与党を追い詰める国政調査権
9月初旬から本格的な論戦が始まる臨時国会で、民主党の切り札として「国政調査権」が俄かに注目を浴びている。「国政調査権」を発動するためには国会の委員会での議決が必要だが、これまで過半数の議席を保持する与党の壁に阻まれて殆ど発動されたことは無い。今回、参院で与野党逆転したことにより壁が取り払われ、与党議員にとっては過去の悪行が白日の下に晒され戦々恐々たる日々が続くことになる。ところで通常国会会期末の6月、長妻衆院議員ら民主党の「消えた年金問題」追及チームは東京・品川区内の社会保険庁倉庫を実地調査した際、思わぬものを見つけた。それは年金相談センターやグリーンピアなど同庁関連施設の誘致に絡む政治家の陳情・要請をまとめたファイルであった。もし政治家がセンターやグリーンピア誘致を陳情し、それに絡んで建設工事を請け負った建設会社あたりからカネを受け取っていたら大スキャンダルに発展するだろう。社会保険庁はファイルのコピー提出に応じなかったが、恐らく民主党は次の臨時国会で国政調査権を行使し資料提出を求めるだろう。また民主党は年金問題で1年以上も前から社保庁に対し未払いの年金の総額や被害者の数などの資料提出を求めてきたが社会保険庁は出し渋ってきた。これ等も国政調査権を発動すれば出さざるを得ないだろう。さらに民主党には年金問題以外でも「特別会計予算や日銀によるアメリカ国債購入の実態、政治家の口利き、天下りの押しつけ実態、テロ特措法や政府開発援助の使い道」などの情報公開を迫り、政府のムダ使いに切り込み、また疑惑があれば証人喚問で追及することを期待したい。ところで証人喚問で見逃せないのは村山内閣の時、宗教法人法改正の審議で自民党が創価学会の池田名誉会長の証人喚問を迫り、新進党の公明党グループを揺さぶったことがある。今後再び同じ手法で民主党が公明党を追い詰める可能性もある。一方この創価学会幹部の喚問カードは “抜かずの宝刀”という見方もある。参院選開票当日に「小沢氏と創価学会幹部が極秘に接触した」という情報が流れたが、小沢代表は公明党を敵に回すよりも自公分断が効果的とみて喚問カードを保持しつつ公明党の自民党離れを促そうとしているのかもしれない。いよいよ始まる臨時国会では「国政調査権」をめぐり与野党の攻防が表だけではなく裏でも活発に繰り広げられそうだ。