓に 午すぎて
ものがなしい光のなかで
僕の詩は 凋れてしまふ
すると あかりにそれを焚き
夜 その下で本をよむ



   VI

しづかに靄がおりたといひ
眼を見あつてゐる――
花がにほつてゐるやうに
時計がうたつてゐるやうだ
きつと誰かが帰つて来る
誰かが旅から帰つて来る



   VII


もしもおまへが そのとき
なにかばかげたことをしたら
僕はどうしたらいいだらう
もしもおまへが…………
そんなことをぼんやり考へてゐたら
僕はどうしたばかだらう



   VIII

あかりを消してそつと眼をとぢてゐた
お聞き――
僕の身体の奥で羽ばたいてゐるものがゐた
或る夜 それは窓に月を目あてに
たうとう長い旅に出た…………
いま羽ばたいてゐるのは
あれは あれはうそなのだよ



   IX

眠りのなかで迷はぬやうに 僕よ
眠りにすぢをつけ 小径を だれと行かう

















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Last updated  2009年01月09日 16時13分00秒
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