天網恢恢疎にして漏らさず
元旦のブログに書き込んだとおり、夜勤を終えて帰宅いたしました。 実は昨日、お年玉の回収を終え、親よりも金持ちになったコドモたちが、玩具店襲撃を敢行しようとすっかり落ち着きを失ってしまい、小雪混じりの雨が降る中、原付に乗れない私は、予定よりも早く我が家を出発しました。私は駅で降ろされ、コドモたちはそのまま玩具店直行です。 そんなこんなで、予定外の自由時間ができてしまいまして、さりとてなすべきこともなく、偶然、カバンに入れっぱなしにしていたカード入れを頼りに、元旦出撃すべくゲーセンに向かったのでありました。 ここまでの経緯から、今回は、当然その出撃記録になるはずだったのです。 しかし。 大事故発生。 これについて書かねば。 という訳で、しょうもない懺悔録を書かせていただきます。 その前に、踏まえておいていただきたい点をいくつか。 1 私は夜勤明けである。 2 夜勤は、夜中の2時に仮眠して、6時30分起床する。 3 睡眠時間が圧縮されると、人間は、時として慮外の行動に出る。 4 「偶然」 (1) 思いがけないこと。また、思いがけなくおこること。(対義語:必然) (2) 思いがけず。たまたま。はからずも。 5 「必然」 必ずそうなるときまっていること。(対義語:偶然) (註:4及び5の出典 金田一春彦、金田一秀穂監修「新レインボー小学国語辞典」 改訂第3版、2007年、学研) 6 私の趣味には、 「読書、音楽鑑賞、魚釣り、キャンプ」といった、履歴書用の表メニュー 「ゲーセン通い、酒の収集、とあるジャンルのビデオ鑑賞」といった、 あまり人には言えない裏メニュー これら2種類が並存してある。 元旦夜勤を終えての帰宅途上。私は今日これからの身の振り方を考えていました。 夜勤といっても、詰め所に相方と二人っきりで閉じ込められているだけで、火事や地震でも起きない限り、これといってやることもありません。ひたすら世間話をしつつ、テレビを見て、コーヒーを飲み、アクビを噛み殺し、タバコを我慢し、時計の秒針と格闘します。 その想像を絶するヒマと、極端な行動の制約と、少ない睡眠時間に、正月の浮かれ気分が程よくミックスされ、私の肩に小さな悪魔が召還されてしまいました。 先述の、私の趣味の裏メニューのひとつが、突如として私の脳裏に起動し、達成衝動として現実の行動に出たのです。 私のホームタウンにある某ビデオレンタルショップ。私がかねてから注目していた、とあるジャンル限定の特殊なアクトレス(引退済み)の出演作品について、品揃えが極端に悪く、常々閉口し、かつ嘆いておりました。 帰宅途上に召還された、かの小さな悪魔がささやきます。 「寄り道して、お宝探しとしゃれこもうじゃないか」 私は、いとも簡単に悪魔の誘惑に乗りました。 で、颯爽と脇道に入り、某巨大病院の敷地をすり抜け、原付は輝く青空の下、寒風を突っ切り、一路、隣町に向かって突き進みます。 初めて入るレンタルショップ。とあるジャンルのコーナーは、思いのほか広大で、それは世の男性諸氏の「悲しき性」の裾野の広さを想起させ、ふと目頭が熱くなります。 I am not alone,you too. 居合わせた見知らぬオッサンに、心の中で友誼を誓います。 品揃えは、広大なコーナーからの予想に違わず、相当な充実度。完全にパッケージが色あせしたVHSも、後生大事に陳列されております。期待できそうだ・・・。 どうにも困惑したのは、陳列方法。「特殊なアクトレス」ごとにまとまってはいるものの、レーベルも50音順も完全に無視されています。。コーナーが広いだけに、検索に時間がかかりそうです。 私は焦りました。帰宅時間が妙に遅くなるのは、是非避けねば。 棚から棚へ眼を走らせることしばし。 ついに発見。 充実した品揃えに満足です。肩の悪魔も小躍りしてます。 そのまま手にしたケースを持って、一直線にカウンターを目指すのも何かしらカッコ悪い(?)ので、用も無いのに、フラフラと一般コーナーを彷徨い、極力何気ないふうを装いつつ、カウンターへ。 お定まりの入会手続きと、それに伴う親切丁寧な説明。店員はまるでテープレコーダーのよう。こちらは、1秒でも早くその場を立ち去りたいのですが、店員君が遵守するマニュアル仕事にイレギュラーな反応を示し、彼を混乱させては申し訳ないので、オトナの対応として、我慢強く聞いてあげました。 さて、会員証もできあがり、いよいよ貸し出し手続きに移行。やれやれ・・・。 「あんた、夜勤終わったの?」 私をあんたと呼ぶ、そういうアンタは誰だ?と目を移すと、 隣には妙齢の女性がひとり。 あ、あなたは、私の、お母さんではないですか・・・・・・。 嗚呼。 いつか、 いつかこの世が消滅する運命にあるのなら、 頼むから今にしてくれぇ! 全ては、後の祭りでピーヒャララ。 母は、自分が年越し用に借りた韓流ドラマ(に相違あるまい)を、祖母の自宅に向かう道すがら、返却しに来たのです。 店員とは顔見知りらしく、「うちのムスコなのよ」などと余計なことを言う始末。 あまりに出来すぎた神様の筋書きに、こちらは立ちすくむ以外になすすべもなく・・・。 よせばいいのに、母は私がたたずむカウンターに載せられたケースをしげしげと眺め、 (うわぁ、見るな、やめろ、あっちいけ) テレパシーを最大出力で発振。 その後、口数を急速に減少させつつ、別れの挨拶もそこそこに立ち去りました。 事故の顛末は、以上であります。 教えてください神様。 私は悪い男でしょうか。 このブログは、妻もチェックしてますが、どーせ母からチクられるなら、と考え、自爆カミングアウトで先制攻撃に出ました。 意外と、母は何も気づいていないかも知れませんし、気づいたにせよ妻には何にも言わないかも知れません。 しょうもない事件を長々と書いて、読んでくださった方々には、心から申し訳なく思います。しかし、この事件を振り返ると・・・ 「運命とは何か」とか、 「これがユングのいう共時性なのか」とか、 現実逃避の衝動からか、大仰なことを考えずにはいられません。 「まったく、なんという間の悪さだ・・・」 ひとり取り残された私は、誰にともなくつぶやきました。 すると、くだんの店員が 「絶妙のタイミングでしたね」と微笑みながら言うのです。 嗚呼、マニュアルを超越した人間関係がここに・・・。 私は、彼の言葉にほんの少しだけ救われ、その場を去り、妻子の待つ家へと向かうのでありました。 おしまい。