whoami

小冊子の表紙イラスト

お気に入りブログに入っている夢織り猫さんが発行している小冊子のために描いた表紙のイラストです。夢織り猫さんとは、昔からの知り合いです。これの前に描いたのは、猫が窓の外を見ているイラストだったのですが、夢織り猫さんが、猫が窓の外に出ようとしている方がいい、と言ったので、書き直しました。今度は気に入ってくれるかな。

明るい未来　１

爪ヤスリで、爪を丸く整える。爪切りで爪を切ると、角度がうまくコントロールできずに、バランスが崩れる。左右対称でない爪は、気にしないでおこうと思えば気にしないでいられるのだが、そこに澱のようなものが残る。雑にしていることを気にしないようにしていると、その澱が溜まっていって、やがて口を塞ぎ鼻を塞ぎ、窒息して死ぬのではないか、と思えてくる。長くても短くてもいい。左右対称に丸く整えた爪に、パールピンクのマニキュアを塗る。なぜ塗るのか、意味はわからない。指を長くきれいに見せるためだ。だけど、つきつめて考えてみると、それに意味があるのか、未来にはわからない。男の前で、手を揺らしてみせるためだ、とも言える。でも、それに何の意味があるのか、男が未来の手を握って引き寄せる。体に電流が走るような感覚。でもそれに何の意味があるのだろう。つきつめて考えると、なんでもそうだ。だから、未来は、つきつめて考えないようにしている。澱がたまっていく。頭がぼんやりしてくる。隅田川にかかる橋を歩いていた。吾妻橋だ。半ばで立ち止まって、橋の赤い欄干に身体を預けて、川面を見下ろした。半透明の丸いものがたくさん川を流れていく。くらげの群だった。くらげの群は海へ向かっていた。ビルとビルの間を流れる川を。夜、寝る前に、気に入った映像を見ると、脳がリラックスしてよい睡眠が得られる、と脳科学者がテレビで喋っていた。未来は、いつも同じ映画のDVDを、灯りを消した寝室のベッドの中で見てから眠る。『アカルイミライ』という映画だ。映画の中で、くらげの群が長い川を海へ向かう。映画を１００回観た。何かが成就したのかもしれない。隅田川でくらげの群を見たのはその次の日だった。映画の中の川が現実へ溢れだし、増水した川に現実が飲み込まれるような感覚に一瞬おそわれた。映画の中の川と現実の川を、フィルムのように重ね合わせる。すこしの誤差が、ホログラムのようなぶれを生み出す。その映画が現実の中へ現れたのは、このときだけではなかったのだ。（つづく）

ヌード　５　クロッキー

今までは、２時間半ほどずっとひとつのポーズを描いていたのだけれど、今回は、短い時間のポーズを何枚か描いた。デッサンの時と同じ描き方をしていたから、クロッキーというよりは、中途半端なデッサンが何枚もできてしまった。なんだか不完全燃焼だった。今度は、短い時間でも完成できるような描き方をしよう、と心に決めたのであった。モデルさんが変わって、ゴーギャンの絵に描かれた南国の女性のような感じの人だった。

