ネオテニーワールド

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• むしろわかるんだ

  どうしても伝わってくるのはあなたが自慢したいことなんだそれはよく伝わってくるんだあなたが言ってることよりもむしろよく伝わってくるんだあなたは自慢したいんだその気持ちがよく伝わってくるんだぼくはどうすればいいのかなんてあなたにとってしょせんどうでもいいことなんだということがよく伝わってくるんだだからぼくはあなたの気持ちはよくわかるあなたが伝えようとしていることよりもむしろわかるんだ自慢って悪いことなんだろうか自慢話って嫌われているけれど悪いことなんだろうか誰にも聴かれることがなくなってしまった自慢話は結局どこに収められどこに隠されたままなんだろう言いたいよ自慢話自分に慢心しているからその話は聴かれないそういうことなんだろうか日本人の美徳のひとつなんだろうか驕る思いあがるだから話すなということなんだろうか自慢するなでは謙虚に話をする謙遜するイヤイヤとんでもない滅相もないつまらないものですが自分を卑下するもともと自分を消すことが美徳とされている愛するという能動ではなく消し去ることで関係に配慮する構造なんだろうかイヤイヤとんでもない滅相もないないないなんでもないたいしたことない言うほどのことはないないないなんでもないいないいないぼくはいないいなくなればいいんだぼくはいないほうがいいんだにならないかと不安だそんなのイヤだ自慢になるかもしれないけれどぼくが聴いてあげることはいいんだあなたの自慢をぼくが聴くことから始まるんだ始まるんだあなたの自慢をぼくが聴くことから世界が変わっていくんだ愛するということを広めていくにはぼくが聴くことから始まるんだあなたの自慢を受け取ったんだぼくがそうしてまた一歩前進しているんだどうしても伝わってくるのはあなたが自慢したいことなんだそれはよく伝わってくるんだあなたが言ってることよりもむしろよく伝わってくるんだあなたは自慢したいんだその気持ちがよく伝わってくるんだぼくはどうすればいいのかなんてあなたにとってしょせんどうでもいいことなんだということがよく伝わってくるんだだからぼくはあなたの気持ちはよくわかるあなたが伝えようとしていることよりもむしろわかるんだ

  2005/01/26

• 首のない鶴

  ぼくは一羽の鶴だったある日アスファルトの上で佇んでいたら首を切られた細い首を天に向かって伸ばしたままぼくは首を切られ溢れそうな血液一杯そうーっと保って立っていましたアスファルトの上でぼくはその首を傾けアスファルトの上に最期の一滴まで使って血液を搾り出し言葉を書き付けました愛してるぼくは愛してるぼくは決して止めないあきらめないきっときっとわかってくれるとわかってくれるときがくるんだと愛してる誰がどう言おうともぼくは愛しているんだと最期の一滴まで零さずに搾り出しぼくは細い首から血液でアスファルトの上に書くんだ愛してると

  2005/01/25

• 手を差し伸べあって

  あなたとぼくはお互いにぶつかり合いぶつかり合いぶつかり合いすれ違いすれ違いすれ違いぶつかり合いぶつかり合いぶつかり合いすれ違いすれ違いすれ違いあるとき偶然奇跡が起こりあなたとぼくは向かい合ってそうして手を差し伸べあって抱き合ったがまたすぐぶつかり合いぶつかり合いぶつかり合いすれ違いすれ違いすれ違いあなたとぼくは繰り返し繰り返し抱き合おうとしていたんだ抱き合おうとあなたが後ろを向こうとすればぼくも後ろを向いてみるあなたが手を上げればぼくも手を上げてみるあなたが激しく嘔吐すればぼくも手を口に突っ込みそうして無理やり嘔吐してみせるあなたはそんなぼくを見てケタケタと笑うぼくもケタケタと笑うぼくはあなたの鏡になりあなたはあなたでぼくの鏡を利用するあなたはぼくの鏡になりぼくはぼくであなたの鏡を利用するそんな関係がずーっと続いてずーっとずーっと続いてまた奇跡が起こりあなたとぼくはお互いに手を差し伸べあって抱き合ったんだ抱き合ったんだ手を差し伸べあってぼくとあなたは

  2005/01/24

• ミシンを踏んでいる

  ミシンを踏んでいる毎日毎日ミシンを踏んでいる母の気持ちはやっとわかった楽しかったんだミシンを踏んでいるミシンとともに生活しミシンとともに生きてきた父を若くして亡くした母は父に与えられたミシンがミシンを踏み続けることが母を支えていたんだ母の父がミシン学校を勧め母は与えられたこのチャンスを最大限に活かした活かし続けたんだ虜になったミシンにミシンを踏み続けることに母の父はそんな母をますます励ました一緒になって生地を選び仮縫いの試着を期待して襟ができれば試着し袖ができればまた試着いつもいつも母を励ました母はミシンを踏み続け戦争はいつの間にか終わって母に恋人ができ母は結婚しそうして田舎に嫁に行きぼくが生まれ相変わらず母は嬉々としてミシンを踏んでいるんだ母はぼくの成長にあわせてたくさんの洋服やセーターを作ってくれたんだくれたんだ母の人生それは母の父が与えてくれたミシンミシンとともに母は困難を乗り越え乗り越えいつも元気にいつも活発に過ごしてきたんだただ最愛の母の父を亡くしたそのときを除いて母は乗り越えてきたんだきたんだ母はいまもミシンを踏んでいるきっといつまでも踏み続けていくんだろう

  2005/01/23

• 神聖な意味

  いやになるときもあるだろう死にたくなるときもあるだろうそんなときは間違っても楽になるため快楽を得ようとするないやになるときもあるだろう死にたくなるときもあるだろうそんなときは間違っても簡単に解決しようとするないやになること死にたくなることそれもプログラムなんだいやになるのはなぜなんだそうして死にたくなるのはなぜなんだきっとあるんだぼくに訪れた意味がきっとあるんだだから簡単に済まそうとするないやになったということは結局なにをしたかったのかどうしていきたいのかそれを追求できるいいチャンスなんだそうして死にたくなったということいいチャンスなんだ死ぬ時期を決めよう自分で決めておくんだいいチャンスなんだ死にたくなったということがね死にたくなったということはぼくになにが期待されているからなのかそう考えようその期待に応えられなくなったから死にたくなったのかしかし期待は誰が期待しているんだろうかぼくにぼく自身はどうしたいんだろうぼくがぼくにほんとうに期待していることなんだろうかとにかく簡単に楽になることを考えるなこれだけは堕落だ留まれ直視せよ苦しみの本質を掴むまで決して逃げるな逃げるなほんとうに逃げるな折角のチャンスなんだから死ぬ時期を決めようそうしていやになったぼくなぜいやになったのか死にたくなったぼくなぜ死にたくなったのか考えようや考えて考えて考え抜ければきっと見えてくるんだ脳の機能はそうなっているそうして気分はきっと良くなるんだ良くなるんだきっとね良くなるんだ脳の機能はそうなっているんだ桃源郷はぼくの脳の機能に隠されているかもしれないじゃないかぼくのことはきっと誰よりも脳が知っているかもしれないなぜぼくは生まれつき頭が悪いのだろうなぜぼくは生まれつき身体が弱いのだろうなぜなぜたぶん意味があるんだ神聖な意味が隠されているぼくが生きていくその意味がね

  2005/01/22

• 生かされている

  心の動きを抑えるなもっともっと発揮せよもっともっと発現せよさらにもっと高めていけ感受できることを高めていけもっともっと風船おじさんのように心の実現したがっていることに耳を傾けよ心を冷静に眺めてみよう心は異物を捕らえ心は情動をもたらす心はぼくの肉体を動かし心はぼくを変化させる変化したぼくは一体感に辿りつきそうして平穏がやって来る心そのものに実体はない情動があるだけだ心そのものと体内で発生する言葉は別のものだ声も肉体の動きも別のものだただ類推するだけだ心ってほんとうはなにもないのかもしれないただ情動があってそうして自己以外の情動を受け取るだけだその交感によって関係が構築されていくしゃべってもつぶやいても悩んでも悔やんでもけんか売っても対話しても怒ってもハッピーでもそれは心ではないもっともっと貪欲であれ心の実現したがっていることに耳を傾けよ心の動きを抑えるなもっともっと発揮せよ発揮せよぼくは生かされているのかも知れないじゃないか

