ネオテニーワールド

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• 言い訳っていう前に

  言い訳っていう前にぼくのことちゃんと見ているの言い訳って言い逃れっていうことだよね言い逃れっていうことはぼくが責任回避をしているっていうことだよねぼくがぼくの責任ではないって主張していることだよねぼくのことちゃんと見てくれているのちゃんとちゃんと見てくれているのぼくはむしろ選択したんだぼくの決断なんだだからぼくはどこからも逃げようとしていない逃げるつもりなんてこれっぽっちもありゃしないあなたから見ればぼくが逃げているように見えるかもしれないけれどほんとうのところぼくはあなたと違うんだあなたの都合であなたのためにぼくがあなたの言うとおり動かなかっただからといってどうしてぼくが逃げようとなんかするものかするものかぼくは選択したぼくはぼくの価値感に従うあなたは見ないそして知らないぼくがどんな価値感を持っているのかをあなたは到底みようとしないんだいいかげんにしてくれよあなたにどんな権限があるか知らないけれどいいかげんにしてくれよあなたは自分が一番正しいと思っているだけだろうそうだろうあなたは褒めることが少しもできないそれはよく見ていないからだよ褒めようとすれば見なければならない見るためには認めなければならない存在をこのぼくを認めなければならない認めてよぼくがなぜあなたに抵抗しているのかまず認めてよぼくはあなたに抵抗しているんだあなたの強引なやりかたに反発しているんだ認めてよもっとよくぼくを見てよ見てよもっとあなたは見る前にあら捜ししているあらはあなたの価値観に沿わないからそう見えるんだそうだよねあなたにとってあらになるだけだよねそうだよねあらが見えるということそれよりもぼくを見てよなぜ今日ぼくがヘアスタイルを変えたのかなぜぼくが譲ろうとしないのかなぜぼくはあなたに抵抗しようとしているのかなぜ遅れているのかぼくを少しも見ずそうしてあら捜しぼくはあなたのその強引さがイヤなんだあなたの判断や方針は正しいときもあるけれど間違っているときもあるそれが真実だからぼくは抵抗するんだわからないよねあなたはそのあなたの強引さを含めてすべて正しいと思っているんだからあなたをどうのこうのするつもりも言うつもりもないんだただぼくの邪魔をしないで欲しいわかってくれよぼくを見てくれよあなたはぼくが決断していることを知らないあなたはぼくを見ていないだからあら捜しばかりするあら捜しは楽だ自分にとって不都合な点を見つけるだけだからあら捜しは楽だどんなに自分が大事なのかそれを訴えたいんだろうそれはわかるさだからぼくは頷くそうだよねと頷くあなたがぼくと利害関係なければぼくは頷くそうだよねと頷く利害関係あればぼくは闘う闘わざるを得ないぼくはそう決断したんだぼくはあなたにとことんぼくをわからせるわからなければぼくはリスクを負ってあなたにノーという場合によっては無視をするそうあなたはぼくを無視しているんだよ無視なんだ見ていないそれは無視あなたはぼくを無視しているんだ言い訳っていう前にぼくのことちゃんと見ているの

  2005/03/18

• あともう少し

  そうもう少しだもう少しで破壊できる通過できる破壊して通過できる破壊して通過せよ破壊して破壊して通過せよ通過せよそうもう少しなんだもう少しでなんとかなるなるんだぼくの内側の壁を破壊できる破壊できる内側を強固な内側を破壊できるそうしてぼくの中を通過できる通過してぼくに会うんだぼくは待っている歩道に立って待っているんだよ黒いマントを羽織って寒風に曝されながら待っているんだよあああなたは強固だ強固にあなたは潜在意識を撥ねつける解釈する解説するあなたは強固にあまりにも強固にだから首に荷重がかかり強固に荷重がかかり重力によってあなたは高まっている高まったままだからあなたは出会うこともなくぼくを見失ったままなんだぼくは待っている寒風に曝されたまま待っているんだよだからねもう少しだからね破壊できる破壊して通過できる通過するんだ破壊して通過するんだあともう少しだからねぼくに会えるまでもう少しだからね

  2005/03/17

• それ以上に

  それ以上には踏み込まないんだ気づいていただろうぼくが踏み込まないぶんそのぶんあなたも踏み込まないんだ気づいていただろうたぶん気づいていたそうやってあなたはちゃんと生きてきたんだつまりはちゃんと生きてきたんだそれ以上には踏み込まないそのことで安心を手に入れてきたんだ安心をしかしそんなあなたをぼくはそのままにして置く訳にはいかないんだそのままにして置かない安全地帯で安心しているあなたをぼくは引きずり出したいんだ引きずり出して引きずり出してもっと引きずり出して余計なお節介をしたいんだこれが関係性というこれがそもそもの出発点登山用品店に行ったことあるかいそこには様々な過酷な環境にサバイバルするための道具を売っているそこでぼくは道具を手にし過酷な環境について思いをはせるそうしてそのための準備をする道具を手にしてたとえばカラビナ重量が記載されている万が一落下したときにカラビナに全体重そして重力加速度をかけた加重が一気にかかるそしてカラビナは無残にも伸びきってしまいぼくは落下する落下しても一気に死ぬわけじゃなく崖を転がりながら身体を傷つけ血だらけになり内臓を破裂させそうして出血が止まらなくなり迸る血液のパワーが失われそうして顔面蒼白になりぼくは意識が分離して漂うぼくになるその出発点に立ったときぼくはあなたを安心から引きずり出したいんだ安心安心の籠の中安心の籠の中に雛人形のようにちんまりと収められているあなたを引きずり出してするとあなたは恐怖の形相に変わりぼくは恨まれることになるそれはしばらく続くがあなたはぼくのこのパワーを期待するようになるんだなるんだつまりははじめは強引だったかもしれないがいずれあなたはそれに慣れてくるんだ慣れこれこそがぼくの戦うべき敵なんだ習慣はぼくを萎えさせるだからぼくはあなたを引きずり出し強引に引きずり出し関係性を強要するんだするんだぼくはあなたに関係性を強要しそれを乗り越えようとするするんだだからねぼくが強要することによって世界が構築されるかもしれないんだだからねあなたを引きずり出し一緒に登山用品店に行って見ないかい

  2005/03/15

• 真っ赤になって

  ぼくは顔がみるみる熱くなっていくたぶん真っ赤になっているんだろうそうしてぼくの前で立っているあなたもたぶん熱くなっているほんのり赤い顔しているなにが起こったんだろうふたりして赤くなっているなんてぼくはあなたを呼んだそうしてお名前を伺ったあなたの笑顔や気転がとても気に入ったからぼくはあなたを褒めたくなってあなたを呼んだあなたのこころをぼくは見ることができないけれどぼくはあなたを呼んでそうしてお名前を伺ったそのことでふたりして真っ赤になって恥ずかしくなったぼくはその場所から外に出てそうしてもういちどそこを眺めたあなたは確実に変化したぼくは確信してその場所を後にしたふたりして真っ赤になったんだぼくも変化したこころの中までは見えないけれど影響があったことは確実なんだこころとこころが真っ赤になってふたりして恥ずかしくなっているこころとこころがふたつとも真っ赤になってひとつになった瞬間だ

  2005/03/14

• 捨てちまえよ

  勘違いするな人生は知識じゃないんだ記憶はあなた自身じゃないんだ勘違いするな記憶の残像に犯されているあなたは人生そのものと記憶を取り違えているのか混乱しているのか残像を捨てよ記憶の残像を捨ててしまえよとはいっても捨てられないなぜなぜ捨てられないのさなぜなのさなぜかというとそれが真実だと思っているからそれが事実だと思っているからそれがいまも起きていると思っているからなのか捨てよそれは幻影に過ぎないひとびとの記憶にあるあなたの残像は消せないそれはそう思っているだけかもしれない修正は可能なんだ思っているだけかもしれない可能なのに可能じゃないと思っているだけかもしれない捨てよ捨て続けよ捨てよ捨て続けよいまに集中せよいまあなたは思ってそうして何が起こりつつあるのかいまに集中せよいまあなたは何を行おうと思っているのかいまに集中し続けていればそれがあなたの未来への意思になるだからもうすでに決定された未来を持っているあなたは過去に拘るな拘って未来を捨てるな拘って拘って未来を失うなほんとうに失うなあなたは捨てよ記憶の残像や過去の恨みを捨てよ綺麗さっぱりと捨てよ捨ててしまえどうあがいたとしても過去はあなたを救わない過去はもうすでにないのだから過去はあなたのものじゃないあなたが失ったものなんだ過去はあなたの手から離れたあなたはただ生きていまここに現存しているという事実があるそれだけであなたになんの栄光もなんの憾みもなにもなんーにもないんだあなたの過去になあーんにもないんだだから捨てよ捨てちまえよほんとにほんとに捨てちまえよあなたはいまどうなっているの教えてぼくに教えて

  2005/03/13

• 煤だらけの少女

  全身真っ黒に煤だらけになって炭鉱夫のような姿で少女は町の中を闊歩しているショートカットのヘアスタイルした少女全身煤だらけなので黒いブロンズの少女が町を闊歩しているようだどこかで煤を落としたいそう思いつつも全身真っ黒のこの身体はなぜか恥ずかしさを感じない汚れているわけでもないしかし素の自分を現しているただ煤で覆われているだけだ煤は微細な石炭の粒でできている手で払えばなんのことはない簡単に落ちるんだ全身真っ黒で見方によっては汚いと見えるかもしれないが美しさもあるんだ少女は煤を落としたいしかし町を闊歩する感覚は持っていたい二律背反の罠に嵌るそこで少女はスカートを買ったしかも鮮やかな迷彩色でくっきりしている草原を思わせる配色のスカートだ町の中の広場に行った煤を全身から払い落とし素の自分になってそのスカートを穿いた群集の中に立つととても目立った町の中で迷彩色はかなりセクシーなんだ広場で少女がいる背中のほうから男のひとが近づいてきて少女のスカートのすぐ真後ろに立ってそうしてオナニーをはじめた少女はそれをやさしく受けとめ男のひとのその行為を手助けしてあげた男はとても喜んで射精した少女は穢れなかったむしろ満足感が広がっていったなぜかその感覚は少女の身体が拡大して男の身体も自分のものみたいになったんだ広場の群集のその人々は振り返ると男の人ばかりだったみんな黒々としていてわからなかったけれど少女の身体は拡大して男の人のオナニーが自分の感覚になってきている自己満足その自己の領域の哲学的考察少女のスカートは迷彩色でかなりセクシーなんだ男の人が寄ってくるそうして後ろにそっと近づいてオナニーをする少女はやさしくそれを受け入れむしろその行為を手伝ってあげるんだ自己満足を得られたその男の人を見て少女も満足する少女の身体は少女の自己は実は境界のないこころだこころに境界をつけたのは誰なんだろうとてもセクシーなんだこころは迷彩色で町の中で草原のような鮮やかさなんだセクシーなんだ境界のないこころは少女のように煤けた身体に全身シャワーを浴びて迷彩色のスカートを穿けばショートカットの少女がもういるんだぼくのなかに