詩の朗読会　３

６月３日に『歴程』の詩の朗読会にでかけたことを日記に書きましたが、その続き。会場となった場所は、大きなリビングルームのような感じで、床やソファにおもいおもいに座り、昼下がりに、野村喜和夫という詩人が、おま○こ、とか精液とか、そういった言葉の入った詩を朗読して、お年を召した婦人が、それを素敵ね、と賞賛し、つまり、なんというのかなあ、そのリビングには、詩を書く人ばかりが集まっていたのだけれど、袴を穿いたおじいさんの詩人や、厚化粧をしてお洒落をしたおばあさんの詩人や、若い詩人、中年の詩人、盲目の詩人、著名な詩人、著名でない詩人、それと私みたいに詩をそんなに書いていない者までが一つの場に居、昼下がりにフォーレターワードを口から吐くことがおばあさまから素敵だと賞賛される場所、というのは、職場・学校とはまったく違う場所、正反対の場所で、とても解放されたような気がした。わたしのおばあさんは、たとえ詩の中でも、おま○こ、などと私が言ったら、素敵ねとはとても言ってくれない。きっと蔑まれる。今の私の職場はとてもとてもオカタイ。職場とはそういう場所であるとしても、それでもあんまりだとおもう。あるいは、詩人は年をとらないのかもしれない。見る人から見たら、変人の集会にみえるのかもしれないけれどね。私の中には、そういう視線もある。４９（思想）対っていいな睾丸だって卵巣だってみんなそうだもの思想もふたつもっておくといいふたつあればぶつかり合うしぶつかり合えばこわれるそのくらいがちょうどいい『（刺繍－素晴らしく不穏な）』　野村喜和夫　（『現代詩手帳』（２００６年１１月号））　より抜粋それから、高橋順子の朗読は、素敵なお声だなあ～と感じ、那珂太郎という人は、もう老齢の詩人で、今は詩を書いていないという方。昔書かれたという、やまとことばの詩を読まれた。こころ残りは、私はすこし遅れていったので、第一部を見られなかったこと。和合亮一の詩は好きなので、朗読をきいてみたかった。（終）

６月９日の絵日記

６月８日その２

小津安二郎の映画は好きです。人の道はつらく、みんな笑顔の下に、暗い業を抱えている。原節子の笑顔が、月の光の下に輝くようで好きです。

2007.6.8

『金曜日のスマたちへ』に、中村中という歌手がでていました。以前、黒澤清監督の『叫』という映画を見に行ったのですが、その映画の主題歌がこの人の歌で、そのとき、すごいいいなあ～と思いました。女性とばかり思っていたのですが、そして姿形もきれいな女性なのですが、実は男性なのですね。なぜ、あんなにも、女性の象徴のような声、歌い方、が可能なのか、神秘的です。

ヌード　４

いろいろな画家のデッサンを見た。ダヴィンチ、ピカソ、レンブラント、ホッパー、ムンク、ルドンなど。デッサンなのに、作品だったし、それぞれに個性があった。動きのある腺、強すぎるほどの光と影、逆に淡すぎる濃淡。デッサンは、ただ機械的にものをうつすものではないのだ。と学んだ。ルドンの画集を教室に持って行って、休み時間になると見た。ルドンは、初めは木炭画をずっと描いていた。それから、銅板画や石版画を制作した。モノクロの作品が多いようだ。デッサンをしていて私が今一番表現したいのは、ものがそこに確かに存在している、ということだ。でもどんな風に描いたら表現できるのかな。それがわかるまで、自分なりの腺が描けそうもない。自分の意志というよりは、そこに在るものに、描かされるままに描いてしまう。自分の意志に、ずっと確信がもてない。それにしても、モデルさんはきれいなひとなのに、こんな風に描けてしまうのがちょっと残念です。

詩の朗読会　２

会場に、私の大好きな詩人の高橋順子さんが入ってきた。色が白いかただな、と思い、思った通りのすてきなひとだった。東京に来て、つらい時に何度も読み、通勤時間にも読んでいた。私は、頭がかたいのだろう、好きなものは何度も読むけれど、いろんなものを読むことができない。この本は何度読んだかしれない。高橋さんに、サインをしてもらった。本をさしだすと、高橋さんは、「あら、ずいぶん読み込んであるのね」とおっしゃった。よく読んでいるのをわかってくださった、と思ってうれしかった。ワインを飲んでいたので、酔った勢いで、「活字になった詩と、朗読と、どうちがうんですか」ときいた。今考えると唐突にそんなことをきいてしまったことが恥ずかしい(>_