  2005/01/21

• あなたは誰？

  深夜の大学の構内でぼくはあなたに出会ったキャンパスの噴水広場のベンチであなたはぼくに声をかけたあなたはぼくのかばんの中を見てノートやら手帳やらとても興味深々だったあなたは誰？あなたはぼくに本の注文をしてくれたあなたはぼくのかばんの中をもう一度見てノートやら手帳やら手を触れてそうして本のタイトルを思い出そうとする思い出そうとするがどうしても思い出せないあなたは構内の書籍売り場に駆け込んで思い出そうとしているあなたは誰？ぼくはこれから重要な商談を控えているいつ提案したらいいのかその企画書をかばんに入れて大学構内にやってきたそうして時が流れ深夜になってしまったんだ帰りの電車がなくなる前にアポはとりたいそう思いつつ見知らぬあなたに出会ってしまいあなたを待っている思い出せない本のタイトル注文したい本のタイトルそれを捜してあなたは行ってしまったんだあなたは誰？

  2005/01/20

• さようならの前に

  ああそうですかそれではさようならというのは簡単だ人と人の関係になにかの拘りがなければいつもさようならしているんださようなら人と人を結びつけるのはそこに刹那があるからだ意識せずともぼくが拘るのはもう再びはありえない関係を察知するからださようならぼくはそのことばをいつも聞いているあなたもたぶんいつも言っているんだろうさようならもうあと少しでなんとかなるのにあなたはさようならを言う時間はたくさん残っているほんとうに残っているんだろうかさようならそのあとあなたはどうするつもりなんだろうもう二度と会わないかもしれないのにあなたにタイミングというものがあってそうしてそのタイミングが悪いというならばあなた以外の人々があなたのタイミングに合わせてくれると思っているんだろうかほんとうに決断すればそれはつぎつぎと課題がやってきてあなたはそれを乗り越えていくんだつまりは決断するとあなたが主人公になって物語は進行するんだ冒険や勇気や戦いなくして夢を手に入れられると思うなできないぼくにはもうだめだなぜなら環境がこうだから状況がこうだからそう言うのは簡単だああ可哀想な環境ですねたいへんな状況ですねそれではできなくてあたりまえですよねそう言われてあなたは結局慰められてそれでさようならなんだということがわからない途中でやめるなよ決断をし続けろよ途中でやめるなよだからできないできなくなっちゃっているそのあなたの姿に直面しろよできないと思っているそのあなたの姿にそれはあなたがとても大事にしている何かに触れているからだとても大事にしているそれは何なんだろうもっともっと見つめようよ明らかにしようよもっともっとだからね途中でやめないってことは逃げないってことはもっともっと掘り下げていくことなんだあなたの真実思っていることに辿りつくことなんだあなたはほんとうに何のためにこの世に生まれ出てきたのかそのほんとうの理由があるはずなんだあるはずなんだぼくは信じているんだあなたにはあなたの役目があってあなたには逃げたくなるほど辛い試練かもしれないけれど辛いその分量だけもしかするとあなたにとって必要な分量の試練かもしれないじゃないか必要な分量のね試練かもしれないじゃないかもう一度言おうさようならと言うのは簡単だ簡単に済ませてしまうことはできるんだでもそれでぼくは感じるぼくはいったい何のために生きているんだいったい何のためにとねぼくはあきらめないあきらめたらそれはぼくにとって死を意味するから絶対にぼくはあきらめないあなたはきっと決断を実行し続けてくれると信じているよあなたにとってタイミングが悪いのはよくわかるしかしそれはむしろジャストタイミングなんだと思う試練はそういうものだしそういう試練がジャストタイミングであなたに訪れているんだだからさようならなんかじゃないんだウェルカムなんだタイミングの所為にするなあなたが行動することを求められているんだそうじゃないかいできる方向に行動することを求められているんだだからできないじゃないんだ勇気をもって行動することがあなたを変えることになるんだそうじゃないかい

  2005/01/19

• ぽんぽんと

  ボールなんだぼくたちはセンターコートで出会ったボールなんだぽんぽんと弾んでいるんだぽんぽんとコートのなかで自分で弾んでいるんだ自分という意識がボールなんだときには減衰することもあるけれどぽんぽんと弾み続けていくことも出来るんだぼくたちは弾み続けてセンターコートでたまたま触れ合ったんだ触れたものだからぼくの弾み方は微妙に変化しあなたの弾み方も微妙に変化し少し共振したんだそしていつの間にかぼくたちになったなっちまったんだぼくたちにセンターコートのなかで弾み続けているボールがふたつそうしてよく見るとライン際にはたくさんの沈んでいるボールがあるんだたくさんのボールがまだまだあるんだぼくたちはライン際で触れたそれらボールのひとつに触れられたボールはびっくりして飛び上がり思わず跳ねた跳ねたんだライン際で思わずみっつめのぼくたちの仲間が生まれそうしてぽんぽん弾み続けたんだぼくたちは減衰することもあるんだいやむしろほうっておけば減衰するんだだってボールだものねぽんぽんと跳ねていたけれど減衰するんだでも気は確かか気は確かです気は確かであるならばぼくたちは触れ合ったりすることは難なく出来るんだ気は確かかそう空気圧は確かにパンパンさぼくたちはパンパンさだからねぼくは内側から弾むんだ弾むんだよ内側からねなにが楽しいってぼくがあなたにぼくたちが別のライン際でまた触れて別のぼくたちになってまた触れ合うだろうそう思って弾むんだびっくりさせてやろうぜセンターコートのなかでぼくたちはぽんぽん弾むんだぼくたちはぽんぽんとね弾み続けるんだ

  2005/01/18

• 生きている間に

  生きたり死んだりしているぼくは生きている間にお父さんお母さん安心してお休みしてくださいどうか安心してぼくが生きている間にねお二人でできれば同時にできれば一緒に安心してお休みしてくださいぼくが生きている間にねこれだけはどうしても達成したいことなんだからぼくはしっかりとしなくちゃね父の死水を取る同時に母の死水を取るこれが最期に残された最期の最期に残されたしごと最期に残された最期に残りたい最期に残らなければならないこれはね生きたり死んだりしているぼくはこれだけは生きている間にしなければならないしごとお父さんお母さん安心してお休みしてくださいねできれば同時にできれば一緒にね

  2005/01/17

• もっと聴きたい

  もっと聴きたいんだあなたのその声その言葉ぼくはそんなにできるやつじゃないからだからぼくはもっと聴きたいんだだから教えて欲しいあなたがなぜ「決断したんだ」と言えるわけをどうしてもどうしても教えて欲しいんだ欲しいんだ「それは言えない」それは言えないってどういうことなんだろうぼくに言えないってそれはどういうことなんだろうなぜぼくはここにいてあなたの話を聴こうとしているのかあなたがどうしてもわけを言わないそのことによってあなたは何を得ようとしているのだろうかどうしてもどうしても言えないのかほんとうにそうなのかあなたの何が真実なんだろうか教えて欲しいぼくを置き去りにしないで欲しいあなたのことがほんとうに知りたいんだ置き去りにしないでぼくをだからぼくをもっと聴きたいんだあなたのその声その言葉もっと聴きたいんだ

  2005/01/16

• 満面の

  ぼくがあなたに出会ったのは偶然だったかもしれないしそうでないかもしれないけれどあなたがぼくと出会ったことを忘れずにそうしてぼくもあなたに出会ったことを忘れずにそうやってぼくとあなたが忘れずに出会ったそのとき思わなければいまここでこうやって再びあなたに会えるわけもなく久しぶりにあなたに会ってあなたはぼくを迎えてくれて全身で喜びを表してくれたそのあなたの喜びがぼくを元気付けてくれるあなたが満面の笑みを見せ満面でぼくを迎えてくれるその満面がぼくを元気付けてくれるそのあなたの満面の笑みがぼくを奮い立たせる向かっていけよとぼくを