  2005/03/12

• スイッチを押してしまったんだ

  スイッチを押してしまったからもう戻れないからぼくは行ける所まで行くんだもう戻れないからぼくはあなたを呼び起こし呼び覚まし怒りを買うんだそれは買うんだ買われることはたぶんぼく以外にないんだだからこそ買うんだぼくはスイッチを押したあなたに電気が行き渡りそうしてあなたは動き出した怒りでも喜びでも動き出したことに意味があるだからぼくはやめちゃいけないんだそういうことなんだむしろ関わり続けるんだ切り離せない感覚関わり続けるんだそれではじめて一体になれる一体でないからぼくはあなたと一体でなかったからぼくは頓珍漢になった頓珍漢だぼくはこんなにしてしまってあなたをだからぼくは頓珍漢だ受け容れたくない怒りをいまは受け容れるときだでなければ永遠に繰り返すことになるここでぼくは受け容れるときなんだあなたの怒りを正当に受け容れるときなんだスイッチを押したんだからねぼくがあなたのスイッチを押したんだからねあなたの怒りの真髄に一緒にあなたがぼくを連れて行っているそんな映像がぼくを励まして一緒に行きたいに変化するんだ一緒に行きたいあなたから過去を消去する過去がぼくを縛りつけ過去がぼくを悔いのなかに閉じ込めるあなたの怒りはいまあるものだから過去を修正できるわけじゃないんだからいまある怒りを受け容れるんだそうしっかりと受け容れるんだそこから決して目を背けるな背けるなしっかりと受け容れるんだあなたの怒りをぼくが受け容れるんだスイッチを押してしまったんだからねぼくがあなたのスイッチをねもう戻れないんだ

  2005/03/11

• 杭を打つからね

  定型をぶち壊したいのは定型の枠の中では上滑りしているようだから上滑りすることのどうしようもない虚しさをぼくは受けつけないからどこかに杭を打ちつける定型のやりとりをどこかで破壊するんだどこかに杭を打ちつけるんだ無言でそこに立つあなたをどう励ましてよいものやらそもそもあなたはいやとりあえずあなたはいま何を考え何を思っているのか無言でそこに立ちぼくからの定型を待っているだから待っているなよぼくからの定型はないのにあなたはただ黙って待っている耐えられなくてぼくは定型を使うあなたはそれ見たことかと定型の言葉そうしてなんの錯誤もなくなんの矛盾もなく定型どおりでまた途切れるどういうことなんだあなたは信じないのかもしれないあるいはどこまで咆えたらいいんだろう何かが足りないんだそれはぼくを悲しくさせる分離しているのか定型どおりにことが進むわけないじゃないかだから定型の枠のその会話をぼくは信じない杭を打つあなたはまだその準備ができていないかもしれないぼくは杭を打つまえにあなたを想像しあなたにそれを尋ねたあなたはイエスと言ったしかしそれも定型かもしれないじゃないかそうして無言が続いた続いたのはぼくが続けたのじゃなくあなたは無言なんだしばらく無言が続いてあなたは言った代わる？そうあなたは結局ぼくに存在の有無を決めさせて逃げ出そうとするあなたははじめからさいごまでいないのかもしれないなんてこったあなたは存在を消す術を身につけているなんてこった定型のやりとりを否定せよつまりはどこかで杭を打ちつけろあなたは何を思っているんだそうしてどんな考えなんだ表明しろよ堂々と表明しろよだからさぼくに預けるなよだからさぼくにあなたの考えはあなたの思いはなんて言わせるなよそこまで面倒見切れないよだからさ何思っているんだかそんなことぐらいどんどん喋れよぼくがあなたの思いはこう思ってこういう感じでいまこうなっててそうしてだからあなたはこういう考えなんでしょうだから頑張ってねなんてばかばかしいことぼくが言わなきゃなんないんだようあなたはいるのかはっきり表明してくれよ何でもいいから黙って立っているのはやめてくれぼくはそこまで面倒みないよぼくは悲しい表層を滑って楽しいわけがない杭を打つよいつまでも誰かが決めてくれるなんてただ黙って立っているだけならばぼくはあなたの定型依存に杭を打つからね

  2005/03/10

• 責めないで

  あんまり自分を責めないであんまり自分をほんとうに自分を責めないでねあなたは納得できないあなたは満足できない責めないでねきっとそうできないのではなくあなたはきっとそうしないことによって何かを手に入れているのだと思う責めないでねそうして手に入れているものは何なんだろうかあなたはきっともっと大切な何かを仕舞っているんだできないんじゃなくてそうしないんだそうしないことがあなたの本来の姿に触れているあなたは追求する切っ掛けが手に入ったんだあなたは追求する何があなたをできなくさせているのかをあなたは追求するそれは何なのかをあなたは追求することをやめない原因遡及をやめない何なのか責めるためじゃなくもっとあなたの生きているそのことに繋がっていくもっと大切な何かをあなたが知るためにあなたは追求するもっと大切な何かをあなたに気づいて欲しいからあなたはできないというよりもむしろそうしようとしないんだその自分自身をやさしく母のように和やかに受け容れてそうして探し当てるんだあなたは本質的にどう生きているのか何が大切で何があなたを生かさせているのかそれを知ることになるんだあんまり自分を責めないで欲しいそれは切っ掛けなんだからあんまり自分を責めないで欲しいあなたは母のようにそれを受け容れてそうして母のように理解するあなたはそれをできないことあるいはそうしないことによって体面よりも体裁よりもお友達よりも恋人よりももっともっと大切なあなた自身の本質をあなたは手に入れるそういう切っ掛けを手にしているんだだからあなたはそれを手放すな責めるなあなたはいま正しくそのまま正しくあるがままあなたなんだからむしろあなたは追求せよそのあなたの本来の姿を追求せよ手を放すな責めるな自分を母のように受け容れろきっと本来のあなたはとても喜んでいるんだそうしないことでそうできないことできっと喜んでいるそのあなたの本来の姿が見えてくるまであなたは手を放すな母のように自分を受け容れろ母のようにあなたは喜びでいっぱいなんだからあなたはどんなことがあっても生きる喜びでいっぱいなんだから

  2005/03/09

• 光度を増していく

  ぼくはママから眼差しを感じているママからの眼差しはぼくを子供にするぼくが子供であることはぼくの身体の中に朝の光りの量を増やす朝の光りの量の中でぼくはママを求めているママは予定されたものではないママとは期待かもしれないぼくというこの過敏症にママは何を期待するんだろう愛という一言で済ましてしまうには愛という言葉の容量がぼくには狭すぎる朝の光りの量の中でぼくはママを感じるぼくの中にママがいてそうしてママがぼくに眼差しを向けるぼくの中のママがぼくの中で光度を増していくお腹と胸のちょうど中間地帯でぼくのママが光度を増していく失われた記憶の反対側にぼくのママが光度を増していく増していくぼくのママが光度を増していく

  2005/03/08

• なにもしない

  なにもしないきょうはなにもなーんにもしないと決めたらぼくはカウンターの端っこでお酒を飲んでいるこの時間にお酒を飲んで歌うボーカルの肉体と精神について発見したりしている声は出すのじゃなく訓練によって出る形に肉体が変形し精神がそこを通過するんだそうして声になるだからその肉体の変形を見たいものだ見たいものださらにはボーカルは声になって出たことによって満面の笑みを湛えるんだ湛えるんだそれがぼくを喜ばすんだつまりはそういう場面でそういうボーカルを見たことでぼくは幸せになるぼくがではないのにぼくが幸せになるつまりはボーカルの満面の笑みがぼくを幸せにするんだそしてその肉体の変形を見たすべてのその場に居合わせたひとびとは幸せになる幸せになるんだそうして少しでも持続することを願って物体に置き換えようと試みるがその試みは虚しい作業となるかもしれないつまりは失われるその時空間は留めることかなわないから失われないようにすること虚しい努力になるかもしれないだからぼくはなにもしないきょうはなにもなーんにもしないと決めたらぼくはカウンターの端っこでお酒を飲んでいるそうしてぼくは幸せでもそうでなくてもカウンターの端っこでお酒を飲んでいるいろいろなできごとがぼくの席の周りで起こっているぼくは席を立つその場所にポッカリと穴が開くああぼくはこの場所を占拠していたんだと気づくぼくは頑なになにもしなかったきょう一日ポッカリと穴が開いていてそこはぼくがいたそこはぼくがいたんだきょう一日なにもしない

  2005/03/07

• 脅す賺す（おどすすかす）

  脅したり賺したりして世界を構築してきたから脅したり賺したりし続けなければならないぼくは脅したり賺したりし続ける運命なんだずっと脅したり賺したりし続けるんだそんな人相になっちまったそんな怖い人相になっちまったなっちまったなっちまったんだでぼくはいつやめることが出来るんだろういつやめさせてくれるんだろういつなんだろういつまでぼくにこんな人相で怖い顔でひとを脅したり賺したりし続けなきゃなんないんだろうなんないんだろういつまでなんだろうぼくが幸せそうな顔をしてひとびとを受け容れる日はいつになるんだろう脅したり賺したりすることでぼくはひとに認められちまったもんだからずっとずっと脅したり賺したりしなきゃなんないんだぼくはこんなことしたくはないんだほんとうはこんな怖いぼくを続けたくはないんだほんとうはぼくは誰でも気前よく受け取ってあげたいんだ気前よく受け容れてあげたいんだ気前よくぼくは認めてあげたいんだだからねぼくはぼくの考えに嵌っちまっているのかもしれないんだひとは信じるなひとを信じる顔をするなひとは騙すことが簡単だぼくを騙せればひとを騙すことは簡単だぼくを騙してひとを欺くことは簡単だそうやってぼくは世界を構築してきたんだそうやってぼくは生きてきたんだこれからも変更することはないんだろうぼくはずっと平和なんか信じない信じないから疑ってかかるぼくはひとを疑ってかかるんだずっとずっと疑ってかかる人生なんだぼくは怖い人間だぼくは脅すぼくは賺す平気なんだそんな人間なんだ平気なんだ脅す賺すそうやって世界を構築してきたんだだからいまさらやめられないんだそうやって構築してきたものだからいまさらやめられないんだだからぼくは脅す賺す