詩の朗読会　１

自由が丘の大塚文庫というところで行われた詩の朗読会に行った。『歴程』という、草野心平らによって創刊された詩の同人誌による朗読の会だった。ひとつには、活字で充分満たされる詩を、さらに朗読するって、どういうことなんだろうとたしかめたかったのと、もうひとつには、朗読する詩人の中に、好きな詩人がいたから、ひとつでかけたのだ。最近は、気になることがあると、気が乗らなくてもつとめてでかけることにしている。たとえば谷川俊太郎とか宮澤賢治や、今日出演された高橋順子さんの詩など、活字でよんですばらしいと思い、充分満たされるのだけれど、それを声で読むということが、ひつようなんだろうか、よけいなことじゃないのかな、とも思えるのだ。大塚文庫というところは、お家のような作りで（元はだれかのお家だったのかもしれない）、会場である２階のサロンに行くと、たくさんの人が、思い思いに椅子や床に座っていて、おだやかな開放的な自由な空気がただよっているようだった。朗読なのだけれど、もともとがよくない詩は、活字ならまだいいけれど、肉声で朗読され、わざとらしい抑揚が入ったりすると、なんだかきもちわるい感じをうけるものもあった。身の上話をされるような、押しつけがましい感じになるな、と。活字のままだったらまだ乾いていてよかったのに。朗読されて、いいな、と思うものもあった。もともとの詩がいいのと、朗読の仕方も、わざとらしくなくごく普通に、冷静に読まれていると、いいな、と思えた。いくつか印象に残った。高貝弘也という詩人は、最近は薄い紙に書くんです、と言って、トレーシングペーパーのように見える半透明の紙に書いた詩を、読み終わっては手から離し、紙が周りに散乱するのがよかった。意味はわからないのだが、呪文のように残る不思議な詩だった。露見忠良という詩人は盲目で、白い紙にうたれた点字を手で触りながら読む姿が心に残った。（つづく）

ヌード　３

３回目のデッサン。先生が、「他の人の描き方を見て回ってご覧」と言ったので、他の人全員のデッサンを見た。私は先生に言った。「みなさんのは、ひとつの絵になっていると思います。私はただそこにあるものを写してるだけですね。」他の人は、形をとることを気にせず、自分なりのヌードを描いている。私は単純素朴な田舎者だな、と思った。デッサンといえば、形をとることだと思ってしまう。あらためて、デッサンってなんなのかなあ、と思う。言えることは、私のデッサンは、他の人のと比較すると、ほんとにつまらない絵だということなのです。しょんぼり。

２００７年５月２１日

これはその日にいいなと思った写真を見ながら描きました。

2007.5.27

絵日記です。その日に出会った風景等を、写真などを撮らないで頭の中の記憶をたよりに描こうと思っています。

ヌード

デッサン教室の隣の部屋では別の授業をしていて、先生の声が聞こえてくる。現代絵画の授業なのだけれど、先生はずっと話しつづけている。デッサンをしながら聞き続けていると、差別と偏見の話らしい。「被差別部落というものがあるんだけど、」被差別部落の青年を強姦殺人の犯人にでっちあげた狭山事件の話や、以前に痴漢をしたとされた、経済学者の植草という人、あれは冤罪だよ、などと話ていた。当時の小泉首相を強く批判していたから、陥れられたんだ、とか。へえ～、そうだったのかあ～。頭の中にある、卑小な偏見というものは、かなしいですね。そんなくだらないものは、確かに絵を描くのにはとらわれていてはいけないものだなあ。この女性は先週と同じモデルさんなのだけど、前回、一生懸命鉛筆を動かしたら、筋肉質の、色の真っ黒な女性みたいになってしまったので、今回はなるべく鉛筆をむやみにうごかさないようにしたのだけど、存在をとらえるにはどうしたらいいかぜんぜんわからないです。

