ある女の話:カリナ7<気になる彼>(再)
今日の日記(「JIN~仁~」感想と映画「マルタのやさしい刺繍」と本日のまかない♪) 「ある女の話:カリナ7」青山くんから電話がかかってくるかもしれない。家に帰って、すぐにお風呂に入っておこうか迷った。でも、夕飯前に入るって習慣がうちに無いから、親に変に思われるのも何だし…。私はとりあえず妹といっしょの部屋で寝転がる。妹は部活やバイトで、とにかく夜は結構遅い。彼氏もいると思う。お互い会う時間が減った。私もバイトしてるし。今日は試験前でバイト入れてなくて良かったと思った。夕食をさっさと済ませて、いつもの雰囲気を装ってお風呂に入る。携帯を洗面所に置いておこうか迷った。う~ん、でも入ってる時に電話が来ても取れないし、来れば着信した履歴が残るからいいか。それに、そこまでして取ったと思われるのもどうだろう…取ったとしても、結局かけ直さないといけない。それなら取れずにかけ直した方がいいんじゃない?そう思って持っていくのやめた。充電器に置いて、マナーモード。帰った妹が取ったりすると嫌だし。平常心。平常心。帰ってから試験勉強しつつも、ずっと頭の中は、携帯が鳴るんじゃないか?ってことばかり考えていた。何て話ししよう?何聞けばいいんだろ?何か誘われたりするかな?あ~、いつ電話くるんだろ?時間ちゃんと聞いておけば良かった!ずっとそんなこと思ってたのに、お風呂に入ったら、なんだかそんなにこだわってることがバカバカしくなってきた。私ばっかりこんな緊張したり、考えたりしてるのかも…。で、またかかってこなかったらガッカリしそうで。なんか私ってホントにバカかも…。そう思うと、シャンプーする手に力がついこもる。で、なんだか出るのが怖いような気分になってきて、お風呂でぼんやりしちゃったりして。あ~、ダメだよ、もうすぐ試験なんだから!それにしても電話来るのかな?部屋に戻ってドライヤーかけて。さて…と、持ち込みノート作る続きしなくちゃな…。だんだん、もういいや…って気持ちになってきた。そう思った途端だった。私の携帯が音をたてた。わっ!ドキドキしながら表示を見ると青山くんだった。途端に今までのブルーな気持ちが吹き飛ぶ。「はい!もしもし…」「あ、あの青山です。カリナちゃん…?」「うん。」名前を呼ばれると、飲み会の時の雰囲気が蘇ってきた。「えっと、遅くなっちゃってごめんね。今大丈夫?」「うん。大丈夫だよ。もう電話来ないかと思っちゃった。」「え?何で?かけるって言ったじゃない?」「うん、でもホントかな~って。」あ、なんかイヤミっぽっかった?私はちょっと自分の言葉に心配になる。「ホントだよ~。あ、でもそうだよね。番号間違えちゃって、かけられなくてゴメン…」「ううん、こっちこそ、もっと早くかければ良かったって言うか…」って、ここまで話して、沈黙になりそうになる。つまらないともう電話くれないかもしれない。 慌てて次の話題を探す。「こっちはもうすぐ試験始まっちゃうけど、青山くんは?試験は?」「え?あ、そうなんだ?うん、こっちは来週の月曜からだけど…」「そうなんだ?うちもだよ。」「はは…、ちょっと授業取り過ぎちゃって。今キリキリしてる。」「一年のうちに取っておくと後々楽だもんね。」「うん、それもあるんだけどさ、結構ぼくは余計な単位も取ってるって言うか…」青山くんはマイペースに自分のことを話し出した。で、私も聞いてるうちに緊張が抜けてホッとする。優しそうな、穏やかなしゃべり方。う~ん、でも色気も素っ気も無い感じ。コンパ後の男の子って、もっとこう…結構次の約束って感じの話したり、パッパと段取り練ってくれる感じなのにな。でも、そんな感じも青山くんっぽい感じがした。どうしようかな?こっちからいつなら空いてるか聞いちゃうのって、何だかすごい私の方が気があるみたい?う~ん、でもこの調子だと、いつ聞いてくれるんだかわからないし…私は話に頷きながらそんなこと思っていた。でもまあ電話来たからいいかぁ~とかって思いながら。あ、妹帰ってきた。そろそろ電話切らなきゃな。聞かれると何だか恥ずかしいし。でも、切っちゃったら、次はどうしよう。今度またかけるね、って言おうか…「ゴメンネ、そろそろ…。妹帰ってきちゃったみたいで。部屋がいっしょなの。そっちも試験勉強しなきゃだよね。電話ありがとう。」「あ、うん。実はこっちも兄貴と同じ部屋なんだよね。僕、兄と姉で末っ子。」「そうなの?私は妹と弟で長女。」そうなんだ?って二人で笑った。何だか切るのが名残惜しい。もっともっといろんなことが聞きたい。青山くんは一呼吸おいた感じで言った。「あの…さ、試験終わるのいつ?良かったら近いうち会えないかな?」心臓がドキンと鳴った。ようやく聞いてくれた~。何だかすごく嬉しい。私が試験が終わる週に青山くんの試験も終わることがわかって、じゃあ、その翌日ってことになった。「あのさ…」「うん?」その時に妹が部屋に来る気配がした。「明日も電話して大丈夫?」またドキンとした。胸がキュンって鳴った感じ。と、同時に妹がドアを開ける。「いいの?」「うん、大丈夫。」「じゃあ…同じ位の時間に。あの…ごめんね。」慌てて返事をする。心臓がドキドキ言ってる。「うん。また明日。」電話を慌てて切った。で、机に向かって何でもないフリして試験勉強しようとする。でも何だか心が落ち着かない…私、変かな?「おねーちゃん、彼氏?」妹が何てこと無い感じで言った。「ん~?違うよ。」平静を装う。そう言いながらも心臓は、まだドキドキ言ってる。「ふーん、そっか。何か声が優しい感じした~。」鋭い。そう言うと妹は携帯を取り出して電話をし始めた。「あ、まーくん?ん、今バイトから帰ったとこ。すごい会いたい~!え?今?いいよぉ~。コンビニね?行く行く!」妹はルンルンしながら、言ってきまぁ~す!ってまた出て行った。お母さんが、今から出かけるの~?って声が聞こえたけど、妹が玄関閉める音のが早かった。なんだ…もう出かけるなら慌てて切らなきゃ良かった。それにしても…、今何時だよ…。親も妹のことは、もう諦めてるような気がした。でも何だか羨ましかった。 すごい会いたい~!私ももっと素直に話せば良かったな…。もっともっと話したかった。そんなこと言ったら引いちゃうかな…?そんなこと思った。まだ一度しか会ったこと無いのにね。前の話を読む続きはまた明日目次