  2005/01/15

• 計算高い

  いつもの手なんだぼくはあなた方を貶めようなんて思ってなんかいないけれどぼくは計算高いだから計算して計算して答えを出すんだそれは間違っていないぼくは間違っていないということを確認するんだだからどうなんだぼくはあなた方を貶めようなんて思ってなんかいないけれどだからうまみはないんだと言い切ってしまうんだだからね疑うわけじゃあないんだけれどどうしてもそうなっちまうんだそれで結局もとの木阿弥さ食べないで済まそう食べないでしまっておこういつの間にかぼくが逃げ腰になっているぼくは間違っていない間違っていないんだけれどどうしてぼくはあのときあなた方を引き寄せたのか引き寄せたときのそのときのぼくはなんだったんだろう忘れちまったほうがいいのかでも忘れられないんだあなた方がここにこうしてぼくをじっと見つめているからぼくは忘れ去ることができない計算して計算して計算しつくしてそうして答えを出す結局あのときのぼくを忘れてしまったんだとね答えを出すんだぼくは計算高い計算高いんでぼくの出す答えに間違いはない間違うこともなくやってきたぼくの計算高い人生間違いはないんだぼくはだからねいつもの手なんだぼくはあなた方を貶めようなんて思ってなんかいないけれどうまみはないんだと言い切ってしまうんだぼくは計算高いんだ計算して計算してそうして答えを出すんだぼくは間違ってなんかいないんだと答えを出すんだあなた方を引き寄せたほんとうのぼくを忘れて答えを出すんだ計算高いんだぼくはぼくの答えに間違いはないんだ間違いはないんだぼくに

  2005/01/14

• きょうはあなたの決断の日

  きょうはあなたの決断の日だぼくはもう手伝わないよだからほんとうにしっかりしてねきょうはあなたの決断の日なんだあなたが決断するんだだれも答えを言ってくれないいつまで待っても答えはあなたが持っているのだからだれも答えられないんだもしあなたがだれかの答えを待っていると言うならば教えて欲しいそのだれかはあなたの人生に最期までちゃんと付き合ってくれるのかどうか教えて欲しいほんとうにどうか教えて欲しいぼくだってそうしたいさぼくとだれか最期まで付き合ってくれよねえ最期の最期までさあ付き合ってくれよだあれも見向きもしなかったんだそれはね父も母も実際無理なんだひとりでなんとかしなきゃいけないんだこればっかりはねぼくはこう考えたんだひとりでなんとかしなきゃいけないんだったら何のためなのかとね何のためかわからないんだったら意味ねーんだよぼくの生きる意味がねそう気づいたんだぼくは何のために生まれてきたんだそれを考える真剣にそして切実に考える答えは与えられないぼく自身が考えなければ決して与えられないんだこればっかしはねだから考える何のために生きているの？さて生きることをやめることも出来る意味がなくなればやめればいいんだそうじゃないかい意味のない人生やめちまえよでもなんでやめられないのそれってまだなんか期待していない？だれかから答えを待っていない？それってきょうはあなたの決断の日だぼくはもう手伝わないよだからほんとうにしっかりしてねあなたの意味生きる意味そのヒントを言おうかそれはねあなたが一番避けたいあなた自身の嫌な性格それだよその嫌な性格を直すことじゃないんだそうじゃないんだよそのあなたが嫌だと感じるその感じ方を変えればいいんだ嫌なんじゃなくてそれこそあなたの意味あなたの生きる意味なんじゃないかいだから卑下するな自分を卑下するなあなたの意味に気づけよ避けたい性格見たくない性格ダメな自分それがあなたの意味生きる意味なんだよ気づけよお願いだから気づけよそうすればきっと人生変わるよきっときっと大きく変わるよあなたが嫌かどうかなんて他人には関係ないんだよだからあなたの嫌だと思っている性格きっと役に立つんだよきっとねだから勇気をもってほんとうに勇気をもってあなた自身の嫌な性格をさあ思い切って認めちまいなよさあ思い切ってね

  2005/01/13

• 飛び散る花を咲かせたんだ

  冷たい顔して他人事のようにあなたは言った植物人間になるぞそのままにしておくと血管が破裂して意識が途絶えそのまま植物になってなっちまって周りの人に迷惑かけることになるぞあなたはそう言って脅しをかけたぼくを意のままにあやつろうとしたあなたの目はぼくを見ていなかったあなたの顔面に目の周囲に殴られたような青痣があったぼくをあやつろうとしたあなたの目はぼくを見ていなかったぼくは反抗した周りの人に迷惑をかけるってだから何なのさそう思ったぼくは意識が無くなっちまっているんだよだから何なのさ植物なら植物なりに毎日のお水とそして日の光り愛でる人がいればいい迷惑？それが迷惑なんだろうか？はたしてそれが迷惑ならばいま人間として生きてあることそのことももしかして迷惑かもしれない周囲の人にとってぼくの生きてあることそのことも迷惑かもしれないじゃないか誰のお陰で食って来れたんだろうかそう考えるとぼくはいろいろな人々にお世話になっていまここまで食って来れたんだそう思うそれがすべて迷惑だったんだそういうことになるよあなたが冷たい顔してぼくに言った言葉はぼくを反抗させさらに血圧を高め高め高めてぼくの蜘蛛膜下は深夜突然破裂によって血液が脳内充満しぼくは目の前にキラキラと輝く花火を最期に見たんだ見たんだああ目くるめくこの花火ぼくはなんの迷いもなくその花火と一緒に華やかにそして煌めく星星のように暗黒宇宙に向けて一点の飛び散る花を咲かせたんだ咲かせたんだ

  2005/01/12

• 巨大なあなたは誰

  クジラのように巨大なあなたは海中からザッパーンと飛び出してきて魚のように跳ねた大波が押し寄せて来てぼくはあなたに圧倒されそうになったあなたはぼくのようでもあるがぼくは陸地の港町のバーでJAZZを聴いているあなたの顔はのっぺりとしていてただあなたの全体はぼくのようでもあるんだからだは柔軟にしなり身のこなし軽やかに魚のように海上で飛び跳ねているんだそのたびにぼくのいるこの陸地では戦戦恐恐としているんだからだが跳ねたりしなったりそのたびにぼくはそのぼくのようなからだをもてあまし気味なんだ顔はのっぺりとしていて誰なのかわからないあなたは誰なんだろうあっまた海中に潜った！ぼくはJAZZを聴きながら先ほどから仲間と戦略を練っている時々海上にぼくのようなからだがザッパーンと飛び出るんだどうしたらいいんだろうこのもてあまし気味のこのからだあなたはほんとうに誰？誰なの

  2005/01/11

• 爪が伸びる

  朝に爪が伸びるニョッキリと爪が伸びる伸びる伸びる爪が伸びその爪がぼくを駆り立てるはやくそうはやくと駆り立てるぼくの指先の爪がぼくを駆り立てるぼくはこの伸びた爪で猫のように木の枝を捕まえ木に登る伸びる爪がぼくを木の天辺へ誘うからはやくはやくと誘うからぼくの全体重がぼくの指先のぼくの伸びる爪に支えられニョッキリと爪が伸びその爪がぼくを誘う上へ登れ木の上へ登れと伸びる爪がぼくを誘う

