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くりごと

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2007年10月10日
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カテゴリ:文化・伝統


昨日は上野の森美術館に行って来た。
前日に偶然見つけた「山下清展」が9日で最終日だというので、
珍しくどうしても実際の作品を見てみたいと思い出かける事にした。



ご存知のように山下清は「放浪の画家」としてドラマ化などもされ
特異な人生と独特な作風で有名な人である。

しかしドラマは飽くまでも脚色され本来の姿とは別に一人歩きしていて
面白おかしく大衆受けする作為があるので実際の山下清ではない。

もちろん下敷きになった彼のユニークな生き方は事実であるが
実際に彼が残した作品と触れる事で違ったものを感じられるだろうと、
駅までの道を傘を差して出かけてみた。



上野公園の森には鳥の声が響く中、仄かにギンナンの実が匂っていた。
既に雨は上がり、木々の香る湿った空気はどこまでも奥深く
いくら吸い込んでも終わりが無いような透明さで感じられた。



mus連休明けの週日ではあったけど美術館の人出は結構多かった。
折り紙で作られた作品はかなり色あせが進み現在は修復作業が行われているそうだ。
その細かい手作業の巧緻さには驚く程で、実際感想を述べる表現の仕方が解らない。
素晴しいと一言で終わってしまえるような素晴しさではない。
幅が1mm程の細かい紙縒り状の重なり合った複雑な線が生き生きと躍動している様は、作品に目を近づけて凝視すれば集中した一部しか解らなくなってしまうような細かさだ。
しかし数歩下がって全体を眺めると、それが作品全体の構図に溶け込み1mmの一つでも無くてはならない要素になっている事が解る。
スラーの描いた点描画の一つ一つの点を総て非常に小さい紙を千切って張り合わせたような作品とも言えるだろう。





山下清は貼り絵以外にも多くのペン画を残している。
いわゆるマジックペンで描いた作品である。

彼は頭の中に描いた風景を「間違えの許されない」つまり「書き直し」の効かないペンでのびのびと、しかし非常に細かく完成させている。

素直な曲線でいかにも気持ち良く描かれた富士山の姿やヨーロッパ旅行時の風景など、今まで全く知らなかった種類の作品を見る事ができた。



彼の放浪生活は通算で14年間ほどであって、有名になってからは自分の作品の展覧会と共に日本中を旅してスケッチして周った。
その間陶器への絵付けにも才能を伸ばし、大らかな作風の壷や皿を残している。

画伯として有名になっても山下清は最後まで自分を通して何物にも染まらない純粋さと素直さをなくさなかった。

残された放浪日記に書かれた文は句読点やカッコが無くひたすら続く文なのだけど、「話す時には点や丸やカッコは言わないんだな」という持論のままで通したという。

しかし文字はしっかりと読み易く漢字もしっかりと使われていて、決して頭が悪かったとか知能が遅れていたとかの人ではなかったのだと感じた。



作品群を見た事で山下清の素晴しい才能を理解出来たけれど、彼の人格の無垢な純粋さが作品として現れただけだと受け止めた方が良いのだろうかと悩んでいる。










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最終更新日  2007年10月10日 16時00分26秒
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