ヌードデッサン

美学校という絵の学校のデッサン教室に通い始めました。問い合わせの電話をしたら、受付の年配の女性が、「うちでは、ヌードモデルしか素材にしません、シズカモノでは、お金をうけとれませんでしょ」と言った。シズカモノ…？あ、静物のことか。その筋では、シズカモノというのか…。ならっているほかの人はみなとても上手で、自分の絵が粗雑すぎて恥ずかしくなってきました。でも、それでこそやりがいがあるなあ、と思います。はじめは自分はうまくかけてるな、と思っていたんだけど、隣の人のデッサンをみてみたら、私のとはまるでちがうのでした。なんというか、複雑な諧調が見事に描かれていて、私のがモノクロ２階調、だとしたら、隣のひとの絵は、100階調くらいのグレースケールのような感じだと思いました。

職場風景

前にもすこし書いたのだけれど、職場の女子大の生涯学習センターで、結純子さんによる一人芝居『地面の底がぬけたんです－あるハンセン病患者の不屈の生涯－』を上演することになったのは、父親に言われたからだった。父親は、昔から、ハンセン病回復者を支援する活動をしているので、私が生涯学習のセンターにせっかくいるのなら、このお芝居を上演して、ハンセン病についての認識をすこしでも広めてはどうか、ということだったのだと思う。去年、このお芝居を自分でも見に行って、ハンセン病というテーマ、ということにかかわらずお芝居としてすばらしいものだったので、やってみよう、と思い、職場に提案したのだった。でも自分で職場に提案して、責任を持ってお客さんを集める、という作業をするなかで、父親に言われたから、というのではすまないような感じがしてきたのだった。自分がこのお芝居に対して、またハンセン病問題についてどう思うのか、ということを突きつけられるようになった。そしてそれは、何かに真剣になることを避けていたわたしに、真剣になるのか否か、ということが問われることになった。おおげさに言えば、生きるのか、それとも死ぬのか。というように。（と書いて、すごいおおげさのような気がしてきた）。もともと、ハンセン病問題にも、ボランティア的なものにも、私はあまり興味がなかったのだった。世界には楽しいことや美しいことと同時に、悲しいことや苦しいことに満ちている、と思っている。悲しいことは、ハンセン病差別や、戦争という極限的な状況にもそれはあると同時に、日常生活の中にも同様にある、と思っており、どちらがよりかわいそうということも感じなかった。今考えると、ボランティアというのは、悲しみの量の問題なのかもしれない。悲しみがより少ない方が、より多い方を助ける、とか。あるいは悲しみ、というのも関係ないのかもしれない。もっとドライな感覚のものであるはずだと思う。ギブアンドテイク、のようなものなのかもしれない。あるいは単純に、私には想像力がたりないのかもしれない。ともかく、自分がハンセン病問題にもボランティアにもかかわる気持ちはなかった。４月２１日にお芝居をやることになって、３月初めには、お客さんがほとんど集まっていなかった。３００人定員なので、せめて１００人は集めなければ形にならない、というので、新聞社やテレビ局に手紙を書いてとりあげてもらおうとしたり、雑誌に広告をだしたり、と。がんばる、ということからは、大学生の時以来だんだんと遠ざかっていた。がんばるということが、生きることだとしたら、わたしはずっと生死の境をふらふらしていたのにちがいない。何のためにがんばるのか、何で生きているのか、わからないかぎりは、生きることが罪にさえ感じていたし、がんばることはなんだか卑しくかんじていた。それはべつに悪いことではなく、いいことでもないと思っている、ただそういう状態であったのだ。そういう私が、お客さんを集める、ということに、なりふりかまわず、というふうにがんばらざるを得なくなったのだった。このがんばるということは、ひさしぶりにやってみると、鉛筆画に淡く色をつけていくような、モノクロの世界に色がついていくような感覚だった。何かのために、役に立つために、という目的は、無条件に世界を輝かせるのかもしれない。（つづく）

水の女

４月１５日

花冷え

空気中を水滴がつたうかのようにまつげがいつのまにかひんやりとしている涙かと思う涙かもしれない悲しいことは何もなくても悲しみのようなものは空気中に分泌されているのかもしれない黒々とした春の土空虚の上を桜のはなびらが覆いつくしていく