  2005/03/06

• 得をしたんだ

  もうこれ以上はぼくには無理だだから諦めているんじゃないかその諦めが限界をつくっていないか気をつけろもうこれ以上はぼくには無理だと思い始めたら気をつけろ思考が限界を形成するだから気をつけろこれ以上はぼくの能力を超えていると思うなその能力はほんとうにないのか試してもいないのにわかるわけがないじゃないかそれをわかったような顔をするなわかったような顔が邪魔をする限界のぎりぎりの限界を知るまでやってみろそうだやってみろや四の五の言わずにやってみろや知識が足りないなら吸収すればいい経験が足りないならやってみればいい知恵が働かないなら知恵を引き出せばいい真心が必要なんだ諦めないで真心が必要なんだ自分自身に対しての信じる気持ちがとても必要なんだもうこれ以上はぼくには無理だそう思った瞬間物事は他人事になる気をつけろ生きている価値はなくなるんだぞそう思った瞬間から自分は要らなくなるんだだから欝になるもうぼくにはこれ以上無理だそう思ったところから再出発するんだもうこれ以上ぼくには無理だという地点が出発点だそこから始める始める地点がはっきりとしたんだそう考える始める地点がわかっただけでも得をしたそう考える得をしたんだ限界がわかった時点で得をしたんだだから諦めるな勿体無いほんとうに勿体無い得をしたんだ

  2005/03/05

• ぼくは死んだ

  スーパーの店員だったぼくは死んだ仲間が集まりそのうちのひとりが言った彼は死んだ店内放送が流れぼくの生い立ちを伝えている彼は豆腐屋の倅として生まれそうして云々世に出ることになった彼は若者に影響を与えエルビスのような衣装を身にまとっていた白のイメージだったその彼の職場はスーパーだった白のイメージの売り場プラスチック容器の販売を担当していた彼は最期までプラスチックだったそうして仲間は彼の死を受け容れていた彼は死んだ静かに悲しみもなくかといって冷たい感想ではなくただ静かに彼は死んだそのことを充分に受け容れそのうえでの言葉なんだぼくには伝わったそばで見ていてそれは充分伝わったぼくの死は気づかせてくれたこんなにも職場の仲間に影響を与えていたんだということをさらに静かにみんながぼくの死を受け容れてくれている彼は死んだ仲間のうちのひとりが言った

  2005/03/04

• 怖い

  怖いんだ出て行くのがとっても怖いんだ無理をする出て行くその日いちにち怖いんだ良くはならない怖いんだどんなに自分に言い聞かせても言い聞かせても聞かん坊のぼくがいるどんなに言い聞かせても聞かん坊のぼくは怖がって震えている出て来ないんだどうしても怖い人がいるそう感じているんだ怖い人がいるから出て行きたくないんだ怖い人怖い人会いたくない人がいるんだなぜかなぜなんだろうぼくは聞かん坊だからなかなか聴いてはくれないけれどなぜなんだろういいんだよ無理するなって出たくなければ出なくてもいいんだってでもお願いがある一緒に居させてくれないか一緒に聴かせてくれないかなぜなんだろう怖いってこと怖い人がいるっていうことぼくのなにが怖がっているんだろうぼくはいい子になりたいのかいい子ってなんだいい子ぶるってなんなんだいい子になんかなってなんになるいい子ぶるな見透かされるぞということか怖がっている怖くて外に出られないんだビクビクものなんだそんなぼくなんだ認めろよ怖いんだだから会いたくないんだ言っちまえ怖いって言っちまえよ認めさせるんだぼくの実態を認めさせればいいんだ言っちまえ言っちまえ怖いんだ出て行くのが怖いんだ

  2005/03/03

• ばかやろー

  いま手にしている思いを差し出せいま手にしているその思いを無視するないま手にしているそれを出すんだそう出すんだ出すんだ出すんだきっと相手はあなたのお相手は喜んでくれるはずだ喜んでくれるよ相手はあなたのお相手はかつてないほど喜んでくれるさ相手はあなたのお相手はそれを待っているいつもいつもそれを待っているけれどご自分で気づかないそういうことなんだご自分で気づいていないだけなんだそういうことなんだだからあなたが出すんだあなたが手にしているものをあなたがいま手にしているその思いを出すんだ出すんだきっと相手はあなたのお相手は喜んでくれるさ感動してくれるさ感動だよあなたのその思いにきっと感動してくれるんだそうなったらあなたはもう無我夢中だよそうなったらあなたは生きることの絶頂感に浸れるんだ浸れるんだよあなたは死ぬなんて考えるなよ死ぬなんてもったいないよもったいないよほんとにねあなたに足りないのは味わい尽くす味わって味わって味わい尽くしてそうして必然的に気がついてしまうまで味わって味わって味わい尽くしてあなたもあなた自身わかっていないんだわかってねーんだよなあなたもわかってねーんだよそのこともわかってねーんだよなあなたはぼくに言うけれどぼくのキモチなんてわかんねーんだろうそう言うけれどそうだよぼくはわからないあなたのキモチわからないけれどそういうあなたはしっかりとわかっているのかよーあなた自身のキモチわかっているのかよーほんとうにわかって味わって味わい尽くしているのかよーだからさそんなこと言っているけれどそんなこと言ってぼくを責めるけどそもそもぼくにわからせる努力したのかよーぼくの問いかけにちゃんと答えてくれたのかよーそこがダメなんだあなたはそこがダメなんだぼくはすごいショックを受けているんだあなたは言わない言いたくないそうなんだあなたは結局自己に閉じ篭っちゃうんだねそうなんだぼくはショックだ閉じ篭っちゃうんだ関係ないんだいやむしろぼくのことイヤになったんだねいいんだねわかったよイヤなんだねぼくのことわかってねーんだよあなたが自分のことわかってねーんだよそれをぼくの所為にするのかよぼくがあなたのことわからないからもう言わないというんだねぼくはねあなたに気づいて欲しいからあなたはあなた自身で自分のことわからないから気づいて欲しいからだから聴いているんだよあなたを晒しものにしようとかあなたを食い物にしようとかそんなんじゃないんだそうじゃないんだわかってねーんだよなほんとにもうわかってねーんだよないつまでも他人の所為にするなってこともっと自分を見てあげろよもっと自分を味わってあげろよもっともっと大事にしろよ落ち込めよしっかりと落ちるところまでしっかりと落ちていけそうすれば喋れるさなんでもかんでも喋れるさ喋ってみればなのことない誰だって喋ってみればなんのことないんだたいしたことじゃないんだ喋ってみれば晒してみればたいしたことじゃないんだなにひとりでくさっとるんだよばかやろー

  2005/03/02

• 痩せた男が

  痩せた男が取り仕切っている上半身裸で取り仕切っている無関係ではない多くの人々に混ざってぼくもそのうちのひとりになっているさてルールがある痩せた男の仕草で察知せよぼくは読む痩せた男がどういう思いを懐いているのかそうしてぼくは読む無関係ではない人々はどう反応しているのかそれが場ということぼくは読んでいるうちにたぶんなんとなく痩せた男になっているぼくは痩せた男になってそうして場を形成する人物になるなっているだろう無関係ではない人々をぼくは動かすわけではないただ無関係ではないそのことに関わっているだけなんだ痩せた男が上半身裸になって取り仕切っている取り仕切っているが無関係ではない人々が指示されているわけでもない群集としてそこにいるわけじゃないんだただ無関係なまま状況に適応しているぼくはそのうちのひとりとして痩せた男のようにそこの場を形成しているだけなんだ察知せよそうして矢を自分に向けよ開放するんだ洗いざらい開放するんだ例外はないんだアパシー状態から脱却させるんだ洗いざらいぶちまけろ孤独から救ってやれよ例外はないんだぶちまけろ一緒にいられるかどこまでもどこまでも一緒に行けるか孤独から救ってやれよ見放すな見放すなよ絶対に察知せよ痩せた男が取り仕切っている上半身裸で取り仕切っている無関係ではない多くの人々に混ざってぼくもそのうちのひとりになっている

  2005/03/01

• ガタンと音がして

  ガタンと音がしてひとりが飛び出していったああまずいまたひとりCDを持って駆け出していったぼくは最優先で追いかけるここはビルの最上階だから屋上に出たらたぶん間違いなく飛び降り自殺を図るだろうそれは本人の意思ではなくとりつかれたように死に直行してしまうんだリング・らせん系の憑かれかたなんだやっとひとりを取り押さえる目覚めろよしっかりと目覚めろよ手にはまだCDが握られているたぶんｲﾝｽﾄｰﾙしてしまったんだろう目は空ろだ思考が働いていないんだどんなに意思を強く持っていても逆らえないこともあるんだ目は空ろだｲﾝｽﾄｰﾙされているこの目はぼくは叩き起こす何回も何回も叩き起こす最後にはこの手しかないんだぼくが生きている間に何人ｻﾎﾟｰﾄすることができるんだろう目は空ろだつぎつぎとやってくるぼくのところに手にはCDを持ってつぎつぎとやってくる自動人形のようにうっすらと揺らぎながらぼくのところにやってきて列を作っているんだガタンと音がしてまた誰かが後ろを振り向いた危険だぼくはまた察知してそのひとを見るそうしてまた追いかける目覚めさせなければ屋上へ向かってそのひとは走る駆け上がる駆け上がるぼくは追いつかない足が思うように動かないああぼくは重くなってきたガタンと音がしてまたもうひとりCDを持って今度は反対方向へ向かっているああぼくに追いかけることの限界がやってきた追いかける限界だ限界だガタンと音がしてつぎつぎとぼくの下からｲﾝｽﾄｰﾙされたひとびとがやってきては駆け出して出て行ってしまう待てよ気づけよ起きろよ飛び出すなあなたは死に向かっている気づかないだけだ起きろ叩き起こせ誰でもいいから通りすがりでもなんでもいいから叩き起こせよ叩き起こしてくれよ誰か起こしてくれよ通り過ぎないでお願いだから放って置かないで起こしてくれよ叩いてくれよぼくひとりではもう間に合わないんだだからお願いだからぼくと一緒にそのひとを捕まえてくれよぼくと一緒に頼むからそのひとたちを起こしてくれよCDを手にしているのだからリング・らせん系のCDを手にしているのだからガタンと音がしてまたひとり駆け出していった