  2005/01/10

• ぼくはいまだに

  あなたがぼくに残してくれたんだどうだやってみないかあなたはそうおっしゃってぼくに声をかけぼくを大切にしてくれたあなたはいろいろなところでぼくを褒めぼくを称えぼくはいろいろなひとから注目を浴びるようになっていったんだだからぼくはあなたがもうすでにこの世にいなくなってもなにも悲しくはないんだひさしぶりにあなたは姿を現し現れたあなたは横顔を見せて通り過ぎるところだったその横顔はあなたらしくとてもあなたらしくふてぶてしく親分のようにどっしりとしていたぼくはすぐには声をかけられなかったいつもあなたは声をかけさせない雰囲気でいたからすぐには声をかけられなかったしかしぼくは思い切って声をかけたんだお久しぶりですお葬式には行かなかったけれどぼくはあなたに期待されあなたに大切にされたことその動機付けてくれたことそのことによっていまだにぼくは成長を願い続けているんですよそういまだにあなたの期待はぼくを動かし続けているんですよたぶんあなたは気づいていらっしゃるのかもしれないけれどいまだにぼくはあなたを近寄りがたいとも思っているしいまだにあなたを尊敬しているんですたとえひとがなんと言おうがぼくはいまだにあなたの期待に応えようとしているんですぼくはいまだに

  2005/01/09

• なーんにも

  なーんにも手をつけられないんだぼくはあなたと対等になるためにその第一歩の口火を切った先日あなたはぼくの前からいなくなりぼくは自分を見失いそうなんだぼくがあなたと肩を並べられるまで十倍の差があるんだその差を埋めようと一歩踏み出した先日神様が試練を下さったんだあなたがいないあなたは突然意識を失いぼくの視界から消えたんだぼくにとってあなたは偉大すぎたのかもしれないあなたと対等になんてとても口を利けなかったあなたは偉大すぎたんだでもそうやってあなたの所為にすることももうできないんだあなたはいないもう話しかけても答えてはくれないんだだからあなたの所為にできないもうぼくはあなたの所為にできないできないできないぼくはなにもできないなにもなにもなーんにもぼくは手をつけられないんだあなたが偉大すぎたんだということすらぼくには言えないんだぼくは自分というこの真実なにもできないこの自分に向き合わざるを得なくなってしまったんだこの自分にできないできないと言っているこの自分にぼくはもう逃げられないんだこのできない自分を受け取るしかもう逃げられないんだもうあなたの意識が戻って来ようともきっともうぼくはこの自分のできないと言っているこの自分の真実からぼくはもう逃げられないんだぼくは背中からあなたに抱いて欲しかった最期にほんとうに最期にあなたにそうしてあなたは言うもうこれが最期あなたはゆっくりとぼくの背中を離れくるりと背を見せて去っていくんだぼくはなーんにも手をつけられないんだ

  2005/01/07

• 母の声

  換気扇の呼吸する向こう側から母の声がする明るい日光に照らされた店先で艶のある張りのある母の声がしてくるんだお客様と話しているのかそれともご近所の誰かと話しているのかぼくの耳に聞こえる母の声たぶんいまのぼくの年齢よりも若かった頃のずっと若かった頃の母の声なんだ換気扇の呼吸する向こう側にいまも居るのかもしれないんだ乾いた町の人通り少ない商店連なるその店先で日光を浴びながら母は母の声で堂々とそしていつもと変わらぬそのリズムで話しているんだああぼくはその声をずっと持ち続けて今朝まで来たんだきょうはきっといいお天気になるだろうきっとカラッと晴れた晴天になって母が話し続けるんだいつまでもいつまでもぼくの耳は聞いているそうぼくの耳は聞いているんだ母のいなくなったいまでも乾燥した晴れた日にはきっと聞こえてくるんだ

  2005/01/06

• 小さく蹲って

  母が小さく蹲っていた深夜のできごと裏切られたんだ何回も何回も電話をかけた今夜しかないからと何回も何回も電話をかけた一方的に鳴るばかりまた騙されたんだぼくに母が小さく蹲っていた期待させてしまったぼくの所為で母は小さくなって軽くなって待っていてくれたんだぼくを深夜ぼくは咆哮し野獣のように彷徨って母を裏切ったそれでも母は小さく蹲って待っていたんだこんなぼくを小さく蹲ってずーっとじっと待っていてくれたんだ

  2005/01/05

• 初荷が来るんだ

  初荷が来るんだ仕事始めの初荷が来るんだ早朝から洗濯機のスイッチが入りガタゴトガタゴト揺らすんだ父と母が同時に起きて階段を足早に下りる音階下の引き戸が何回も引かれる音また階段を駆け上がる音父と母が同時に起きて初荷が来るんだ仕事始めの初荷が来るんだ昨日までとは打って変わって飛び起きて掃除をしたり洗濯をしたり仏壇拝んで神棚に拍手を打ち父は外に出て頑丈な背中を見せて家の周囲を掃き掃除母は洗濯物を両手に下げてベランダの差し込む日の光りの中へ短距離走者のように飛び出していく胎動していたものが現れたんだ初荷が来るんだ仕事始めの初荷が来るんだ

  2005/01/04

• ぼくなりに

  高層マンション最上階登りつめた雲に近いその部屋で大型冷蔵庫に保管しようと詰めたビールの数が合わないぼく以外にもかかわった人々は数人いるぼくが知っている人々でみんな地上から来たんだ冷蔵庫の構造上の問題かそれとも保管の仕方が悪かったのか計算が間違っていたのかいずれにしても正確にはよくわからないしかし部屋のご主人にはすべてお見通しなんだふたりが先に帰るというぼくは夢中になってふたりを追った地上に降りてふたりを捉まえ近くの公園で問い詰めたふたりは笑ってぼくの問いかけに答えないぼくは途方にくれ自分を見つめた焦りすぎたのかもしれない早まったのかもしれない雲に近いその部屋で求むべき答えをぼくは地上に降りてきてしまったもう取り返しがつかない高層マンションのあの部屋では今頃ぼくはすでに答えを得た人間として数に入れられカウントされてでもほんとうはぼくは何にも知らないんだただふたりの薄笑いの表情の中に捜すしかないんだぼくなりにそうぼくなりに

  2005/01/03

• 空中住宅展示場

  母と一緒に車に乗っていったんだどんどんいけばどうやら道は悪くなり周囲は雑草生い茂り線路の向こうに抜けたいなと思うまもなくフェンスを車が身体が抜けてその場所は空中住宅展示場張り出したテラス円筒形のその部屋は踏み入ればその足元に無限の空間その上に立つ円筒形のレンガ造りの部屋がなければぼくは恐怖で腰を抜かしそうだ遠い空中にも同じような家があるどれも2階建ての洋館で前面にサイロのような円筒形のレンガ造りのテラスがあるんだどれがいい？ぼくは母に聞いたテラスの円筒形の確かさについてもぼくは聞いたその他もろもろ母に聞いた返答がない母は黙々とただ歩くだけでなにも喋らないんだぼくは母に近づきもう一度ゆっくりとしっかりと母をよく見て聞いたんだおかあさんあの家のなかでどれがいいと思う？母は無反応だったぼくはあわてて紙に書きつけ母に見せた母はそれを見て目がくしゃくしゃになり顔は崩れ背中はもっとまるく小さくなっていったんだああぼくは思わず母の背を抱き母の体温を感じたいままでなぜもっと母に伝えなかったんだろうなぜもっと母の話を聞いてあげられなかったんだろうもっともっと母と話をしたいんだこの無限の空間のただなかでもっともっと

  2005/01/02

• あと何回

  あと何回切りつければにんげんになれるんだろう切りつければ痛かったりするわけなんだが血を見るたびに安心するんだ安心するんだだからね止めようとしちゃダメ流れをね止めようとしちゃダメなんだ切りつけて切りつけて切りつけて切りつけてそうしてにんげんになるんだああ半人前なんだから許してなんていわない半人前なんだから皮下組織を切りつけて切りつけて切りつけたうえにまた切りつけて流れとめどなく流れ流されあと何回切りつければにんげんになれるんだろう

