ある女の話:カリナ57<好きだから>
今日の日記(ガリレオ尽くしな昨日と今日♪ ) 「ある女の話:カリナ57(好きだから)」しばらくお互い黙ったままでいたけど、青山くんは私の顔を見ると、肩を抱いて引き寄せた。「カリナ…嫌なら、やらなくたっていいよ。」私は青山くんの腕から伝わるぬくもりと言葉にホッとして、涙がますます止まらなくなった。「嫌じゃないの…怖いだけ…」私は青山くんからもらったティッシュで涙を拭いながら、何とか言葉を出した。「あのさ…」青山くんは、ゆっくりと言った。「別に体だけじゃないから…。我慢できるし、納得するまで…。ちょっとツライけど。」私が顔を上げて青山くんの顔を見ると、青山くんが真剣な目で私を見て言った。「何年カリナのこと待ってたと思ってんの?」この言葉で我に返った。彼は3年前、本当に私のことが好きだったんだ?青山くんは私の目をまっすぐに見て、言葉を続けた。「ずっと、カリナのこと忘れられなかったから、未練たらしいけど、年賀状出してたんだよ。カリナが、ボクのことを好きって言ってくれてたから。ずっと、カリナのこと後悔してたんだ…。」私が青山くんのことを忘れて、他の男の人と付き合ってる間、後悔してたって言うの?私のこと、ずっと好きだったって言うの?だからまだ待てるし、私がいいって言うまで待つって言うの?バカみたい。私だって好きだったのよ。3年前、すごく好きだったのよ。どうして私が告白した時に言ってくれなかったの?そうしたらこんな回り道しなくて良かったはずなのに。心の中に悔しさといっしょに、何か温かいものがジンと降りてきた気がした。私は自分から青山くんの頬に手を当てて、キスをしてみた。青山くんが大好き。こんなふうに想われていたことにずっと気付かなかったし、こんなふうに想われたことなんて、今までなかった。自分からこんなことをしたら、青山くんが我慢できなくなるのはわかっている。わかってて自分から青山くんの舌を誘うようなことをした。青山くんは私の誘いに素直に応じてくれた。もう拒んだりしちゃいけない。そう自分に言い聞かすけど、青山くんの手や舌が私の体を支配していくと、また逃げ出したい気持ちになった。「ヤ…。やっぱり…こわ…い」泣きそうになりながら言うと、私の体から顔を上げた青山くんが、私の目を見て言う。「カリナ…嫌いになんかならないから、怖がらないで…。カリナ…好きだよ…」優しくて熱いキスをする。冷たい氷が溶けていくように、呪いが解けていくように、私の体からも力が抜けていった。この人だったら、傷ついたっていい。好き大好き私は青山くんにしがみつく。体が熱い。「何か…あったの…?」青山くんが私に腕枕をしてくれて、ボソリと呟いた。今体が繋がったばかりだっていうのに、体が離れると、私の心はどこか淋しい気持ちになった。「ううん…。何でもないよ。何もない…。」聞かれて昔のことを思い出すと、怖いことから逃げてきたような気持ちになって、私は青山くんの胸に顔をうずめる。「どうしたの?」「私…アオヤンともっと早くこうなれば良かったと思って…もう、わかったでしょ?3年前に戻りたい…男の人知るなら、アオヤンが最初が良かった…」あんなふうに言ってくれても、青山くんが私の体を知って離れていってしまうような気がした。3年前と私は確実に違う。青山くんが好きだった3年前の私とは…そのことが無性に悲しかった。「そんなこと、言うなよ…。後悔しちゃうじゃん。ホントは、3年前の初日の出見た時に告白したかったのにさ…。」「後悔してるの…?」やっぱりそうだよね…そう思うと、少し悲しい気持ちに拍車がかかった。「あの時、早く告白すれば良かったって後悔はあるけど、今、こうしてることに後悔はしてないよ。」青山くんはキッパリとそう言った。「カリナが何人男知ってたって、いずれはこうなってたんだと思うよ。ボク、カリナのこと好きで、ずっと抱きたかったし…。多分、ずっと待ってたと思う。」何人も知ってないんだけど…そう思ったけど、青山くんがそう言ってくれたことが嬉しくて、つい笑いが漏れた。「そうなの…?」「そうだよ。悔しいけど、好きになっちゃってたし。ずっと、忘れられなかった。」悔しいとか、忘れられないとか、自然と心にくるようなことを青山くんが言ってくれるので、たまらなくなって抱きついた。「ごめんね…。私、アオヤンが好き…。すごく好き。」どうして私はすぐに人を疑うようになっていたんだろう…私はもう3年前には戻れないかもしれないけど、それでも今の気持ちは、3年前の、青山くんのことをあまり知らないで好きだった頃よりも、ずっとずっと好きになっていると思った。「あやまらなくていいよ…。」青山くんは私に軽くキスして笑った。好きになっていくと、相手を失うことの怖さばかりが優先して、体が欲しくなるんじゃないかと思っていた私に、体が一つになっても、それだけじゃない安らぎを与えてくれる人がいるって、初めて知った瞬間だった。それから青山くんは私の付き合ってた人のことを聞かなかったし、私も青山くんの過去を聞こうとしなかった。聞いたらきっと気になって、その人と自分を比べて落ち込みそうな気がしたからだけど、付き合っていたのがどんな人だろうと、今の青山くんを作ってくれて、私のところに戻ってきてくれた。そのことに満たされていたからだと思う。会わない間も、青山くんの中に私の居場所があったように思えた。どうかこのまま青山くんとずっといっしょにいられますように。私は青山くんの体を抱きしめながらそう思った。前の話を読む続きはまた明日目次