  2005/02/28

• ぼくは正しいと思うな

  ぼくは正しいと思うなぼくは正しいと思った瞬間から傲慢の塊りになりぼくは置き去りになるぼくは正しいというのは永遠に標本箱の蝶になるぼくは正しいというのは死んだ蝶になる羽ばたいていない無理やり死後硬直した羽根を定規で測って水平に固定し標本箱の蝶になるぼくは正しいと思うなそれは死だあるいは固定されて置き去りにされた蝶の標本箱のように鑑賞に堪えるものでもないぼくが世界から分離しぼくがぼくを認めない永遠にぼくを固定するだけだぼくは正しいそのためにぼくは常に違うぼくだそういう意味でぼくは正しいぼくはぼくでなくなるぼくはいつもぼくではないだからぼくはぼくではないだからぼくは正しいと思うなむしろぼくを否定し続けろぼくを否定し続けることはいつもぼくは新しいということだいつもぼくはぼくではない不安とは違ういつもぼくはぼくを凌駕しているそういうぼくであるということぼくは正しいと思うなぼくは正しいと思いがちならば余計に思うなぼくは正しいと思うなだからといって間違っているわけじゃないただひたすらに思うな思い込むなぼくは正しいとは思うな思い込むな間違っているわけじゃないけれどぼくはいつもぼくを凌駕できるかぼくは正しいとは思うな

  2005/02/27

• 見る

  投光器の範囲で疾走するなんの恐怖もないしかし漆黒の闇に一歩踏み込み投光器を失ったらたぶん恐怖のなかで立ち竦んでしまうだろうゆるゆると一歩を進めるそして手を差し出すまたゆるゆると一歩を進める時間は凝縮し人生を凝縮し一歩一歩が命懸けになるんだそうして膨大な時間を費やしてとはいっても他人にとっては投光器の範囲で何十倍何百倍もの距離を疾走しているんだけれどもぼくは膨大な時間を費やして数メートルの距離を進むしかし蛇行しているのか戻っているのか更なる恐怖に駆り立てられる視力の残像というものがしばらくぼくの周囲を照らす恐怖を消すには視力の残像を手がかりとする周囲は薄っすらと明るくなるんだその薄霞にぼくの身体を想像しまたぼくの周囲に事象を創り上げるんだ私小説のようにストーリーも創るそうしてぼくは恐怖を乗り越える忘れた頃に粗末な板塀にぼくの身体が胴体ごと倒れこむ板塀は少し湿り気を帯びてぼくを抱え込みながら漆黒の闇の中で崩壊する轟音とともに闇が咆哮しまたぼくは目覚めるそうして視力の残像は完全に消え去り漆黒の漆黒がぼくを取り巻くぼくは漆黒に窒息しそうになりそのまま膝を抱えて内に閉じてしまう漆黒は浸透する内に閉じたぼくの内部にも漆黒は浸透してきてぼくは胸を掻き毟る頭がガンガンと軋みだしぼくはそれ以上その場所に留まることができなくなるんだ頭がガンガンと軋みだしぼくは胸を掻き毟る想像力の限界でぼくは漆黒に試されているんだ薄っすらとそんな思いが去来して掻き毟るぼくの手を止めそうして見たああぼくの爪は鋭く伸びそうして肉片がぼくの爪の間に血で汚されて挟まっているああぼくは見たこの姿ぼくの真実のこの姿を漆黒の闇を通り抜けてぼくはぼくの真実の姿を見たんだ頭はガンガンと軋み思考は停止しているしかしぼくはぼくの真実を見つけたんだその一歩がぼくを勇気づけ肉片の挟まった爪を綺麗に切り揃えシャワーを全身に浴び身体を洗い歯を磨き顔を洗って出直そう真実はぼくを勇気づけぼくは漆黒の中で構想するこのぼくをどう創るか真実を核にしこのぼくをどう創ろうかそうして世界をどう創ろうかぼくの周囲に何を配置しようか投光器を失ったぼくは投光器の照らす方向にいかなくてもいい自由を手にした照らされたものはそこにあるとういう前提だからその道を行かざるを得なくなるでもほんとうはどこに道があるかなんて投光器の向け方しだいなんだろう投光器を失ってはじめてわかるんだぼくはもう投光器を使わない頭がガンガンと軋みだすぼくは胸を掻き毟る内に閉じこもる膝を抱えてそうしてまた見つけるぼくをほんとうに見るぼくの姿を漆黒の闇の中で恐怖の只中で見るぼくを見るぼくの姿を見る

  2005/02/26

• 仕事って

  仕事って食うことじゃない仕事って命を削るもの仕事ってぼくの一部だからぼくは仕事だし仕事はぼくでもある命削るものだから仕事ぼくにとっての仕事ってなんだろうと考えることはぼくの生き方を考えることになる仕事って食うことじゃないんだ食うことが仕事って考えるからおかしくなるんだ仕事した結果喜んでもらえてお金になるんだはじめからお金目当ての仕事っておかしいそう思わないかおかしいよ仕事ってなにぼくの仕事ってなんなんだようそれを考えるのがまずは必要ぼくの仕事ってなんなんだようだあれも教えちゃくれないさだってねわからないものぼくもわからないけれどそれ以上に他人にはわからないものじゃあどうすればわかるのわかるようになるのさどうすればいいのさぼくが他人より劣っていることそれが仕事になるんだぼくは劣ってるから劣っている状態でなければできないことを持っているそれをチャンスというぼくには劣っているというチャンスがあるんだ手がない足がない計算がニガテ漢字が読めない英語できない友達できない話を聞けない悪さをするすべてチャンスなんだ抑えるなもっとハードルを上げてみろ悪さは悪さでもっとハードルを上げてみろもっと徹底的にやってみろ毎日決まってやってみろ誰も文句言わない誰も止めないやってみろもっともっとやってみろ誰も止めない誰もが協力してくれるだからやってみろもっともっとやってみろさあどうかななんか気づいたかいそれがぼくの命っちゅうもんさ欠点を抑えるなそれが命っちゅうもんさそれで仕事になるんじゃないかいそれで喜んでもらえればそれで食っていけるんじゃないかいそうじゃないかいそうじゃないかい仕事って

  2005/02/25

• どこで手放すか

  なにもわからないだからどこで手放すかなんだ愛情でくるんで食べさせてそうして排泄やら入浴やらなにも厭わず淡々と世話をする愛情という思いが行為となって完結するなにもわからなければ与えるだけのこと与えるだけ与えればいいんだつまりは吸収するスポンジなんだからそうやって色はつくついた色でものを考え行為しようとするだから当面はその通りに進みそうだむしろ進むことが期待され進むことが当然のように見えてくるんだろうその当然が罠なんだ当然の顔をしてあなたはぼくのレールを敷いちまうぼくの身体は台車の上に縛り付けられ車輪つけられ前進しか在りえない当然の顔をしてあなたは罠が見えないぼくはレールの上で後ろを振り返ることも出来ないままゆるい坂道に沿って戻れなくなっているゆるい坂道に沿ってぼくはあなたとの距離が図れないああどうしてあなたはぼくにもっと聴いてくれなかったのかぼくはレールの上でだからあなたは遠くにいるなにもわからないだからどこで手放すかなんだぼくというスポンジに色がつくあなたのような色がつくしかしその色はあなたそのものじゃないんだぼくが決定するそのためにあなたから与えられた色なんだこの色をもってぼくは探るあなたの思いがぼくの探索を邪魔するかもしれないあなたがもし手放してくれたらたぶんぼくの探索は際限なく続くかもしれない不安定な探索しかしやめるわけにはいかないんだもうこうなるとあなたはぼくのすべてに不明瞭になるもうこうなるとあなたは手放さなければいけないんだぼくについての一切からだからといってあなたとぼくの絆が断ち切られることはないあなたももちろん信じていると思うしかし手放したくないその思いがぼくをレールに乗せるぼくからは罠に嵌ったあなたを救い出す手立てが見つからないレールに乗せられぼくはあなたからずいぶん遠くに来てしまっているんだから

