660147 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

RED STONE 増殖☆寄生日記

RED STONE 増殖☆寄生日記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Calendar

Freepage List

Favorite Blog

ぷりんせすくららの… ぷりんせすくららさん
~ツバサカフェ~ 3cmさん
☆隠れ家☆ kei--11さん
もふもふ大佐のしが… mofuo1217さん
ゲーセンやら日常や… カモミ~ルさん

Comments

田村勝彦@ ホイップランドのコマーシャルの鈴木杏樹さん るりさんとのんくん0427さんがおっしゃっ…
のなめ@ 久しぶりに ゲームオン+社員でググってたどり着きま…
数年(゚д゚)@ Re:最後の更新です ずーっと前からコメ付けずに見てましたー …
亜豆姫ちゃん@ なんと! ブログ更新終了は悲しいですがなんともお…
シェシェリキア@ Re:最後の更新です(08/21) まだコメント返信をしてくださるかわかり…

Headline News

August 21, 2007
XML
カテゴリ:小説

 

 遠目でもそれと一目で分かる豪奢な屋敷が見えてきた。金の糸でグリフォンが刺繍されたミントグリーンのタペストリー、白い石をぴっちりと積み上げて作られた城のように高い壁。茅葺屋根の農家が立ち並ぶバリアートの景色の中、その建物はひどく異質に思えた。

メディッチ家2.jpg

 

「お舘さま!ビスルのロマどもを捕まえて参りました。」

 農民の一人がそう叫ぶと、ギギッという音をたてて木の大きな扉が開いた。

 そこに立っていたのは深緑色の胸が大きくはだけたドレスを着た30代前半と思しき女性だった。アップにした長い髪は銀色、抜けるように白い肌、濃く長い睫毛のベールがかかった緑の瞳。その人は怖いくらいに整った目鼻立ちをしていた。

「ご苦労様。後で褒美を渡します。」

 そう言って農民たちを帰した後、私たちを屋敷に招きいれた。

「こちらへどうぞ。」

 予想外に丁寧な物腰の女性に戸惑っていると、

「ご安心くださいな。別に捕って喰ったりはいたしませんよ。少しお話しが伺いたいだけですわ。」

 そういって微笑んだ。口角を上げた形のよい唇が血のように赤い。こういうのを凄艶とでもいうのだろうか、笑顔というものは普通人を和ませるはずなのにかえって圧倒されてしまう。

 吹き抜けになっている玄関から右側の廊下に入ってすぐの部屋に通された。応接室らしく、彫刻やガラスの置物が飾られ、テーブルには大きな花瓶に活けられた薔薇が馥郁たる芳香を周囲に放っていた。クッションが固い猫足のソファーに腰掛けて見回すと、壁には肖像画が所狭しと飾られている。レースのカーテンがかかっているだけなのに、部屋の中は何故か薄暗い。絵の中に描かれたいくつもの目がこちらを見つめているような気がしてあわてて視線を逸らした。

「手荒な真似をして申し訳ありませんでした。けれどこの町を治める者として、恐ろしいモンスターから皆を守らねばなりません。それにはロマの方の話を聞くのが一番と考えまして・・・。」

「いえ・・・。」

 え?犯人だと思って探させてたんじゃないの?

「申し遅れました。私、メディチ家の当主セラチアです。」

 町の人はあんなに興奮してロマが犯人と決め付けていた。ロマを捕まえろという命令を出した張本人なのに目の前の女性は落ち着いていて、ちゃんとこちらの話を聞いてくれそうだ。

『影響力が大きいこの人を説得できたら、町の人の誤解も解けるかもしれない。』

 バリアートが襲われた嫌疑がロマに掛かっていることを知り、事件の調査を始めたことなどこの町に来るまでの経緯をかいつまんで話した。

「まだ調べている途中で何にも分かってないんです。でも、これだけは信じてください。ロマは平和を愛する民です。他の町に炎のモンスターをけしかけたりなんてしません!」

 なんとか分かってもらおうと一生懸命話したつもりだったが、その間セラチアさんの表情は動くことはなかった。陶磁器を思わせる肌理の細かい白い肌、ガラス玉のような瞳。黙って動かないでいるとまるで人形のようだった。

「ありがとうございます。お話はよく分かりましたわ。」

 そうは言ったけれど、顔からまったく感情を読み取れないので、私の話を信じたのかそうでないのかよく分からなかった。

 

 セラチアさんがテーブルの上にあったクリスタルのベルを鳴らすと、銀製のティーセットが運ばれてきた。薔薇のジャム、数種のプティフール、クッキー、スコーン、サンドウィッチまである。

「ご無礼を働いたお詫びにお茶を差し上げますわ。」

 そういえば小腹が空いていて喉も渇いている。朝軽く食べてから何も口にしていなかったことに気付いた。

「ありがとうございます。」

「ごゆっくり。」

 そういってセラチアさんは出て行った。

 薔薇のジャムを紅茶に入れて飲もうとすると、連理がマントを引いて小声で言った。

「飲まない方がいい。何が入っているか分からない。」

「え・・・でも・・・。」

「この町の人間にロマは良く思われてないんだろ?やめとけよ。」

 比翼も連理に同意した。

「それはそうだけど、セラチアさんは分かってくれたみたいだし・・・。」

 せっかく好意的にもてなしてくれているセラチアさんの手前、全く手を付けないというのも気がひける。第一、相手を信じていないのに自分たちを信じてもらおうなんて虫のいい話だ。