『水の女』習作

雑木林（途中）

スケッチに没頭していると、突然「絵かいてるの」という声が、頭の中に響いてきた。顔を上げると、おそろいの赤い帽子をかぶった兄弟が立っている。小学生４年生くらいと小学生１年生くらいに見える。くちぐちに「わあ～」「すごいね」「じょうずだね～」「えへへ、そう？（そんなにうまく見えるのかな）ありがとう」「どこを描いてるの？」と、兄のほうがきく。そう聞かれて、あらためて目の前を見る。私達のすぐ目の前には、大きな雑木林が在る。木と木の間に静かさがただよっている。散りかけた白木蓮が一本立っているところを私は指さす。「あそこに白い花があるでしょう、それが、これ」「ふうーん」兄弟は私の絵と風景を、まじめな顔で見比べる。ちいさい方が、バックから飛び出ている色鉛筆の箱をみつけると「これで描くの」と箱をさかさにして色鉛筆を小さな手に何本もわしづかみにする。「うん、それも使うよ」「これは？」と筆を指さすので、「これも使うよ」と答える。目は黒目ばかりで、鼻の下に鼻水がこびりついている。「ざりがに釣れた？」と私はきいてみた。あたりの池や小川ではざりがにが釣れる。「たくさん釣れたよ」と一段大きな声で答える。しばらくして「ぼくたちもうもどらなきゃ」と弟の方が、お芝居のセリフのように言う。家族でここに遊びに来て、楽しくて興奮しているんだな、と思う。「じゃあね～」かわいいなあ、と思いながら笑っていると、お兄ちゃんがふりむいて赤い帽子をいじっている。それから彼は私を見て「うまくいくといいね」と言った。「うん、ありがとうね」と私も彼を見て答えた。（あとは写真を見ながら仕上げる予定です。）

差別　排除　それとも

何？

ある日の視線

右へ行け理由は無い

中上健次『水の女』

ちょっと怖い絵になってしまったなあ。でも、きれいさや快さを表現するものばかりが芸術なのではナイ、と思っている。

水の女のイメージ

映画『叫』の感想

顔を海水につけられて女が殺される。赤いワンピースからむき出した脚がもがいて、やがて動かなくなる。医者の父親が、手に入れた筋弛緩剤を、手に負えなくなった息子に打ち、殺す。精神病院で、監禁された患者が、海水に顔を着けられる体罰を受ける。開発されかけて見捨てられた土地に建てられた廃墟にとじこめられたまま忘れられ、白骨化した女。『叫』に出てくる、このような場面の、残酷さに心を打たれる。黒沢清監督の他の映画でも、いつも、心に響く残酷さが現れる。でもこれは残酷なのではない、リアルなのだと思う。この世界の、いろいろな場所で、現実に、起きていることである。戦争はなくならず、殺人のニュースは日常茶飯事であるのだし。戦争も殺人も、遠い世界の出来事ではない。自分と同じ人間のすることなのだから。いつもそう思う。穏やかな日常の裏に血が流れていることをいつも感じる。残酷な場面に目をひそめるとしたら、それは現実から目をそらし、幻想だけをみていたい、ということだ。平和で穏やかな世界、という幻想。幻想ばかりを見て、リアルを見ないことと、廃墟にとじこめたままの女を忘れ去ることは似ていると思う。リアルから目を背けない、残酷さをあえて描く。現実を直視し続ける。この優しさと誠実さに私は惹かれるのかもしれない。