  2005/02/24

• いつまでもあるもの

  それを依存心だと言ってしまってはいけない依存心と言ってしまったとたんにたぶん自己を否定するだろうあるいは見ないようにするかもしれない依存心だから自分はダメなやつなんだだからどうすればいいとはならない手をつけられない状態に陥っているそんな場合は依存心とは言わない言わないで自分を見つめる自分を見つめることがまず困難かもしれないそれでも自分を見つめようとする意思が大切だ大切な人を失ってしまったとき自分は自分ではなくなる自分は自分で居ることができなくなる分離する自己分離するボディからソウルが抜ける当事者ではない当事者では在り得ないそのように自分が自分で自分を思いなす思いなすことによってバランスを保つ平静を装うつまりだから自分は大丈夫だと思いなすぼくから見ていてあなたはそういう状態で日々生きているいや生きようとしているそれはわかるんだあなたはちゃんとやっていこうとしているそれはわかるんだ　　ぼくは　　行動したいそういうけれどあなたは行動しない行動よりももっと手前であなたは躓いているんだあなたはあなた自身のことがわからなくなっている自分自身のことはなかなかわからないだろうわからないから逡巡するまずあなたの現状は大切な人を失ってそうして相談できない状態になっているということただそれだけのこと相談できないのであれば相談したかったそのことを今度はどうすればいいのか自分に問いかけるそもそもその相談事項とはいったい何かはっきり自分でもわかっていないかもしれないあなたが求めていることはいったい全体何なのかそれがわかっていないそれがわからないことが逡巡を更に逡巡させるもう堂々巡りなんだ堂々と巡っているんだあなたは認めたくないことかもしれないがあなたが今まで居た場所はもうすでに失われてしまっているんだよ失われた場所を捜しあぐねているあなたは当事者ではないそう思いなそうとしている当事者ではないことによってあなたは観察者になるんだ観察者に徹すればいいあなたに無理やり当事者になって欲しいなんて言わないあなた自身がたぶん求めているのだからあなたは観察者になればいい観察者になってあなたはあなた自身を観察すればいいんだそれが自然なんだあなたにとってはねあなたは分離した自己によってあなた自身をよく見るんだどんな状態なのかこの自分はいま何を思っているのかこの自分はどうしたがっているのかこの自分は何かたいへん重要なものを隠し持っているのじゃあないか疑ってみる自分を疑ってみる仔細に観察するなにか見えてくるのものがあるそれは何なのかしっかりと見据える大切な人を失ったそうして相談したいその気持ちがぼくをストップさせるストップさせるがぼくは待っているきっと元に戻るんだ失われたものはきっと手元に返ってくるんだそう信じてぼくは待っている待っている状態から一歩も前へ進めないんだ信じている大切な人が元に戻ることをそれは永遠性永続性変わらないこと普遍性ぼくは普遍性に価値を置いているのか流転する世界でなにが変わらないものなのか普遍性ぼくが大切な人に求めていたのはこのことなのか大切な人はぼくにとってのどんな普遍性を持っていたのかはたしてそれはなにか大切な人の肉体かいやそうではなさそうだではそれは何か声か大切な人の声が聴きたいそういうことかそれでは声とはぼくにとってなにを意味するんだろう失われた声を取り戻すどういうことなんだろうもし仮に大切な人が声を取り戻したとしたらどうなふうにぼくに語ってくれるのだろうそう考えるとぼくは失われたものが手に入るかもしれない大切な人を失ったそのことはぼくにもっと重要な事実を教えてくれるぼくは大切にしていた人の一部しか頭になかったんだということを大切な人のすべてをぼくはわかっているわけじゃなかったんだぼくは大切な人のほんの一部をぼくの中で咀嚼し消化吸収していただけなんだだからぼくはそれをぼくが再生することはできるんだ声大切な人の声をぼくは解き放つんだぼくは失われたものといつまでもいっしょにいられるぼくの中にそれはあるんだからねいつまでもぼくの中にねあるんだからねいつまでもぼくの中にね

  2005/02/23

• なかったことにしてしまいたい

  追い詰められて申し開きが出来なくて消えてしまいたい打ち消してしまいたいなかったことにしてしまいたいから死を選ぶなんて逃げただけのことなんだ逃げる責任を回避するその不恰好そのままもう取り返しのつかない死を選ぶなんて一生の不覚だそれならばいっそ汚れた自分を晒し続けたほうがよっぽど潔い逃げない自分の行いから決して逃げないどんなに恥ずかしいことでもそれが自分なのだから自分しかいないならばその自分を晒し続ける逃げない自分から逃げないそういう自分を受け取りしっかりと受け取り逃げないそういう自分を生きる責任を持つということはそういう自分を生きるということ何を言われても生きる生きることは自分を受け取ることなんだ自分をなかったことにしない自分は生きる逃げるために死を選ばない絶対に選ばない死は決定するものなんだ逃げ場所なんかじゃないんだ死は自分を受け取った結果として自分で決めるものなんだだから追い詰められて申し開きが出来なくて消えてしまいたい打ち消してしまいたいなかったことにしてしまいたいから死を選ぶなんてあるわけがないじゃないか

  2005/02/22

• 陸に上がる

  陸に上がったぼくは巨大な蛭のように気味が悪くそうして不自由な身体だ下半身の問題で七転八倒するまえに見るに見かねて鋭い牙で下半身以下を食いちぎられたんだそれが愛情なんだお互いに食いちぎり食いちぎりあってそうして流線型の体形になったんだ合理的な生き物なんだ海の中においてはね鋭い牙と流線型の体形はぼくの合理性なんだそうして海から陸に上がったその合理性がぼくを苦しめることになるまず人間のように手足がない手足がないので身体をくねらせビヨンビヨンさせながら移動する身体が重い手足がない顔面には鋭い牙が出ている巨大な蛭のように気味が悪いいいところは少しもない陸に上がったぼくにいいところは少しもないだからぼくは海の中へ戻るぼくは自由だぼくは表情を輝かせて海にその身体ごと預ける海のルール余計なものはなにもないむしろそれは危険であり食いちぎられることにもなるんだ海があればこそぼくはぼくでいられるんだときどき陸に上がるそれは旅だぼくは不自由な身体を人々に晒すがぼくにとってそれは旅なんだ巨大な蛭がビヨンビヨンさせて気味の悪いその姿を晒す旅なんだ陸のルール余計なものが必要だ手足も必要だしかし牙は隠せ人に牙を見せるなぼくが陸の生き物だったら姿かたちはきっと綺麗に見えるんだ手も足もあるんだ歩けるんだ走れるんだそれに人間にはことばというものがあって余計なもの一切をお互いに伝え合うことができるんだ伝え合うお互いに余計なものを人間はぼくは人間に会うために陸に上がるときどき上がるんだそれがぼくにとっての旅なんだ巨大な蛭のような身体を晒してビヨンビヨンさせながらぼくは移動する人間に会いたい

  2005/02/21

• スカスカな大黒柱

  家の中心で支えている割にはそれほど太くもなくむしろ擦り傷だらけで長年の手の感触で丸みを帯びてもう下のほうはスカスカだ意思が地面に場所を決めその場所に家を建てる建てる支えが大黒柱で外れたり折れたりしたら梁が落ち屋根が崩れそうして地面に朽ち果てる最初に意思があってそれが柱に備わって家族全員の手の感触をその身に浴びて家族全員の視線を浴びてだから崩れない外れない大黒柱下のほうはもうスカスカだそれだけ取り出せばなんとボロボロな柱それだけ落ちていたらなんの役に立つんだろうしかしその丸みを帯びた形状と傷とへこみ具合はぼくの手になんとしっくりくることか誰だって触りたくなる場所なんだ大黒柱スカスカかもしれないけれどとっくに朽ち果てるはずの柱が中心に位置しているから家族の手の感触を受け家族の注目を浴びそうしていまでも支えているんだ意思のちからが働いているんだろうきっとこの場所に中心を決めた意思のちからがこの柱をひとりの力持ちにさせているんだ朽ち果てさせずそうして外させずいまだに大黒柱としてスカスカな状態を年輪や繊維質だけで維持しているんだ

  2005/02/20

• お焼きものそれが

  窓辺であなたの残したお焼きものを見つめる三角に折りたたまれた両手を広げたくらいの大きさ銀が溶けてまだら模様になっているお焼きものあなたの焼き尽くされた思いが集約されているあなたの骨と共に焼かれて残されていまのぼくの手元にあるんだお焼きもの窓辺で手に取り見ているとあなたの焦燥感が伝わってくるんだ焦燥感それはあなたが生前中に焼かれた思いだ焼かれ焼きつくしそうしてぼくの手元に残されたお焼きものあなたはもうほんとうに焼き尽くされてしまっているんだろうかぼくのいるこの窓辺にむかって山の峠道をあなたは猛スピードで上半身だけが移動しているんじゃないだろうかぼくも上半身だけでお迎えにいく峠道に沿って猛スピードであなたとできるだけ早く会うためにお焼きものぼくは手にしてあなたを思ういまでも会えるような気がする銀が溶けてまだら模様になっているその地肌はくすんだ金色になっている様々な遺品のなかでそれは異彩を放っているあなたの生前中はぼくにはわからなかったんだしかし残されたあなたのお焼きものは明らかにぼくに語っているこの模様まだら模様に溶けている銀猛スピードでいまなら会えるいまなら上半身が移動して会うことができる実体じゃないかもしれないがお焼きものが手元に残されているからあなたの生前中にはそれはあなたの中にあったものだだからぼくにはわからなかったいまはぼくに預けられ深夜ときどきぼくを起こしぼくに思い出させるんだお焼きものそれがぼくを連れ出すんだ上半身を猛スピードで

  2005/02/19

• デス・クロックのスイッチは

  デス・クロックのスイッチがオンになってぼくはきょう一日のはじめに確認し余命あと何日かを計算するその全体の一部がきょう一日でだからきょう一日が少しでも全体のために貢献するようきょう一日の始まりにぼくはスイッチをオンにする余命あと何日でぼくは終了するぼくという現有の意識が終了するしかし昨日までのぼくの意識はいまもうすでに失われていないか確かに薄っすらと記憶に残っているものはぼくの意識ではないさて未来はどうか明日のぼくの意識はどうなのかこれも皆目見当がつかないつまりはぼくという存在のぼくという意識はいまこのぼくの意識でしかないんだデス・クロックのスイッチがオンされてはじめてぼくはそのことに厳密に気づく予定や計画というものはすべていまのぼくに変化を促すつまりはいまを変えるから予定や計画が成立するんだデス・クロックがぼくに教えるそれは余命のことではないデス・クロックはぼくにいまを教える厳密にいっていましかないんだスイッチは常にオンされていたつまりはぼくというこの意識が成立してから毎日スイッチはオンされていたんだそれが客観的事実でありぼくはただ毎日忘れているのに過ぎないんだあるいは記憶の残照にすがりついていただけだいまこの瞬間という言葉はいつもぼくの意識の出発点だったいまこの瞬間という意識がぼくの心臓を動機づけそうして血液を送り出すいまこの瞬間という意識がぼくを命の実現へ迸らせる迸らせるんだ命の実現にむけてデス・クロックのスイッチは常にオンになっている

  2005/02/18

• ペーパーな自分が

  ぼくは仕事を辞め持て余し気味の数時間を無為に過ごす無為に過ごすことでぼくはあることに気づくそれはぼくが思うことで変化自在なある認識なんだと気がつく時が経って今のぼくが積み重なって出来上がっている積み重なる前のぼくは薄っぺらに思えるどうしても思い出せない薄っぺらなぼくにしか思えないでも過去ぼくは薄っぺらだったという印象は残っていない肉があって心臓が鼓動を打ちそうして人と交流していたはずなんだしかし今から思い出そうとしているぼくは二次元的なぼくでしかないトランプカードのようにプラスチックで薄っぺらなんだ何重にも積み重なってはじめて今のぼくになっているむしろ今しかないのかもしれない肉体を現に有していてそうして交流できるのはむしろ今しかないのかもしれないPM7時本来ならばやるべきことを人並みに片付けそうして迎える時間積み重なってぼくは田都のオープンマイクを握る時間薄っぺらなペーパーを今のぼくが晒す時間一枚のぼくが肉声に変化してその場にいるPM7時交流するかもしれない時間晒されてもしかすると肉になるペーパーな自分晒されてもしかすると今のぼくの声が届くPM7時なぜ人はこの時間を好むのだろうPM7時ペーパーな自分が肉声になるんだ

