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カテゴリ:小説
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!注意!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 今日の話は暴力的内容を多く含みます。苦手な方は読まないようにして下さい。 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「そこで鍵束を見つけたんだ。」 壁にぶら下がっていたという鍵束から連理が一つ一つ試し、鉄格子についていた小さな扉を開けた。鉄格子の外側は細長い廊下のような空間になっていて、同じような格子のはまった房が5つ並んでいた。ざっと見たところ、他には誰もいないようだった。 一体なんのためにこんな部屋を作ったのだろう? 「ここって、地下牢?」 「だな。前から使ってるみたいだぜ。俺たちの部屋の壁には血文字で『助けて』とか書いてあったしな。」 私が寝かされていた部屋は気持ちのよい清潔なものだったが、他の部屋は明らかに牢屋といった薄汚れた感じで、シーツの汚れた粗末なベットしか置かれていなかった。比翼が言ったようにあちこちに血や助けを求めて引っかいたような跡がある。ここに捕らえられていた人間がどうなったのか・・・、背筋に冷水をかけられたような悪寒が走った。 「とんでもねぇトコだぜ。さっさと脱出しようぜ。」 「待って、ウォルがいない。」 ここにいないということは他にも牢があるのだろうか。 「探しに行こう。」
廊下の端の木製のドアをくぐると両側に扉がある暗い廊下に続いていた。見回してみたが、何も明かりらしきものがない。かろうじて視界を確保出来たのは、青白く発光している虫たちが無数にいて、ゆぅらりゆぅらりと頼りなげに揺らめきながら飛んでいたからだった。 地下牢のあったところから一番近い扉を覗いてみると、汚物と何かが饐えたような悪臭が鼻をつき、思わず顔をしかめた。その中はむっとするほど生暖かく湿った空気に満たされている。廊下と同様明かりのないその部屋には発光虫が飛び交い、テーブルに置かれた試験管やフラスコなどを照らし出していた。 「何かの研究室みたいだね。」 「ああ。最近は使ってないみたいだけど。ほら、埃が山積みになってる。」 乱雑に書きなぐったメモの束を見てみたが、知らない言語で書かれているのでどういう研究をしていたのかよく分からない。37.4とか40とかいう数字だけがかろうじて読み取れた。
廊下に戻って次の部屋を調べようとして、ふと吐き気を催すよう異臭に気がついた。これは・・・鉄の匂い・・・? 少し先を見ると夥しい血が壁や床に流れ、大量の白い羽が散乱していた。どこからか大きな鳥が迷い込んだのだろうか・・・。そしてここにはその鳥を乱暴に引き裂いて食べた生き物がいる。 「注意して。何かいるよ。」 連理と比翼が剣と弓を持って身構え、ゆっくりと進んだ。 しばらく進むと廊下の奥から薄く黄色い光が漏れているが見えた。出口? とりあえず先にそこを調べてみようと歩くスピードを早めて中ほどまで進んだとき、ガタンと音がしてすぐ後ろの扉が開いた。 音の方向を見て思わず言葉を失った。 そこに蠢いていたのはたくさんのモンスターだった。それもこれまでに見たことがないくらい醜悪な・・・。異常に大きかったり小さかったり、目や耳や手の数が違ったり、顔が半分に分かれていたりどろどろに溶けたように崩れていたり。しかしそれらはすべて人間に似ていた。そして消え入りそうな小さな声で口々にこう言ったのだ。 「コレイジョウ・・・サキニ・・・ススムナ・・・。」 突如としてその生物が群れを成してこちらに向かってきた。 すばやく連理と比翼が応戦する。 「なんなんだよ、こいつら。」 「きりがない!」 