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赤い糸ならぬ、太い紐でくっついているんじゃ無いかと思うぐらい御隠居と一緒に行動している。
歳とると誰でもそうだよ、寄り添って残りの人生をお互いを労わりながら、と言われればそれまでだが。 シャキッと背広を着て杖をついた年配の男性を脇からそっと支える老婦人がカフェにいて、コーヒーカップをそっとご主人の取りやすい位置に寄せるなんて姿を何度も見て、歳とるとみんなそうなるんかと思っていた。 しかし、我が家、ちょっとくっつきすぎじゃと思わぬでも無い。 ウサギが、ご隠居の趣味じゃない美術鑑賞に行くと言っても付いてくる。どうせサッと見て出口のカフェでお茶飲んで待ってるんだから鑑賞券もったいないと思うんだが、付いてくる。 ウサギには鎌倉に住む妹がいる。何年か前に脳梗塞で倒れ、命も危ぶまれたが、今は週3日のリハビリやジム行きながら普通に生活できている。ただし、言葉は失ったままだ。 「はい」しか言えない。若い頃秘書をしていた頃から綺麗だった字で手紙も書いてくる。でも、言葉は「はい」しか言えない。毎週言語訓練に行っていても漢字はしっかり覚えているのに、言葉が出ないのだ。但し、それではひとりで外出もできないから、常に彼女の夫が一緒だ。街で妹の倒れる前の友人と会うと彼は「この人は妻とどういう友人だったんだろう。どういうふうに受け答えをしたらいいんだろう」と考えるそうだ。元気な時は別行動だったから、その関係性の密度がわからないんだそうだ。ひょっとしたら嫌いな人だったのかも、或いはもっと親しく挨拶しなければいけないのかもと。 先日妹の家で4人でたこ焼きパーティーした時、妹の夫が「久しぶりにこんなにたくさん話した」と言っていた。妹の失ったものを必死で助けている彼を見て、大切に思っているんだろうな。良かったね。と思った。 縁あって一緒になって、長い年月掛けて育んで、今は以前よりもっと大切な存在だと認識して。 普通の夫婦ってそんなものなんだろうな。 みんなそんなものなんだろうな。 100人を超えるボランティアで受け入れたホームステイヤーや友人達が我が家に泊まっていった。何にも文句言わずに自分の友達のような顔して観光や食事の用意や会話に付き合ってくれたご隠居には感謝しかない。交際費用も。その時々で「ありがとう」は言っているが、総合的に、ご隠居同席の他人との会食時にはさりげなく感謝している話はするが、まだ真正面から、それに対して「ずっと助けてくれて、ありがとう」と言ったことはないかもしれない。 いつ言う? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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