  2005/01/01

• 運命

  ぼくの彼女は産み続けるのが仕事なんだ毎日彼女は産み続けるぼくはその彼女の生産活動に付加価値をつけるため彼女とやる毎日やるぼくの日課になっているコケコッコーコケコケコケコッコーゴケゴケゴケケゲゲーゴゲゲゲゲーゴゲゴゴゲゲッゲーゴゲゴゲゲッゲー明日の有精卵が仕込まれるコケコケゴゲッゴゲッゲッーゴゲゴッゴーそうしてボコボコ産まれるんだぼくは精を出し続けるのが仕事で彼女は産み続けるのが仕事なんだどちらも続かなくなったら首を切られそうして鶏冠は血の気を失い生々しい肌色になって目は白濁し鶏肉解体業者に引き取られるんだ彼女の運命は彼女が握っているぼくの運命もぼくが握っているいずれは解体業者のトラックの荷台で血の気の失せた鶏冠の空ろな目をした肉になるんだ彼女はぼくに交尾を迫られ素っ頓狂な声を上げながらもぼくに身体を預け尾を立てるぼくは何回も何回もいくぼくの仕事なんだこれがあす夜が明けて彼女はまた産むんだボコボコとぼくと彼女のいのちの限りをボコボコと産み続けるんだ彼女はかつて一度も卵を抱いたことがないぼくにとってそれが唯一の気がかりなんだぼくと彼女その仕事が続く限り永遠に抱くことができないんだ永遠にあすもまた彼女は産み続けぼくはぼくで彼女とやり続けるんだあすもまた有精卵は身体にいいらしいと人間の声がする永遠に彼女は抱くことができないんだぼくの精液を受けた彼女の卵は抱かれることがないんだないんだ

  2004/12/31

• 突き放す

  ぼくが突き放すことによってあなたはひとりで歩こうとしたんだつまりはあなたは突き放されるためにぼくを必要としていたんだあなたはほんとうはひとりで歩きたいんだそれはよくわかるしかしどうしても依存する長い年月ずーっとあなたはあなたの父の後をついて歩いてきたんだいつかきっとひとりで歩きたいそう思いそう思いながらもずーっとあなたはあなたの父の後をついてきてしまったんだ父から突き放されることがなかったあなたの不幸どんなに愛があって溢れていてもいつか冷たく突き放されてあなたはひとりで歩けるんだあなたがひとりで歩けるようになるまではあなたの父の愛はほんとうには伝わらないんだあなたがひとりで死に対面しひとりで歩く姿をぼくは見たいんだぼくはあなたを突き放すあなたはいまだにひとりで歩けないんだだからぼくは突き放すあなたを突き放すんだあなたに愛は伝わったのかあなたはきっといつかぼくを必要としなくなるんだろうそのときまでぼくはあなたを突き放す

  2004/12/30

• 母がいきなり

  いきなり母が立ち上がってきたんだ背が高く大きな母があなたの足元から出現し立ち上がってきたんだあなたの母なんだろうかぼくには母だという直感は働くけれどあなたがそう感じているかどうかぼくにはわからないいずれにしろぼくにとっては立ち上がってきた母を迎えてはじめて安心してあなたと続きを話すことが出来るんだところでぼくの母はもう立ち上がっているのだろうかぼくからは見えないぼくの立ち上がった母はぼくからは見えないんだたぶん立ち上がっているのだろうぼくの母あなたにどのように見えているのか気にはなる背はどのくらい高いのかどのくらい大きいのか気にはなるんだ続きを話すときぼくはあなたの母を見たぼくの母も立ち上がっているのかもしれない母と母が続きを促してそうしてぼくはあなたを受け容れあなたはあなたでぼくを受け容れたりするのかもしれない母が立ち上がってぼくを安心させてくれるそのときがくればきっといつでもあなたの足元からいきなり立ち上がってきたりするんだ

  2004/12/29

• 動けないあなた

  映画を上映しようということになった教室の中で黒い学生服がぞろぞろいるその中で映画を上映しようということになった五編の短編があって実はプログラムは誰が作ったのかまだ未完成だった黒い学生服の一団がぞろぞろと教室に入り騒然となりつつあったその教室で必然的に誰かの手によって作品は選択され上映が始まったぼくは手を出すことならずそれをそのまま見守った上映の途中で入場してきたきみは気がつきぶちっと断ち切ったんだこんなのはダメだそういってきみは無謀にも断ち切ったんだぼくは恐ろしくなって教室の中のいままで見ていたはずの黒い一団を意識したきみは途中まで見ていたひとの気持ちを考えなかったぼくはきみの手を引ききみに諭すように一生懸命話をしたきみが映画を上映しようとしていたんだそうだよね一番目の映画はきみが決めたこの映画祭はきみがいなければ始まらなかったでも上映が始まる瞬間にきみはいなかったきみは肝心なときにいなかったんだそれでぼくは黒い一団に一切を預けたんだ一切をそうしてきみは途中から参入してきたんだ途中から参入してきてこんなんじゃダメだといってぶちっと断ち切ったんだ見ていた人はどう思うだろうかきみを連れてぼくは母に会いにいった木造の建物で白い壁ぶ厚いガラスが嵌められている窓カフェのようなその建物に母はいるはずだぼくはきみを連れて会いにいった母に相談しようと思ったんだおかあさんと声をかけたするとあらわたしはあなたのおかあさんではないわよと声がしたその声は建物の外から聞こえたんだ横に回ってみた愕然としたそのひとは母ではなかった昔愛した恋人でその下半身はコンクリートで埋められていたんだ愕然とした建物の外側で胸像のように上半身だけでにこやかに笑っているんだあなたは最愛のひと下半身が何者かによって埋められてしまっているけれどあなたは最愛のひとなんだぼくは気がついたきみの手を引きながらぼくは気がついた映画を上映しようとしたそのとききみもぼくもあなたに甘えていたんだ気がついたあなたがなにか指針をくれるそう思っていなかったかきみは最低のやつだがぼくもきみ以上に最低のやつなんだもっとちゃんとぼくはきみとそうして黒い一団のひとびとと打ち解けなければならなかったんだそうじゃないかい胸像になったあなたよあなたにお会いできてぼくは気がついたあなたは動けないんだそんなあなたをどうやって愛したらいいのだろう甘えを断ち切ってシンプルに愛するにはどうしたらいいのだろう動けないあなたを

  2004/12/28

• あなたを送り出してから

  ぼくは空港行きの電車にスーツケースを置き忘れてきたあああのなかにぼくの存在証明があったんだクレジットカードや暗証番号免許証やバンクカードノートや手帳そこにぼくのすべてがあったんだだから必死に捜したあのときあなたを空港に送り出すため電車のなかにスーツケースを置きっぱなしにしておいたのがまずかったんだ電車に戻って必死に捜したなくなっていたぼくのスーツケースあなたを送り出しそうしてぼくはスーツケースごとぼくを失ったあれから引越ししたんだ住宅街のあの住んでいた家の窓からカーテンが取り去られ真っ黒な窓ガラスが見えるそんな場所から離れ別の場所に引越ししたんだカラッポになったぼくはカラッポのまま別の場所に引越ししいつもあなたが居る家を記憶しつづけたしつづけたあなたを空港に送り出しそうしてぼくは電車に戻りスーツケースを見失いぼくを見失いそのぼくの存在証明を手に入れた人物をぼくは思った彼はぼくの名を騙り彼はぼくとして生活を始めるだろうたった今からぼくとしてそのぼくはいままでのぼくとは全然違う煙草を吸うのかもしれないパチンコをするのかもしれない人を騙すのかもしれない人を蔑むのかもしれない人を傷つけるのかもしれないそのぼくはぼくが思っているぼくじゃなくなりぼくはそれでは何を語り何をしてどんな名前で生きていきゃいんだろう失われちゃったぼくの存在証明一式それを手にしたもうひとりのぼくはぼくの思っているぼくじゃないんだぼくはぼくである証拠を失いぼくはゼロからぼくを創り出さなければならないんだぼくは何を語り何をしてどんな名前で生きていきゃいいんだろう

