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カテゴリ:立原道造の森
今日の道造詩ひとつ。。
一日は…… I 揺られながら あかりが消えて行くと 鴎のやうに眼をさます 朝 真珠色の空気から よい詩が生れる II 天気のよい日 機嫌良く笑つてゐる 机の上を片づけてものを書いたり ときどき眼をあげ うつとりと 窓のところに 空を見てゐる 壁によりかかつて いつまでも おまへを考へることがある そらまめのにほひのする田舎など III 貧乏な天使が小鳥に変装する 枝に来て それはうたふ わざとたのしい唄を すると庭がだまされて小さな薔薇の花をつける IV ちつぽけな一日 失はれた子たち あて名のない手紙 ひとりぼつちのマドリガル 虹にのぼれない海の鳥 消えた土曜日 V 北向きの窓に 午すぎて ものがなしい光のなかで 僕の詩は 凋れてしまふ すると あかりにそれを焚き 夜 その下で本をよむ VI しづかに靄がおりたといひ 眼を見あつてゐる―― 花がにほつてゐるやうに 時計がうたつてゐるやうだ きつと誰かが帰つて来る 誰かが旅から帰つて来る VII もしもおまへが そのとき なにかばかげたことをしたら 僕はどうしたらいいだらう もしもおまへが………… そんなことをぼんやり考へてゐたら 僕はどうしたばかだらう VIII あかりを消してそつと眼をとぢてゐた お聞き―― 僕の身体の奥で羽ばたいてゐるものがゐた 或る夜 それは窓に月を目あてに たうとう長い旅に出た………… いま羽ばたいてゐるのは あれは あれはうそなのだよ IX 眠りのなかで迷はぬやうに 僕よ 眠りにすぢをつけ 小径を だれと行かう お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009年01月09日 16時13分00秒
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