『叫』黒沢清（シネセゾン渋谷にて）

私が大好きな黒沢清監督は、あるとき、映画とは何か、との問に答えて、「自分が他と一体か、それとも孤独か、そのことを知る場、それが映画です」と言った。映画館の中で、映画を観ていて、みんなが笑うところで自分が笑わない、みんな笑ってるけど自分はおかしくない。あるいは、みんな笑っているところで自分も笑っている。一体化しているか、孤独か。これは、一人でビデオで観ていてはわからない。映画館で大勢と観なければわからない。そう言っていたので、すくなくとも黒沢清監督の映画だけは、映画館で観たい、と思い、今日は渋谷のシネセゾンに、黒沢清監督の最新映画『叫』を見に行った。公式サイト受付で券を買うときに、受付嬢が、本日は上映後、黒沢清監督によるティーチ・インがありますので、終了時間が遅れますがよろしいですか、と言った。来る前に、会社で、ネットでこの映画館のサイトにアクセスしたとき、そんな情報は全く書いていなかった。私は、黒沢清監督の『アカルイミライ』という映画を、１００回はみているのです。その映画のメーキング・ドキュメンタリーも何度も繰り返し観ています。昨日もおとといも、黒沢清監督が話すのをテレビ画面の中に観ていた。思いがけないことに、今日、ほんとうに偶然、実物の監督をみることができ、その存在を間近に感じられる。座席に座った。もうこの映画を４回観にきた、と隣に座った男の子たちが話している。『カリスマ』のあの場面はさあ、とか『回路』の…とか、過去の作品の名前が会話に出てくる。私の知り合いには、黒沢清映画について詳しいひとがあまりいないので、なんだ、こういう人たちもいるじゃん、となんだかうれしく、なぜかほっとした。映画が始まった。まず、開発されかけて見捨てられた東京湾の埋め立て地で、赤いドレスの女が男に水たまりに顔を沈められて殺されている場面。ぞくぞくっとした。夢でいつか見たシーンのような、あるいはデジャブのような感覚。７０年代のドキュメンタリー番組の中にあるような光。葉月リオナ扮する幽霊が団地のドアから出ていく。その場面を観てとなりに座っている男の子は笑っている。私はとくにおかしくはない。映画はすばらしかった。感動を覚えた。テーマは、罪に対する補いとは何か、ということだ。私もまた、たくさんの人々とおなじように、罪を犯しているから、これを補うことはできるのだろうか、と考えることがある。難解なので、簡単な答えを得ることはできない。わからないものはわからないままにしておく、という姿勢が監督の映画にはあると思う。（ついでに主題歌もすばらしかった。中村　中　というひとの『風になる』という歌です。）映画がおわると、心臓がどきどきしはじめた。なぜだろうと思って、ああ、黒沢清監督がもうすぐ舞台にやってくるからだ、と気づいた。唇がふるえ、手が冷たくなってきた。やってきた監督は、観客からあがるどんな質問にも誠実に答えた。にえきらないラストに、監督自身悩んだこともあったけれど、その時期に公開されたすぐれた映画、たとえばスピルバーグの『ミュンヘン』、クローネンバーグの『ヒストリー・オブ・バイオレンス』でも、答えのない誠実なラストだったことにはげまされ、答えのないものは答えのないままでいい、と思ったとのことです。少しの時間だったけれど、監督の存在を感じることができた。これまで思っていたとおりのひとだった、と思った。映画館を出ると、渋谷の街は、映画を観る前とは別の街になっていた。

『誕生』　尾崎豊

尾崎豊の「Birth」を聴いている。感情のむき出しにされた歌い方、時折でてくる、共同幻想、というような観念的な言葉。こういうものは、今のはやりの歌には、あまりみられない。よくいわれているような時代の分析的に言うなら、今は声高に主張する時代じゃない。主張して変えるべきものはとくにない。たとえフリーターでもニートでも、飢え死にする訳じゃないし、爆弾が落ちてきたり地雷に吹き飛ばされたりするわけでもない。いやなことはあっても、変革をさけぶほどではない。なまぬるい音楽がはやってる。それがちょうどいい。つきなみな分析だけど、いまのとこ私にはそれくらいしか思い浮かばない。そういう状況はよくも悪くもない。ただ私は尾崎の歌が好きだというだけだ。このむき出しの歌い方を聴いているとなんだか切なくなってくる。対象がなくても、激しく叫んでいたいな、と思う。このままではいやだし、変わるべきことはたくさんあると思う。