  2004/12/27

• さようならなんて

  ぼくは朦朧とした頭であなたとともにそこを出た朝までぼくたちは居たんだいっしょにね一晩中かかってぼくたちはお互いに誰なのか確認し続けたあなたは誰でぼくはあなたに何を要求していたんだろうあるいはぼくは誰でぼくはあなたに何を捧げようとしていたんだろう解けない謎一晩中かかってぼくたちはほんとうに仲良くなったなったんだけれど朝が強引にぼくたちを引き離すあなたはぼくよりも一歩遅れてついてくるあなたが呼んだタクシーに乗ってぼくは行ってしまうのだろうか愛されるはずのぼくと愛するはずのあなたがタクシーに乗ったその時点から永遠にお別れなんだぼくはあなたをファーストネームで呼んださようなら朝がやってきてぼくたちは別れそうしてたぶんもう二度とあなたとの出会いはないだろう昨夜のイブのような出会いはきっとないんだこの出会いのためにぼくたちは生まれてきたかもしれないのにぼくたちは回避してしまったんださようならぼくは勇気がなかったそういうあなたはぼくをもっと責めるべきだった愛を受け取る愛を捧げるなんて高い試練なんだろうぼくたちは簡単にさようならを言っていないかまた次に会えばいいやなんて気楽に考えていないかさようならなんて気楽に

  2004/12/26

• 不良少女

  あなたも不良少女なんだねあなたも勉強ができるとかできないとかじゃなくもともとあなたは生業に就くことを楽しみとすることができないんだ不良少女なんだそんなあなたの周囲にほんとうの理解者はいないんだしっかりものと言われているんだ悔しいだろうに寂しいだろうにあなたは不良少女なのにあなたは思いっきり叫びたいはずだやりたい事をやらせてくれよほんとうにやりたいことをやらせてくれよあなたは不良少女なんだから義務や責任なんか捨て去って破り捨てて遠い国へ旅立ちたいんだ旅立ちたいんだだからねわかってあげたいんだそんな不良少女の気持ちをねすくなくとも気持ちぐらいはね受け取ってあげたいんだだからねあなたも不良少女なんだからね

  2004/12/25

• 人という文字の

  あなたは人という文字のひとつの棒なんだ上に向かって思いっきり伸びようとしているんだあんまり伸びようとして胸を張って前のめりになりすぎて倒れそうなんだあなたはだから人という文字のもうひとつの棒がぼくなんだぼくはそんなあなたを見ていて支えたくなりそうして人という文字が完成するんだぼくは悔しくてならないあなたには折角いいところがあるのに他人にはないいいところがあるのにどうして否定しちゃうんだろうそれはあなたのいいところなんだあなたはそれを欠点だと思っているかもしれないけれどそれはあなたが磨く才能なんだ気づいて欲しいんだできるだけはやく気づいて欲しいんだ人という文字の成り立ちそこに現れているパワーは倒れるから頼りないから寄り添っているわけじゃないんだ甘えてもいい寄り添ってもいい依存しても全然だいじょうぶしかしぼくはあなたが180度方向転換してあなたがあなたの力を信じあなた自身で上に伸びようとするから支えたいと思ったんだ上に伸びようとする一生懸命なあなたを思わず支えたくなったんだぼくひとりではなにもできない同様にあなたひとりではなにもできないだからひとに頼るひとに甘えるでもぼくはどうしても納得できないんだぼくにもひとの役に立つことがあるはずなんだ同様にあなたにもひとの役に立つことがあるはずなんだ人という文字のひとつの棒なんだあなたもぼくも

  2004/12/24

• 新発見！

  ひとりでなんでもやりたいそれはそれで自然の姿なんだけれどやっぱりひとに励ましてもらったり好きですなんて言われたりしたら強くなれるんだそういう動物なんだ人間はだからぼくは思い切ってひとに関わるんだ思い切ってぼくがひとに関わりをもってそうしてひとを支えてひとのお役に立てるようぼくがひとに関わるんだだからこんなぼくでいいのか頼りないんじゃないかそう感じて日々勉学するしまた教えを乞うたりもするぼくはひとに支えてももらいたいんだ結局はそういうことなんだだからぼくは遠慮なくひとに支えてもらおうとするんだひとに支えてもらうということそれは依存心から来たものだとは思わないなぜなら支えてもらうことそのこと自体をぼくは選択し決断しているからなんだ決断の原動力は実はお互いさま精神なんだぼくがひとを支えたいからだからぼくはひとに支えてもらうんだ支え合うということの新発見！なんだ

  2004/12/23

• 返ってむしろ

  返ってむしろぼくは安心したんだあなたはいつもと変わらず讃岐の山々のように滑らかにそうしてどっしりとしていたんだだからぼくは返って安心したんだ子を育てるこれは何者にも邪魔されてはいけないんだ子を育てる母の愛情がもしかするとすべての原点かも知れず邪魔されてはいけないんだだから最終決断は母であるあなたの思いしだいだあらゆる都合を排除して母であるあなたの決断だ子を産むということのあなたの思いがどんなに人類に必要とされているのか母は子に愛情を充分に注げる環境にあるのか産まれる子が減少しているそれは母が少なくなっていくことの証だ子を産み子を育てるああこの神聖でしかも最大の負担よ子を産み子を育てるお仕事の原点といってもいいだろうああだから母よあなたよあなたの決断が人類の未来を指し示すだろうああだから母よあなたが人類の行く末を左右するんだ左右するんだだから返ってむしろぼくは安心したんだあなたはいつもと変わらず讃岐の山々のように滑らかにそうしてどっしりとしていたんだ

  2004/12/22

• おまえは

  おまえはイライラさせる問いかけてもおまえの観点から痛かった辛かったしんどかったただそれだけが訴えられるだけなんだおまえはどうしたいのかそこが見えないんだだからイライラするんだわかるよおまえがどうしてもおまえ自身から離れられないことわかるよおまえは生まれてから二十数年間もおまえ自身のことを考えて生きてきたんだものねわかるよおまえが孤独好きなのをわかるよおまえは自分のこととても大事にしてるんだその大事な自分を敢えておまえは投げ出そうとすることいつかきっとくるさ自然にそうなるのさだからいまは言わないおまえは嫌われても除け者にされてもおまえ自身の生き方を変えるなおまえはきっとわかるさきっとぼくみたいに何年かかるかわからないけれどいまおまえがわからないようにぼくも以前はわからなかったんだだからねおまえはきっとわかるはずなんだおまえはきっと

  2004/12/21

• なによ

  なによと彼女の声がした父母の居る隣室の部屋に誰も居ないはずのこの部屋に明かりをつけようとスイッチを押そうとしたその瞬間ぼくの耳の左側で聞こえたんだその声には非難やら恨みやらが籠められていてぼくのなかの迷いや不安をぐっさりと串刺しにするぼくはホテルでのパーティ会場で大きなテーブルに上から下まできっちりとクロスで覆われているそのなかにもぐってやろうと考えた燕尾服の端がクロスの外に少しはみ出してしまいクロスも引きずってずれてしまったその傍をホテルのスタッフが通りかかるこのなかは身動きとれずしかもとても狭い考えがあまりにも浅はかだったんだそうしてぼくはいつもの部屋に入ったんだ父母の居る隣室の部屋に間近に父母の寝息が聞こえるそんな部屋なんだ真っ暗だったのでぼくはスイッチを押そうとしたその瞬間のできごとだなによと彼女の声がしたどっきりしたぼくはすっかり彼女のことを忘れていたんだぼくが思い出そうとして彼女を意識し彼女の居る部屋のスイッチに手をかけそうになったらたぶん彼女はそんな声を出すだろうぼくは串刺しにされてもおかしくはないんだなによと彼女の声がした

