上京2006 エピローグ
今回、天候と時間の都合で訪れることが出来なかったところがある。それは私の母校稲荷山小学校だ。1982年、団地の開発にあわせてに開校した小学校。最大でも1学年2クラスの学校だったけれど、それだけに、みんな仲良く、大いに遊び、大いに学んだ。私立中学を受験する子は極々少数派であり、放課後も日が暮れるまでサッカーをしたり、走り回った学校は、子供時代の思い出のベースキャンプとも言うべき存在だった。しかし、少子高齢化の進行は想像以上に早かった。最盛期とされる時期ですら全校生徒は450人。しまいには91人と、過疎ともいうべきレベルにまで落ち込んだ結果、2004年、わずか22年の歴史と共に、廃校となった。たとえ遠くにあったとしても、帰る故郷があるうちは幸せだ。でも、それがなくなったと知ったとき、どう思うだろうか…と思いきや、先日、意外なところで母校と再会することになった。なんと、ドラマのロケ地になっていたのだ。しかも、去る10月31日は『実写版ちびまる子ちゃん』と、『役者魂』二つの番組で続いて登場。えっ?と思って調べてみたら、他にも結構使われているらしい。考えてみれば、近くはないとはいえ、都心から2時間弱で行けるロケーション。昼間は殆ど人もいない静かな周辺環境。使う人もおらず、閉校前と何一つ変わらないままの校舎と校庭。ロケ現場としては理想的だ。八王子市としても、積極的に活用が促されており、しばらくは『子供が登場するドラマ』から目が離せないかもしれない。それにしても、東京の西の果てにひっそりと存在していた我が母校が、『学校』でなくなった途端、こんな形で全国にアピールすることになるとは。同じことが永遠に続くかと思われる毎日の中で私は生きている。でも、永遠なんていうことは、まずない。『万物は流転する』のだ。人の営みの本質として変化がある以上、それを止めることは誰にも出来ない。だからこそ、今そこにあるすべてのものが愛おしく思える。大事にしたいと思える。中学の数学教師の口癖を今も思い出す。『今日という日は、二度と戻ってこないのよ』ー了ー