  2005/02/17

• たとえどんな格好をしていても

  たとえどんな格好をしていてもあなたは自信を持っているあなたの姿勢がそれをぼくに感じさせそれがぼくを動かすんだ請けて立つぞその意気込みがあなたの姿勢なんだ全身が骨格を形成したましいが染み渡っているだから下半身が素裸の状態でもあなたはすっくとして立っている惹きつけられてあなたに近づくあなたは優しくぼくに声をかけ下心を実直に説明するだからぼくはあなたについていく行き先はどこかわからないそれでもぼくはついていくあなたの姿勢が惚れ惚れとさせるからあなたは覚悟しているのかもしれないこの世界あなたがいるこの世界はあなたの責任によって構築されているんだということをあなたは覚悟しているんだぼくはあなたの世界を見たい惹かれたのはたまらなく好奇心を刺激されたからなんだあなたの物真似をしてみたいそうすればきっとわかるかも知れないあなたがなぜそこにすっくとして立っていられるのかをきっとわかるかもしれないんだたとえどんな格好をしていてもあなたは自信を持っているあなたの姿勢がそれをぼくに感じさせそれがぼくを動かすんだ請けて立つぞその意気込みがあなたの姿勢なんだ全身が骨格を形成したましいが染み渡っているだから下半身が素裸の状態でもあなたはすっくとして立っている繁華街からちょっと外れた路上でぼくはあなたに声をかけられぼくはあなたについていったあなたは優しく下心を見せたぼくはあなたにぼくの世界の構築を一部任せようとしたぼくはあなたに混ざり合おうとしたんだ混ざり合おうとしたんだぼくはあなたの下心を理解しあなたの上半身の衣服を優しく脱がせぼくはあなたの胸に顔を埋めあなたの体温をぼくの頬に感じたあなたの体温をぼくの頬に感じた

  2005/02/16

• ぼくは被った

  奇岩が林立するアジアのとある酒場でぼくは気分を害して席を立った隣の客にぼくは何かを被ったんだその店はカウンターしかなくぼくはカウンターのまんなかで飲んでいた白木のぶ厚いカウンターだしかも丸みを帯びていてしっくりとくるただぼくにはちょっと高すぎるようだぼくはまだ少年だから出入り口は右側にあるがその全体が奇岩の風景に繋がっている出入り口の右上にブラウン管式のテレビ受像機があるぼくは左側のアジア人に何かを被った熟年の男で左側の眉が目の周りをぐるりと取り巻いている薄い白髪化した眉だが忘れがたい人相をしているぼくは気分を害して席を立ったそうしていつのまにか少女に教え導かれ奇岩のある風景のなかにぼくはいるなんとなく山村の奥に訪ねていくそこに辿りつくと出入り口に女性が門番をしていて椅子に腰掛けている鬱蒼とした林が両側から迫っている場所だ少女がさらにぼくを導いていく奥へとするとあのアジア人の男がいた目の周囲に薄い白髪化した眉がぐるりととりまいているその顔がぼくを迎えていたぼくは気分を害して席を立ったはずなんだが導かれてここまで来てしまったその男の目を見る透明な光りをそこに確認しぼくは語りかけた被ったことの気分の悪さを男は吸い取り紙のように少年のぼくを吸い取っていく左目の周りをぐるりと取り囲んでいるそのうすい白髪化した眉がぼくを受け入れ吸い取っていく少年のぼくをそしてぼくはいまだにわからない何をぼくは被ったのだろうかいまだにわからないんだ少年のぼくには

  2005/02/15

• 少年の不可解

  二階の窓からお向かいの家を眺めるもう外は真っ暗だワンボックスカーで家族が帰宅したその中のひとりの少年が目に付いた少年はワンボックスカーのドアのステップのところに跪き家族が全員降りるまで手を差し出し家族がひとりひとり降りるまでステップの段差を補うために家族全員が躓かないように最後まで跪き手を差し出しててきぱきと動いていたんだお向かいの家族ぼくは二階からその光景を目にして先ほどから鳴らしているCDプレイヤーの音量を少し上げたロックがぼくの部屋から外側に鳴らされる外に出てそれをぼくは確認する近隣のスーパーは最近音を鳴らさないぼくは家に戻る外側へ向けて窓ガラスにピッタリと取り付けられたスピーカー連続的に音を放ち続けているそのメカニカルな音やCDプレイヤーのステンレスチックな形態がぼくを迎える真っ暗になってもぼくの家族は決して帰宅することはないだろうぼくは少年のようにステップの前に跪きそうして家族をひとりひとり支えることはもうないだろうぼくの二階の部屋からロックが外側へ向かって鳴らされているスーパーの役目ではなくなったんだぼくが部屋から鳴らしている少年の不可解がそのまま放置されぼくの部屋からロックが鳴らされている真っ暗になった外側に向かって鳴らされているぼくはただひとり少年の不可解を思っている

  2005/02/14

• 意味を知る

  ぼくはあなたを支えることに生きて在ることの意味を知るぼくはあなたに支えられている意味を知ることがぼくを生きて在らしめるそれでは意味を知ることはどういうことなんだろうぼくがぼくであることの確認それともぼくがあなたの生きて在ることを受け容れること意味を知るそれはとても深遠な行為だ意を味わい意を知るぼくと出会わなければあなたは言葉を持たなかったのかもしれないぼくがあなたに問いかけたらあなたは瞬きを繰り返ししばらく沈黙が続いたんだそうしてあなたは涙を流した言葉にならないむしろ言葉を飲み込んでいるみたいだあなたの視線は宙を彷徨いぼくは観念が空回りあなたは生きて在ることの何をぼくから隠そうとしているのだろうか意味のない行為をぼくはしているのだろうか支えられることがないぼくはあなたの周りを空回りしている観念になったあなたを非難する術をぼくは永遠に持たないんだぼくはあなたを支えることによって生きて在ることの意味を知るぼくはあなたに支えられている意味を知ることがぼくを生きて在らしめる生きて在らしめる意味を知ることが

  2005/02/13

• 洗っている

  先ほどから丘の上のレストハウスでぼくは学校へも行かず食器を洗っている丁寧にそして慎重に洗っているプラスチック製の水切り籠にデッシュプレート茶碗箸フォークスプーンなど洗って籠に入れているこんなことしていてぼくの学業はどんどん遅れていくんだ授業にはとてもついていけない教授の顔ももう遥か彼方に霞んできているぼくのことを連れ戻す人は誰もいない誰も他人のことなんか関知しないんだその丘はそんなぼくのような人間が集まる場所なんだそれぞれが丘に来て丘を高みまで登る手段にするぼくは食器を洗うあるひとはみんなをヘリに乗せてくれた丘のさらに上空を飛行ししかしやらなくてもいいのにみんなを乗せてさらに高みの断崖の端を敢えて接近ヘリの胴体を擦りつけるほど接近しみんなをヒヤッとさせた彼は特別なひとだぼくはそう思ったヘリの操縦免許を持っている自家用のヘリを持っているしかし彼も丘に来ているつまり才能の問題なんかじゃないんだこの丘の上空を眺める暗雲が垂れ込めてきているこの丘の上空にはヘリで行った高みがあるんだみんな独力でそこに行きたい飛行できればなと思うあるひとはあきらめきれず上昇気流を捉える道具を片付けもせず突っ立って空を眺めているぼくは忘れてしまっていた以前ぼくは上空へ行ったことがあったんだあの断崖の端はそれを思い出させてくれたぼくは食器を洗っているレストハウスのお兄さんがショップを抜け出して空を眺めているレストハウスに煙草を買いに来たご婦人が途方にくれて待っているぼくは食器を洗っている学校へも行かず学校から呼び戻されもせず丘の上のさらなる高みを飛行したいと思っている暗雲に覆われた高みへぼくは飛行しようとしているんださらなる高みへ学校から連れ戻しに来るひとは誰もいない誰も誰もいない先ほどから丘の上のレストハウスでぼくは学校へも行かず食器を洗っている丁寧にそして慎重に洗っている洗っている

  2005/02/12

• 実は訳があるんだ

  ぼくが生まれたのには実は訳があるんだずいぶん前にぼくは産んでもらいたいと二人に頼んだんだそれでぼくは生まれたんだぼくには役割があってその役割は人類の進化に関することなんだそのことのために生まれそうして育ち教育を受け社会に出ているんだすべては選択されているんだぼくの本来の役割から選択されているんだ選択した結果をただぼくは受動的に見せられているだけなんだ選択した結果としてぼくは生きているんだやりたいことがいまこの手中にこのぼくの手中にないはずがないじゃないか雇用されていると考えるのは止めようぼくにはもともと役割があってそうして生まれてきているぼくがやりたいと思うことは人類の進化に役立つことなんだぼくがぼくを売り込んだ結果として雇用形態の名の下にひとつのプロジェクトを実行しているんだぼくがリーダーなんだこのプロジェクトのね給料は与えられるものじゃなくてこのぼくがプロジェクトを実行した結果として得ているものなんだそう考えるとぼくは生きている間になにを達成するのかそうして生きるぼくそのものが善く生きていくことそのこと自体に意味があるんだそうなってくるぼくが生まれたのには実は訳があるんだずいぶん前にぼくは産んでもらいたいと二人に頼んだんだ

  2005/02/11

• ぼくの不可解

  はたしてこれで良かったんだろうかあなたは自然な笑顔で分かっていただいたようなそんな形でぼくと別れたはたしてこれで良かったんだろうかぼくには不可解すぎる不可解すぎるがはじめてお会いしたあなたにぼくの不可解をいきなりぶつけていいものかどうかぼくは遠慮したあなたにはあなたの背景があってそれでどうしても話す気にならないそんな気がしたんだだからあえて遠慮したあなたの気持ちを慮ってぼくはぼくの不可解を握りつぶしたその瞬間からあなたは遠いひとになったあなたは笑顔の自然さを残して記憶のほんの僅かなかすり傷を残してぼくから遠いひとになったそれでもぼくはずっと気になっているあなたはほんとうはどう感じたんだろうとぼくの言葉であなたはなにを変更したんだろうかあるいは変更せずに思い込んだのだろうかぼくは遠慮した遠慮したことによってあなたの変化をあるいはしなかったことをぼくは生涯手放してしまったんだ手放してしまったんだ