  2004/12/20

• 下顎を引き出す

  あなたは下顎を引き出しのように大きく前方へ引き出してぼくに身をもって示してくれたもっとほらこんなにも引き出しの奥は深くなっているんだよあなたは岩のように横幅の広い顔をぼくの真正面に差し出して上の歯並びほとんどが剥き出しになって下の歯が顎ごと徐徐に前に出てそうとう奥深く引き出しはしまってあったんだぼくの欠点は人の話を聞かないことでそれでぼくは人の上に立つ人物じゃないあなたに指摘されぼくは避けたかったんだけれど身をもって見せつけられぼくは見てしまったぼくが欠点だと思っていたわけじゃないんだ人の話を聞かないのはむしろその代わりぼくがぼくの内面を探っているからなんだ探っていると人の話を聞けなくなるんだ人の立場がわからず人の上にも立とうとも思っていなければぼくがぼくの内面を探ることは結構必要なことなんだだから欠点ではないんだ欠点だというのは欠点になる立場の人から見ればその人として欠点に思えるということなんだそれにしても身をもって示してくれたあなたの顔面はぼくの脳裏に焼きついてかなりショックだったし欠点を意識させられたことには間違いはないそれでぼくは無性に下顎の奥が疼きだしてきているのかもしれないぼくは岩のような顔面で下顎を引き出してみたくなった奥のほうからグイって前方へね

  2004/12/19

• あなたがぼくを求めている

  ああこの内側からエネルギッシュに押し寿司のように積み重なってくる気持ちあなたがぼくを求めているそれをぼくは無意識に理解しているぼくはすぐにでも駆けつけるさすぐにでもあなたがぼくを求めているそれに応えたい駆けつけるさそうしてぼくはあなたのホッとした笑顔が見たいんだ見たいんだ

  2004/12/18

• 声がぼくを圧倒して

  声がぼくを圧倒してあなたは近づきがたいひとなんだ落ち着いて低音で常に安定していてよく響く声日常生活が想像できないその声あなたはそれがバリヤーになっていてぼくが間違いを訂正しようとしても受け容れてくれなかったあなたのよくできた質問はときどきぼくを困らせるそれはあなたがぼくになにを答えて欲しいのかぼくがよくわかるからなんだしかしぼくには答えがないあなたが想定している感動をぼくはしていないからなんだあなたはぼくがあなたの思っている姿に嵌っていることを願っているみたいなんだぼくがあなたのその想定をぶち壊すようなぼくのほんとうの姿を晒すととたんにあなたは無口になる無口になってぼくを無視しぼくとの関係が存在し得ないと思い込んでいるように感じるんだあなたはあなたの想定を完全否定できないでぼくを無理やり嵌めようとしているそうじゃないだろうかあなたは話がうまいと言われている話はうまいんだけれどあなたと酒を飲みたいとは思わないなぜなんだろうあなたはあなた自身のことを少しも現していないし質問されたこともないんじゃないだろうかあなたってどんなひと？声がぼくを圧倒してあなたは近づきがたいひとなんだ落ち着いて低音で常に安定していてよく響く声そう近づきがたいからあなたは誘われないあなたはほんとうはぼくや他人に近づいて欲しくないんだ欲しくないんだぼくはほんとうに興味が湧いてきたあなたの意識いったいいつもなにを思いなにを感じているんだろういったいいつもあなたは

  2004/12/17

• 有無を言わせず

  27年間もあなたは妻として夫の父の生業に駆りだされ手指を樹液に犯されながらも有無を言わせず生業が年に5回やってきた有無を言わせず幼少の頃から駆りだされてきた夫はあたりまえのように手指を樹液に犯されていたがいまはあなたに引き継がれそうして夫の妻として27年間も犯され続けてきたんだ父の生業それが父にとってどれほど大事なものかわからないけれど息子ですら生業の後を継ぐことはしなかったその生業がどれほど大事なものなのかそんなことはわからないけれどそれにしても妻であるあなたが27年間も駆りだされているそうして手指を樹液で犯され続けているんだあああなたとお会いしたことはないけれどあなたの夫はあたりまえのようにあなたの27年間を捉えているよなぜなんだなぜそこに感謝の気持ちが籠められていないんだそう感じたんだ残念なことにあなたは夫に愛されていない27年間も有無を言わせず手指を樹液に犯され続けてきたんだ

  2004/12/16

• あなたの一言

  あなたの一言でぼくはうれしくなりきょう一日が最高の日になったなんて単純なんだきのうまであなたを恐れていたはずなのになんて単純なんだつまりはあなたはわかっていた？あなたの一言はぼくに愛を気づかせて憎しみを打ち消す力となってぼくを怒涛に巻き込んだあなたの一言がその背景がぼくのあなたへの視角を180度変えたんだそうしてぼくはうれしくなって元気になって避けていたあなたを思いっきり受け容れることができたんだできたんだつまりは人間の関係の修復に瞬間瞬間がいのちなんだその瞬間をしっかりと捕らえる感受するその瞬間で数日のいや数ヶ月のいやいやもっと数年の関係が修復するかもしれないんだ視角が180度転換するんだあなたの一言いい仕事してくれるねその一言でぼくのすべてはあなたに通じた通じたんだとぼくは確信したんだあなたの一言で

  2004/12/15

• まっかなお猿

  叔母から教えられた28歳の母は生んだぼくを抱きかかえそうして防御してくれたんだ当時叔母は12歳事実を突きつけることが生きていくプロセスだったそうして好奇心旺盛な年頃父と母が結婚したのが昭和26年父30歳母25歳ぼくが生まれたのはそれから2年後父33歳母28歳のときだ母に抱きかかえられたぼくはまるで出来損ないの猿だった真っ赤に充血した出来損ないの猿だった「まっかなお猿だわ」12歳の叔母は真実を告げ母は身内に対して戦いの姿勢を貫いた「あなたは立ち去りなさい」そう言って当時純粋だった12歳の少女に刻み込んだ刻み込んだんだしっかりと母はぼくを守るそのことの近寄り難き姿勢はぼくや父や叔母に長い間メモリーとしていまだに影響を与えているどんなに取り繕ってもこのときの母は心底母だったそう感じる心底母だったああ母の愛とはこういうことなんだぼくは生まれたそのときから母の愛に守られたんだ12歳の少女を遠く追い返しても母はぼくを守ろうとしたんだ

  2004/12/14

• 雪道は眩しく光り

  雪道は眩しく光りこれからはじまる物語をもうすでに出版された物語に変えてしまう父はそのようにして雪道を辿るもうすでに物語は変更できないかのように峠にさしかかりそうして思い出の方向に家屋が建っておりその前の小道を木立の間を抜けていくんだ谷もあって遠くに集落を確認しいくつかの家屋を通り過ぎそうして最後はその道が居間に繋がっている家人に見つからないようにそうっと向こう側の庭先へ降りるすると家人が出てきてやっぱり見つかっちゃうんだしかし家人も毎度の事らしくまるで観光客をもてなすように庭先へ降りる手前にお茶を用意しているそれが家人の務めであるかのように父のうしろ姿が遠くに見えるやっぱりぼくと同じ道を歩いていたんだろうかでなければ家人はぼくを驚いて見つけきっと追い立てたに違いないんだだから父はきっとこの場所も通ったに違いない物語はもうすでに読まれそうようにして父は先を歩いている雪道が眩しく光りその眩しさによって記憶を失い新しく歩んでいるのだろうか雪道が眩しく光りそうして父はぼくの前を変更できない姿で歩いているようだぼくの前を雪道は眩しく光り変更できない物語を辿っている