雑木林---鉛筆で

３月１日に描いたスケッチ。伸びていく枝にあわせて手と脳が動く。でも不完全燃焼気味のスケッチです。

海の一日

雑木林---2

東京で今年（この冬？）一番の冷え込みといわれた日に描きました。軍手はめて…。

これは何でしょう

春一番が吹き荒れる中で描いていたのですが一時間ほどで挫折…これが何かわかるでしょうか…

雑木林

あいまいなもの、複雑なもの世界の総体みたいなものをとらえたい意気込みだけは立派なのですねスケッチをするときは、対象、この場合だと雑木林と戦うような気持ちになるいつも負けてるけどそのうちに勝ちたいな

季節のはざま

なまあたたかい風が頬にふれて皮膚のやわらかい所にそっとしめった木の葉を押し当てられたみたいなひんやりとした心地がして木々を見ると風に揺られて葉ずれの音をたてているささやいてそそのかす心がざわめく季節のはざま　深い亀裂

繰り返す朝

朝のプラットフォームに滝のように流れ込む光浮かび上がるひとびとの顔は穏やかで無表情で草食動物の群れのよう(そしてこの光をここにいる誰とも共有していない)どこからともなく古い電車がやってきてひとびととわたしはそれに乗りどこかへ行く(アビコ発　カスミガセキ行)窓の外を流れるのは過去の風景いつも、今ではないドアのわきに立つサラリーマンの眼鏡が光を白く反射する合図のように思えてそれが何をイミするのか考える何かのイミがあるはずなのだと今この電車に乗っていることにもいつか忘れるはずの今日を生きることにも

恋

蒼暗い枯葉や生き物の死骸の堆積と幾重にも重なる気泡を蓄えた分厚い氷の下に埋まっているもの目を閉じた見知らぬ人の顔の上を光がうつろう既視感いつのことだっただろう目を閉じたあなたと目を開けたわたしの視線が重なり合う時間がいつかあったのかもしれないはるか未来のことだったかもしれない

HOME

葉群

あんまり納得の出来じゃないけどせっかく描いたのでのせます。前の描きかけのとどこか変わってるかな…。

生きる歓び１

生きる歓び　2

生きる歓び_1（途中です）

出来上がったらまた載せます。

葉群（途中です）

侵入者

窓の光

前アップした同じ絵に書き足しました。

鉄の遺跡

suicide　children

ニュースでよく耳にする、こどもの自殺という言葉からの連想。熟した実が落ちるみたいにばらばらと落ちるこどもたち。

鉄を鋳る音

無題

人影も家も建物もひとつも見えない場所は好きです。深く心が落ち着きます。世界とか宇宙とか、とりとめもなく考えるのはすごく楽しいです。これはドローイングです。

窓の光（描きかけです）

とび職人になった

ゴーグルと軍手と防塵マスク頭には手ぬぐいを巻いて。ほんとは、よくとびのにいちゃんたちがはいてる乗馬ズボンをはきたかったんだけど。親方である父親が留守で私だけで作業を始めた。天井板をはずした上の桟の間に、防熱材のグラスウールをはめ込んで行く。はめ込んで、大型ホチキスでガチャンと固定していく。たるんでうまくいかない…。親方の戸棚。親方が帰ってきて、仕事は一気にはかどった。一日ですべて張り終えることができた。このあと、発泡スチロール板をはめ込んで、コンパネを張り、壁板を張り、オレンジオイルを塗って完成だ…。父は、家づくりを趣味にしていて、自宅のあちこちを自分でリフォームしているのです。本職のとび職人じゃないです。趣味です。とび職人じゃなくて、大工か…。ちなみに何年か前に完成した台所がこれです。