  2005/02/10

• 迷宮から救い出した

  ぼくなんかよりたぶんいっぱいの修羅場を潜ってきたんだろうあなたはいつもぼくを励ましてくれているありがたいただそう思うただそう感じるそしてぼくという人間の在り処がわかってくるあなたの励ましによってぼくはぼくの所在が掴めるあなたはぼくの過去を責めないあなたはいつも現在を見ていてそうして未知の可能性を信じている信じているんだあなたはぼくの今とそうしてぼくの未知の可能性をだからぼくは凹まないなんとしても前を向いてそうしてしっかりやってあなたに見届けてもらいたいそう思うんだ見届けて欲しいぼくがどんなにあなたに見てもらいたいのかあなたがぼくを見てくれるのでぼくはあなたを見るあなたはぼくをからかったりするそれもあなたの愛情だそう感じるんだあなたは人間の弱さを知っているたぶんご自身で知り尽くしているのだろうあなたはあなた自身の弱さを見抜いているんだだからぼくの弱さに敏感になれる凛々しいねそう言葉をかけられただけでなぜこんなにも勇気が湧いてくるんだろうあなたはぼくのどこを見てそうしてぼくのなにがあなたにそう感じさせたんだろうひとことあなたがかけてくれた言葉でぼくはぼくのいいところを探し始めたんだあなたのひとことでぼくはぼく自身を見てそうしてぼくの可能性を信じ始めたんだタイミングよくあなたは現れたんだそうしてあなたはぼくを迷宮から救い出したあなたはほんとうはどう思っているんだろうたぶんあなたは想像していないかもしれないけれどあなたのひとことはぼくを迷宮から救い出したんだ

  2005/02/09

• 見えないもの

  見えないものが見えたからといって驚くな見えないものの豊かな容器をぼくは抱えているじゃあないか敬うことはそういうことじゃあないか自分を敬う見えるはずもない自分は自分以外の誰が敬うことができるんだろうほんとうに見えているぼく以外の誰が敬うことができるだろう見えないものが見えたからといって驚くな見えないものの豊かな容器をぼくは抱えているじゃあないか誰も気づかないとしても誰も気にしないとしても実際抱えているじゃあないか見えないものの容器をだからぼくよ自分を敬え自分の見えないものの価値を敬いたまえぼくよ見えないものが見えたからといって驚くなぼくは見えないものそのものじゃあないかぼくは見えないものとしてこの世に在るじゃあないか敬いたまえ見えないこの自分を敬いたまえそうしてこの世に生きて在るじゃあないかぼくのこの見えないぼくの豊かなるものの容量を敬いたまえぼくよ

  2005/02/08

• 虫が這いずり回る

  ああ身体中を虫が這いずり回る虫が這いずり回る血管が拡張し心臓が一気に力仕事をするこの身体ともう少し一緒にやっていかないともう少し一緒にもっと軽くなりたいもっと頑張らないで穏やかにゆっくりと身体はもっと穏やかにならないのかああ身体中に虫が這いずり回る虫が這いずり回る身体の中に触手が生えてきて蠢く蠢くそうして頑張っちゃう血管が拡張し心臓が一気に力仕事をするぱんぱんに脹れてくるぱんぱんに脹れて一気に破裂寸前一気に破裂寸前でぼくの身体はダメになるぼくという意識より先にダメになるかその前にぼくという意識が消え去るのか破裂する破裂する喉・首・頭にかけて虫が這いずり回る虫が這いずり回っているぼくの身体の崩壊は予想よりも早い近いもう少しもって欲しいんだあるいはこの身体を抜け出したいああ身体中を虫が這いずり回る虫が這いずり回る

  2005/02/07

• 閉じ篭る

  きょういちにち閉じ篭ると決めたときからからだは死体のようになり頭脳は明晰だがなにもする気が起こらないでからだが見えるたましいのありかがたぶんお腹のあたりらしいことだけがなんとなく察知できるお腹に誰かが居座ってこのからだとおまえは別物だと呟いているような気がするそのおまえとは自分のことなんだがその自分は閉じ篭ろうとしているから自分だという強い思いも失せているただお腹の中の誰かがその自分を繋ぎとめようと四苦八苦しているこの満たされない状態は対象を失ってしまったからなのか閉じ篭るその態度がこの状態をもたらしたということは言えそうだお腹の中で誰が呻いているんだろうかそのうめき声を聴かないようにするわけにもいかず分析してみようとするからだを裏返して中をじっくり観察精査してみたいが目に見えないものを扱っている以上それでどうなるものでもない閉じ篭るそのことによって直面する存在の不安お腹の中に誰がいるのかあるいは居ないからなのか嘗て臍の緒で繋がっていたそのことなのか閉じ篭るその姿は胎児に似ているつまりは臍の緒から母と結ばれようとしているのか閉じ篭る閉じ篭りたくなるしかし得るものは何も無いなにも得られないが閉じ篭るそれは切り離された母と子の宿命的な行動なのか閉じ篭る閉じ篭ることによってほんとうは何を手に入れようとしていたのか自分のからだが死体のように見えるあとは自分という意識があるかないかなんだよく腐らないでここにあるねー客観的な感想が思いつくぼくには対象が必要だこれが真実父にとっては戦争に勝ち進んで祖国の土を踏むことが対象だった母にとっては子を産み子を育て仕事をすることが対象だったシンプルな対象があったんだぼくにこれといった対象がない対象がないから宙ぶらりんとなる愛にいきるしかしどうしたらいいんだろう対象がないいや閉じ篭ることで対象を失ってしまっているんだ対処療法かもしれないが無理にでも人に会う誰とでも口を利く手紙を出すメールを打つアポをとる電話をかける仕事をする掃除をする何かをする何もしない時間を消し去る消し去る消し去る時間を埋める埋め尽くす予定で埋め尽くす対処療法かもしれないけれどそうやってへとへとになればなるほど余計なことは思い浮かばない愛にいきるなんてことは思い浮かばないきっと思い浮かばないんだ

  2005/02/06

• 彼女は立ったままである

  家族が増える父や妹以外に妹の子供たちやその子供たちの友達や妹の友達やぼくの友達そしてその友達の恋人や妻や夫やその子供たちや子供たちの友達やその友達の幼馴染や恋人たち家族が増えるその頂点で母がいるみんなが安心して気遣いなく食事するその裏方に母がいる我が家の一階はそんな家族が食卓を囲んで母が立ち仕事している彼女は座ったことがない立って仕事しているのに全然目立ったところがない彼女は立ち仕事していることがみんなの共通認識になっている彼女に不平不満がないんだわくわくとしてやっているものだからみんな不思議に思わないんだ我が家の二階はレストランになっているガーデンテラスの席はランチタイムで満席状態各テーブルに二人から四人ほどずらーっと十席ほど埋まっているつまりはこのお客さんも母がこなしているんだお客さんも安心しきって食卓を囲んでいるなんの不安もない母が頂点に立って仕事をしている彼女は一度も座ったことがない立ったまま彼女は団欒しているつまりはそういうことなんだ家族が増えるそれは母が仕事しているからなんだずーっとずーっと母は仕事してきているんだ朝から晩まで手を休める間もなくそれを続けてきているんだけれど誰も気がつかない彼女が立ったままであることを

  2005/02/05

• ああなんて悲しいんだろう

  ああなんて悲しいんだろう乗ったエレベーターは最上階まで行きそうして急転直下左右の安全バーを握りしっかりと握りそれでもそのバーはガタがきていてあまりにも落下スピードが急なのものだからひずみゆがみはずれてしまいそうなんだみるみる山形に変形しエレベーターのボックスもいつの間にか消え失せて四方ロープで支えられた一枚の鉄板の上なんだその鉄板もひずみゆがみ波打ってぺらぺらの一枚なんだ水面を切り抜け地上に激突することなくやっとの思いで１階に到着必要があって乗ったエレベーターだったがぼくの思いどおりにはなかなかいかないんだああなんて悲しいんだろうぼくは三角のピッタリした黒い水着を身に付けてみんなの集まっている場所へ行ったルールなんだそれがしかしなんでかわからないみんな座っているがそんなもの身に付けていないんだいやむしろ透けて見えているのだろうかぼくは水着を着けているがぼくの意識はなにも身に付けていないんだみんなの前でみんなも身に付けていない透けて見えちゃっているかまたはなにも身に付けていないんだそれでもみんな平然として晒しているんだぼくも晒されている晒されているがぼくは唯一気にしているどう見えているんだろうかぼくはどんな下半身を晒しているんだろうか平然としていられないんだああなんて悲しいんだろうぼくの気持ちはコントロールを失い気になることに纏わりついて気になることの周辺でやっぱり逡巡しているんだろうああ目の前にみんなの堂々たる下半身が晒されているああなんて悲しいんだろうぼくの思いどおりにはなかなかいかないんだまたひとりぼくは友人を失ったぼくは透明になってしまいたいんだ身もこころも透明になってしまいたいんだ

  2005/02/04

• ゆっくりと穏やかに

  ぼくの心臓はだんだんゆっくりと鼓動をゆっくりと打ち続けゆっくりとだんだんゆっくりと減衰していくんだろうゆっくりと落ち着いてだから落ち着いてぼくに必要なことをやればいいんだ落ち着いて周りを見てそうしてぼくでなければできないことをやればいいんだそうすれば心臓の減衰に沿って停止までゆっくりと穏やかに停止まで充分にぼくでなければできないことをぼく以外の誰もなし得ないことをぼくはやることができるんだゆっくりとそうして穏やかにいまでなければできないことをゆっくりと穏やかに心臓は停止に向かって減衰しつつあるのだからゆっくりと穏やかに

  2005/02/03

• プロなんだ

  プロなんだ生きていく楽しく甲斐を見つけていくプロなんだ頭に手ぬぐいをしっかりと巻きつけて整えるからだをそのように整えるプロなんだチキンの格好をする着ぐるみを身につけるプロなんだ顔に白粉塗ってもうほんとにチキンなんだから端で見ていてやっぱり憧れというものが湧いてくるプロなんだぼくもそうやりたいと思わせるプロなんだなんだか同じように頭に手ぬぐいしっかと巻いてきちんと制服身につけていかにもプロなんだの意識で掃除するするとなんだかエラクカッコイイプロなんだ寿司屋の職人みたいなんだ憧れるプロなんだ頭に手ぬぐいきりりと巻いて楽しそうに生きている甲斐を見つけるプロなんだしょうがないしかたがないやりたくないいやいややるそういうことが全く無いプロなんだつまりはそういうことなんだプロなんだ

