「競争」と「共生」
かつて日本は「一億総中流」という見事な「共生」社会を築きあげてきた。ところがバブル崩壊後、柔軟性を失った日本社会は閉塞状態に陥り国民の不満が拡大していった。そこに登場した小泉政権は欧米流の「強いもの、環境により適応したものが生き残る」という「競争」原理の政策でブレークスルーを図ろうとした。その結果、景気は回復し一部の競争力の強い企業や金持ちはより豊かになった。しかし一方では弱者が切捨てられ格差が拡大し様々な社会問題が引き起こされた。そこで福田総理は民主党小沢代表の理念である「自立と共生」をパクり、今までの行き過ぎた改革競争にブレーキをかけつつ格差の縮小を進めようとしているように見える。ここで「自立」とは主体的行動を表しており「競争」や「改革」に通じるところがある。「競争=改革」は社会を進化させる作用があるが、副作用として落ちこぼれや格差を生み出す。その副作用を軽減するのが「共生=セフティーネット」なのであろう。ところが「競争=改革」主義者は「共生=セフティーネット」をバラマキと批判する。確かに無駄な高速道路作りに税金を投入しても経済的効果が無ければ「バラマキ」かもしれない。しかし民主党の掲げる「農業の個別所得補償」や「子供手当て」などは格差を是正するための「再配分」であり「バラマキ」とは言えない。またこれらの政策は環境や食料自給率、さらには出生率の向上など長期的視点で国益になるだろう。これからの政治は「自立・競争と共生」のバランスをとることがポイントになる。ところで日本では「経済は一流、政治は三流」と言われてきた。いわゆる「55年体制」は自民党と社会党の馴れ合い政治、政権与党と官僚の癒着といった相互補完的な「共生」関係があった。これが政治を閉塞状態に追い込んだと言っても過言ではない。しかし先の参議院選挙で民主党が勝利し「衆参ねじれ国会」となったために与野党が緊張感を持って切磋琢磨する機会が生まれた。民主党はかつての社会党のように自民党と裏取引をするのではなく堂々と国会で論議しようと言っている。政治の世界もこのような「自立・競争」が働くことで一流になってもらいたいものだ。