  2004/12/13

• 2004年

  2004年は1月4日の年賀状リストに始まったということを12月12日に確認したんだ2004年は年賀状がいつもよりゆっくり届いたそうしてぼくはいつもよりなにか違っていたんだ2004年はぼくは四国松山で過ごしただから友達はみんな海の向こうに居た四国松山2004年はだから人を求め追い求め求め求め白装束の巡礼者になった2004年ぼくは区切りをつけるために行動したいや革命家なんかじゃないんだただ行動したんだそういう年だったいつもよりゆっくりと届いたみんなの年賀状そうして2004年は始まっていま終わりに近づいているんだ久しぶりの日曜日にぼくは年賀状をつくり始めた菊池寛の思いを実現できるか2005年に思いをはせて詩は生活の役に立たなければならないではぼくはどうすればいいのだろうか詩を書けないでその思いを実現することは不可能だという事実がぼくの創作を厳しくさせる負けるものかそう一方では思いもするがとにかく書くことだ書いて書いて書き続けることだ年賀状のように書き続けることだ毎年毎年宛先のリストは増加するぼくはその増加に追いつけなくなるそれでも毎年毎年書き続けるんだ2005年も12月までいまのリストがスタートでそうしてどう変化するのやら見失いそうなぼくのいまの気持ちをだれが受け止めてくれるというのだろう2004年は行動のサイクロンに巻き込まれいまのぼくの気持ちをだれが受け止めてくれるんだくれるんだくれるのかくれるじゃないんだそうじゃなくてぼくはいまぼくを見失いかけているだけだ2004年のリストを見ていた2004年はいつもよりゆっくりと年賀状が届いたんだそうしてぼくは海の向こうの四国で巡礼に出た2005年は陸に上がるぞと船頭は言った

  2004/12/12

• 蛹になって

  ぼくは蛹になって地殻変動の隙間にもぐりこむ変動に耐えるわけじゃないいやむしろ変動に合わせてぼくを変えたんだぼくは蛹だからよくわかっているそれはだから累々と折り重なる成虫の死体を掻き分け掻き分け地殻変動の隙間に収まっているぼくを発見しちゃうんだ蛹になって羽化を溜め込んでいるぼくを発見しちゃうんだぼくはあまりにも無防備で傷つきやすくそれでも蛹化しているので無意識のバリヤーが守ってくれているんだ無意識のバリヤーがね　ぼくはレスキュー隊の青年の腕に抱かれ救出されたぼくが元々知っていたぼくを彼は救出したぼくは眼を開け彼に感謝しお返しに彼を救おうと考えた蛹の記憶を取り戻せるようにぼくは彼のスイッチを押したまた地殻が変動し始めた西暦2004年は変動の年だあらゆる手段を講じてぼくはスイッチを押してきたんだ発見したぼくを腕の中で蘇らせろ蘇らせろぼくはスイッチを押しまくったんだスイッチを

  2004/12/11

• 出会ったそのとき

  あなたに出会った瞬間にもう二度と会えないって感じて声をかけたり言葉にしてみたり会話したり表情を読み取ったりあなたに出会ったこの時この場所なによりもあなたがいるあなたがぼくを意識してくれているその意識の行方それはもしかすると永遠に繰り返すことのない一場面かもしれずいやそれはほんとうだもう二度と繰り返すことのない一場面なんだあなたがぼくよりも先に出て行ってしまうその瞬間あなたが残していった思いそれはぼくになにを与えてくれたんだろういずれにしてもさようならは出会ったその瞬間から始まるさようならで出会ってこんにちはで呼び戻すその重ねていく思いがぼくとあなたのすべてなんださようならで出会ってこんにちはで呼び戻す

  2004/12/10

• ブリキ屋のおっさん

  無精ひげなんかじゃないんだこれは職人の看板なんだブリキ屋のおっさんと呼ばれているんだぼくはブリキ屋のおっさんでだから無精ひげとペンキ垂れた作業着着てる結婚式にもこの格好で出たりするブリキ屋のおっさんなんだからでもぼくは人前に出て詩を詠ったりもするんだ仕事中ふと閃いた言葉ブリキだったり釘だったりときにはあまいメルヘンだったりもするけれどぼくはメモに書き付けて残しておくんだそうしてぼくは詩をつくる仕事詩と云われる所以でもあるなぜそんなことをするのかですってブリキ屋のおっさんのすることじゃないですっていいじゃないのぼくはこんな格好してるけど気がつかなかったかいぼくに体臭がないっていうことにほんとにほんとに気がつかなかったのかい実はぼくには体臭がないそうして心臓や肺や腸や胃もないんだ臓物一切ぼくは持っていないんだ気がつかなかったのかいぼくはたぶん触れないやつだったんだぼくがそばに居るだけで誰だってきっと安心を手に入れられるんだぼくは呼吸するしかし吸い込むのは空気じゃないんだぼくは詠うそれは仕事するそのものとして詠うだけなんだぼくに企みや競争は縁遠いブリキ屋のおっさんなんだからそうだあなたはぼくの傍に座って話していたねああなんだか傍に居るだけでとっても穏やかな気分になるんだそのように話してくれていたねぼくはそのあなたを認め受け入れ最期の晴れ舞台の準備をしたんだ和やかに穏やかに準備をしたんだぼくのメルヘンはあまりにも眩しすぎてあなたにしか届かなかったけれどもぼくは昇華したんだあのときにね体臭を失ったぼくは詠うしかなかったんだぼくは内臓を持たないけれど鳥のように決して空っぽなんかじゃないんだ地に足をつけて人間をやってきたんだずっと最期までそうしてぼくは詠いきったんだあのイイノホールで嵐の中を詠いきったんだブリキ屋のおっさんなんだから

  2004/12/09

• おーい起きろよ

  なにをあきらめているのだろうこの寒空の下で歩道の隅で生ごみの脇で毛布もなく腰も露に酔いつぶれているなにをあきらめているのだろう少なくとも数十年前にこの世に誕生し母によって慈しまれてきたんじゃなかったかそうだろうあなたは慈しまれてここまできたんじゃなかったのかおーい起きろよそうしてこの町に馴染むのはやめろよあなたの馴染んだことがいま実現しちゃっているんじゃないかおーい起きろよ朝日が差して日が当たりあなたの一日に再び機会が訪れたとしてもその手にワンカップがある限りあなたは目覚めず馴染んだ顔を歩道に埋めているのだろうだから起きろよどんなに歩道に顔を埋めてみてもあなたがこの世に誕生した喜びはもう二度とありえないんだ母の記憶ずっと残照が残ってずっとずっとなにをあきらめているんだろうこの寒空の下歩道の隅で生ごみの脇に毛布もなく腰も露に酔いつぶれているおーい起きろよ

  2004/12/08

• 行く年くる年

  それぞれの西暦二千四年があっただろうそれぞれがそれぞれの西暦二千四年の暮れを迎えているそしてぼくはこの年に五十年目のいのちを繋ぎとめた繋ぎとめたんだ三百六十五日が五十回つまり三千六百五十日が五ラウンドも一日二十四時間秒数に換算すれば六十秒×六十分×二十四時間で一日八万六千四百秒一年がその三百六十五倍で三千百五十三万六千秒十年で三億一千五百三十六万秒五十年で十五億七千六百八十万秒そうしていまも秒数はカウントされ加算され西暦二千四年の最後の瞬間まで加算されぼくというエントロピーは増加していくんだどこかで破断することは可能なのだろうかどこかでこのエントロピーの増加を食い止めることは可能なんだろうかぼくは生に執着することをやめた西暦二千四年にぼくはやめたんだぼくは生のつなぎ目を十年後に設定し螺子を外すための工具を手に入れた西暦二千四年十一月十年間三億一千五百三十六万秒のカウントダウンがスタートした新年を迎え西暦二千五年がスタートする刻々と秒針は進み手に入れた三億一千五百三十六万秒は砂粒のように指と指の隙間から流れ落ち流れ落ちて不思議なことにぼくという意識は少しも歳をとらないんだとりわけてメモリーに執着しなければいつも新鮮なぼくでいられるんだということを発見しちゃった西暦二千四年が暮れる西暦二千五年がやってくるすべてはもうどうでもいいんだぼくにとっては残された秒数とエントロピーの増加の物理学でしかないんだ正確にはぼくは西暦二千三年六月に目覚めそして西暦二千四年五十年目にして起き上がったブラックジャック行く年になんの未練もないし来る年になにも期待はしないんだつまりはぼくがどうするのか意図があるだけだハッピーマイセルフハッピーマイバースディブラックジャックブラックジャック略してBJ眠くなるBJ眠くなるBJBJBJBJ

  2004/12/07

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