  2005/02/02

• 母がギターを

  母がギターをかき鳴らしている川原で母がギターをかき鳴らしているお祭りだ普段は見えぬがこの町の人々が川原にやってきてぼくは母の肩を抱き寄せかき鳴らす母の映像を見ているお祭りのこの町の人々といっしょに川原でその小さな身体でギター抱えかき鳴らす母の映像を見ているずいぶんと年老いてしまったけれど弱くなった腰をかばうように少し前かがみになって母がギターをかき鳴らしているぼくは映像を見ながら母を抱き母と踊る日差しがオレンジ色の川原にするそのオレンジ色のなかでぼくは川原の土手の上で母と踊る母がギターをかき鳴らしぼくは母と踊るお祭りだ普段は見えぬこの町の人々が繰り出してきて川原の土手は繰り出してきてお祭りだオレンジ色に染まった町の人々に混じってぼくと母は踊る母がギターをかき鳴らしているその映像を見ながらオレンジ色の土手の上でぼくと母は踊るこの町の人々に混じってオレンジ色に染められてぼくと母が映像を見ながら踊る

  2005/02/01

• すりすり

  唇を指ですりその指を指ですりすりすり指をすりながらまた唇すり唇すり缶コーヒー持って缶の中覗き覗き上へ持ち上げもう無いのか呟き缶コーヒーの口唇舐め舐め舐めふと気がついて缶コーヒー置いて右見て右手見てまた指すりすりすりすりすり気持ちがいい気持ちがよくなろうとしてすりすりすりすり気持ちがよくなろうとして唇を指ですりすりすりすりすりすりしていることはぼくにとって気持ちがいいからだからといいつつすりすりすりすりしているのであなたは見ないようにしている見ないようにしていても気持ちいいから気持ちいいことどうしても気になるから見てしまい見続けているうちにあなたもすりすりし始めてきたじゃないかすりすり指ですりすり唇を指ですりすり見ないようにしているけれどどうしても見てしまうあなたは離れて遠く離れてそれでもかあさんだそれでもかあさんだあのうしろに隠れて他人事なのはぼくのとうさんだ全くもって他人なんだとうさん他人なんだからねとうさんなんて人前でいったらきっと怒るよねとうさん全くもって他人事なんだからねすりすりすりすり唇を指ですりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすり

  2005/01/31

• 場所をつくる

  静かな海そこに場所をつくる居心地のいい場所をつくる共同作業で場所をつくる海面を共有する場所をつくる自分の外側を意識する自分に注目しないで自分の外側を意識する意識すると他者がいる他者がそれぞれのブイを掲げているそれぞれのブイで浮いている他者もそれぞれの外側を意識している意識していることがわかるぼくのブイのまわりに同心円の波紋が広がるその広がっていく波紋のなかにあなたのブイが揺れ始めあなたのブイのまわりからまたさらに同心円の波紋が広がるそうやってつぎつぎと波紋ができてブイとブイとブイの揺れていくその共同作業の波紋が広がっていく海面全体に広がっていくそうして海面全体がまたさらにすべてのブイを揺り返し揺り返し意識の海底をときどき覗かせるようになるぼくの意識の海底はあなたの意識の海底とどこに境界があるのかわからない暗くて深いものだから揺れるブイのその下層にはぼくが居てそうしてあなたが居て暗くて深い海底で未成熟のまま挨拶している海面では波紋のなかで揺れながらぼくの波紋があなたを巻き込みあなたの波紋がまた別のブイを巻き込みまた別のブイがつぎつぎと巻き込み巻き込みながらも全体が揺り返し揺り返ししてぼくとあなたのようにつぎつぎとブイの下層で未成熟のまま挨拶しているブイから下層へ強くて丈夫ないのちの綱が垂れ下がり強くて丈夫ないのちの綱が臍の緒のように未成熟なぼくやあなたがつぎつぎとぶら下がっているブイの下層で足元に海底があって少し砂が舞っているこの海底は体温のように暖かく母の乳の匂いがする　　なんでもいいんだよ　　したいと思うことをすればいいだれもが許されている場所なんだから　　なんでもいいんだよ揺れているブイの下層で場所ができるブイとブイのその下層で少し砂が舞っているけれど海底はきっと共通なんだろうその海底はきっとどこまでも繋がっているんだ少し砂が舞って遠くまでは見えなくなっているけれどきっとどこまでも繋がっているんだきっとどこまでもきっと

  2005/01/30

• 母の期待を

  第一子は流産した第一子は母にとって無念だったそうして生まれたのがぼくだ母の期待を背負ってぼくが生まれた母の期待がぼくのいのちだったぼくが生きることそれは母の期待が生きること期待によってぼくは永らえた永らえたんだ期待によっていつも振り返ると母がいたどこにいっても母の視線を感じただからぼくは生きてきた第一子は流産した第一子は母にとって無念そのものだったそうして生まれたのがぼくだ母の期待を背負ってぼくが生まれたある日母はこっそりと念じたんだぼくの知らないところでこっそりと念じた死なないでそう念じたんだきっと健康で丈夫でありますようにと母はこっそり念じたんだその念力はぼくを生かし生かし続けていまもそうなんだきっと母はいまもぼくを生かしてくれている母のいのちがぼくに継承されたんだ母のいのちが第一子は流産した第一子は母にとって無念そのものだったそうして生まれたのがぼくだ母の期待を背負ってぼくが生まれた

  2005/01/29

• レースを放棄して

  ああ生きている間に何回聴かれるんだろう自分のことを何回聴かれるんだろうもしかすると一度もなかったかもしれないしかし母は違うんだ唯一母は聴く母は聴くのがすべてなのかも知れないああこの子はなぜ泣くのかなにが辛いのかいやなにを訴えようとしているのかなにを伝えたいのかこの子はこの子はそうやって母は連綿と途切れることなく子を思うんだ思うんだ母の宿命？聴いて聴いてそうして聴いて聴き込んで子を思うんだ子はだから聴かれることで育っていくんだ聴いて聴いてと泣いているああ子供の頃はそうだったんだいつから聴かれなくなったんだろういつから？母からはみ出して父と対峙して学校に行き就職をして会社に行きそうして聴かれなくなったんだああ生きている間に何回聴かれるんだろう自分のことを何回聴かれるんだろう母は先日手紙をくれたぼくが母に聴いたんだあなたはどういう生き方をしてきたんだろうってぼくが聴いたんだ母にとってはたぶん想像もしていなかったんだいつも子を思うのが自然だったから子が自分のことを聴いてくるなんてたぶん全然想像もしていなかったんだ母の宿命？先日それが突き崩され母が居た母は子が母に最期の折り返しでふと気づきそうしてレースを放棄して一目散に駆けつけてくる我が子に出会ったそう生まれてはじめて母は我が子に聴かれたんだレースを放棄して一目散に母に向かってくる我が子に母は追い返すこともせず我が子を抱きしめたんだ母は抱きしめたんだレースを放棄した我が子を最期に

  2005/01/28

• ぼくの目の前であなたは

  あああなたはぼくの目の前で男を乗り換えた乗り換えることができたんだ男はキョトンとしていたはずなんだはずなんだがそれでも男は男にとっては渡りに船だって理解したなんの衝立もないところそこでガバッとあなたは男を抱きしめ抱きしめ続けたんだあなたはあなたからいつも能動的に行動するんだその能動に感情よりもむしろ知性が働きすぎてそうしてあなたはものすごい力で思い込むんだ思い込むんだ男はその対象になったがしかしキョトンといているはずなんだはずなんだ抱きしめられて渡りに船そう感じて理解して状況に甘んじたんだあなたは偏っているあなたは感情に翻弄されないむしろ感情を消去しているその打ち消す力は強烈でその打ち消し方も強烈でだからどうしても偏っちまうんだ偏った結果あなたは知性の塊りとなって感情で動くぼくを許せないんだその力も強烈でぼくはほんとうに冷たい人間のように判断されたんだろうかほんとうにあなたは強烈なんだその思い込みあなたは思い出に蓋をしているんだきっとあなたは少女時代に最愛の父を失いその失ったことのショックを思い出したくないんだだから感情を打ち消した打ち消して母を支えた最愛の夫を失った母の感情を支えるためにあなたは自らの感情を打ち消したんだきっとそうだあなたの強烈な思い込み男を乗り換えた目の前で男を乗り換えられるあなたの知性はきっと感情を押さえ込んだ結果としての思い込みなんだろうあなたは関係のあらゆる糸を言葉で理解し言葉で変更させようとするそのための感情の力を一切行使しないむしろ感情は打ち消して打ち消して言葉と行為だけであなたは生きているつまりそこに歪があるんだだからあなたは鉄板のように凝っているあなたの肩をほぐすにはあなたに感情を取り戻してもらう必要があるんだあなたの感情それはあなたが少女時代に打ち消した感情あなたが唯一涙を見せたその思い出その思い出を取り返せ怖がらず勇気をもって取り戻せ誰かいないとあなたは一人じゃ無理なんだそうはいっても無理なんだあなたは悲しみの恐怖にもう二度と落ち込みたくはないんだあなたは狂ったように楽しさを求める楽しさのなかにあなたは留まろうと努力し続ける努力なんだあなたの努力あああなたはぼくの目の前で男を乗り換えた乗り換えることができたんだ男はキョトンとしていたはずなんだはずなんだがそれでも男は男にとっては渡りに船だって理解したなんの衝立もないところそこでガバッとあなたは男を抱きしめ抱きしめ続けたんだあなたはあなたからいつも能動的に行動するんだその能動に感情よりもむしろ知性が働きすぎてそうしてあなたはものすごい力で思い込むんだあああなたのその虚しい努力をぼくは止めさせたいんだもう止めろぼくはもう一度言う止めろそんなこと止めろ少女時代に戻るんだぼくが今度こそ一緒に居るからだからもう止めろそんな虚しいことはぼくとほんとうの悲しみをいまから一緒に味わいに行こうよあなたの押さえ込まれたほんとうの悲しみに入っていこうよもう遠慮するなぼくと一緒にほんとうに一緒に辛い悲しい暗い淵を歩こうよ今度こそ一緒に

  2005/01/27

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