「俺が毒見しよう。」

 ウォルが言った。

「俺らをどうこうしようというつもりなら、使うのは即効性のものだ。誰か一人が試して10分くらい何もなければ大丈夫だと思う。」

「待って、ウォル。」

 止めるのも構わずウォルが紅茶を啜った。苺の飾られたプティフール、スコーンにはちみつ、その場にあったものに一通り手をつけたが、特に問題はないようだった。

「考えすぎだったかな?」

 連理と比翼も紅茶やサンドウィッチに手を出し始めた。彼らも朝から動き回ってお腹が減っていたのだ。

 少し冷めてしまった紅茶を飲みながら、クッキーをつまんでいると急に目の前がぐらつき始めた。地震かと思った次の瞬間、ものすごい力で振り回されて放り投げられるような感覚で闇へ吸い込まれ、ゆっくりと意識が遠のいていった。

 

 

 

 ここはどこ?

 暗い場所をもうずっと走っていた。後ろから追っ手の足音が聞こえる。息が乱れて肺が痛い。疲れて腕も足も痺れてきている。それでも倒れそうになるのを堪えて、歯を食いしばって必死で足を前に出している。

 捕まったらお終い。そんな気がするからだ。

「イッテ・・・モドッチャダメダ・・・。」

「トオクヘ・・・。」

「オマエダケハ・・・。」

 頭の中に何人もの声が響く。いったい誰の声だろう?

 速く、もっと速く走らなきゃ!

 腕の中に抱えた暖かい塊をぎゅっと抱きしめながら、ぬばたま色のトンネルを駆け抜けた。

 

 

 頭が痛い・・・。

 ゆっくりと目をあけるとふかふかの白いベットの上に一人で寝ていた。さっきまでいた部屋とは違う場所だ。ベットと簡単なテーブル、椅子が備えられた簡素な石造りの小さな部屋は、四方のうち一つの壁が鉄格子で出来ているということ以外は居心地のいい空間だった。

 さっきのは夢?まだ息が整わない。脂汗でびっしょりになっていたのでマントで顔と首の汗をぬぐった。

「頭いてぇ・・・。」

 右隣の壁から比翼の声が聞こえた。

「どうやらお茶かお菓子に強い睡眠薬でも入っていたみたいだな。」

 連理の声も同じ場所から聞こえる。

「連理!比翼!そこにいるの?無事?」

「ああ、体調はすこぶる悪いけどね。」

 良かった。彼らがいればなんとかなる。今までだって何度も危ない場面を切り抜けてきたもの。

「ウォルは?ウォル、どこにいるの?」

 返事がない。まだ気を失っているのかもしれない。

「私たち捕まったの?」

「らしいね。音の響き方からして、ここは地下だ。」

 壁をコンコンと叩いて冷静に連理が分析を始めていた。

「ちっくしょ。あの女、油断させといていきなりこれかよ。」

 第一印象で冷たそうな人だとは思ったけど、まさかここまでするなんて・・・。

「まずはここから出ることを考えなきゃ。この鉄格子、はずせる?」

「ちょっと時間はかかるけどなんとかなりそうだよ。武器は没収されてなかったからね。」

 連理たちは剣で鉄格子をガリガリと削り始めた。エルフの剣は細身だが、強靭でしなやかで鋭い。10分ほどでポキンと鉄格子を一本折り取り、廊下に出てきた。

「待ってな。すぐに出してやる。」

 鉄格子の向こうで比翼がにかっと笑った。自信たっぷりで、生意気で、それでいていつもあったかい比翼。気が緩んで涙があふれ出た。

「こら、泣くなよ。もう大丈夫だって言ってるだろ?」

 困ったように連理が微笑んだ。皮肉屋で、理屈っぽくて、でも本当はすごく優しい連理。

 

 それほど長い間離れていたわけでもないのに、彼らの顔が何故かとても懐かしく感じた。

 ねぇ、かっこよすぎるよ、あんたたち。






つづき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ツボでした>

 ある人の意外な一面を知って好きになる、そういうことって結構ある思います。

 『冷たそうに見えて実は優しい』『普段大人しいのにお酒を飲むとノリノリ』『不良なのに成績がいい』などなど・・・。

 私もそんなギャップに弱い一人です。

 

 

 

 

 

 

よろしく1.jpg

(Gv前の叫びの挨拶)

 

 

 

 

 

よろしく2.jpg

 

よろしく3.jpg

 

よろしく4.jpg

 

 

 

冷静沈着、的確に指示を出すしっかり者のえりさんの失敗&後の言動

 

テラカワユスなぁ~(。´ω`。)






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  August 23, 2009 06:16:59 PM
コメント(7) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.
X