一撃で倒せるくらい弱いが、一気に来られると二人で相手をするには数が多すぎる。少しずつ間合いを狭められていった。 頭部が異常に膨らんだ一つ目の大きなモンスターが肩に私の手をかけた。恐くて必死で笛を振り下ろすと、あっけなく顔の半分が吹き飛んだ。笛と手にべっとりと血がつく。生暖かいその血は赤かった。 足に違和感を感じて下を見ると体長15cmほどの目だけ異常に大きな小人がしがみついていた。あわてて足を振り回して振りほどくと、すぐそばの壁に当たって潰れた。その血も赤かった。 『何故モンスターの血が赤いの?ヒトに似ている部分があると殺すのに罪悪感を感じてしまうじゃない。』と、理不尽な苛立ちを覚えた。 数十匹いたモンスターをすべて倒したときには、服も髪も血に塗れていた。新手が出てくるのを恐れ、顔だけ手早く拭いて出来るだけ慎重に先を急いだ。
廊下の端まで進むとそこには扉があった。さっきの明かりはこの部屋から漏れていたものらしく、薄くドアが開いていた。 「もう一度ちゃんと約束してください。プッチニアには手を出さないと。」 ・・・ウォルの声だ。 「ふ・・・ふふふ。これは異なことを。旅の間に幼馴染の情が復活したのかな?」 知らない男の人の声。声が出しにくいのか、どこかすこし引き攣れたような喋り方だ。 「いいから、もう一度はっきり約束してください。」 「ああ、そんなに念を押さなくても最初から言っているだろう?アレには傷一つ付けるつもりはないよ。大事な体だからね。」 何?いったい何の話をしているの? 薄く開いたドアの隙間からそっと覗いてみた。まず目に飛び込んできたのは大量の本。壁際に据えられた棚にぎっしりと本が並んでいる様は、スマグにあるウィザードの研究室を思わせる。 部屋の中ほどに視線を移して明かりの正体を見たとき、思わず声を上げそうになった。 『なに・・・あれ・・・。』 これまでに見たことのないくらい巨大なスウェルファーが部屋の中心に浮いていて、頭についた発光機が部屋を明るく照らし出していたのだった。 手前にウォル、 奥に青鼠色のフードを深くかぶった男が立っている。 「約束といえば、もうひとつあったね。君の希望は・・・そう、サマナーの能力だったね。冒険者として身を立てれるくらい優秀な。」 「・・・はい・・・。」 「力欲しさに幼馴染を売る真似をして、今更いい人ぶるなんて虫のいい話じゃないかね?そういえばここに来るのも予定よりずいぶん遅かった。モルビリから聞いているよ。さんざん邪魔したとね。」 「・・・。すいません・・・。」 「まあ最終的には私に協力する気になったのだから、大目に見ることにしよう。」 フードの男が手を広げた。 「さあ、約束のものを渡そう。こちらに来るがいい。」 ウォルが部屋の奥へ歩を進めると、フードの男の後ろから緑の大きな物が勢いよく飛び出した。 ウェアーゴートだ!
エメラルドグリーンに発光したウェアーゴートの体と巨大な鎌が一瞬で真っ赤に染まり、ウォルの体が崩れ落ちた。 「ウォル!」 部屋の中に駆け込むと、左肩から右腰へ袈裟切りにされたウォルの体が部屋の中央で横たわっていた。人の体にはこれほどたくさんの血が詰まっているのだろうかと驚くほど、夥しい量の真紅の液体が噴水のように噴き出し、天井にまで飛び散っている。 出血を止めようと駆け寄って傷を抑えると、まだ息があったウォルが薄く目を開いて途切れ途切れの声でこう言った。 「・・・プ・・・ア・・・。ごめ・・・。」 そしてそのまま、動かなくなってしまった。 「ウォル・・・ウォル!!!」 「これはこれは・・・。立ち聞きとは行儀の悪い。ずいぶんとお転婆に育ったものだね?」 青鼠色のフードからぞっとするほど冷たい声が聞こえた。フードの中の酷薄そうな唇が歪んで、くくくっと忍び笑いをもらした。
「お帰り、プッチニア。我が娘よ。」 ⇒つづき
今回はかなりスプラッタな内容になってしまいました(・ω・;A)アセアセ…
フードの男はハンス(プッチニアの養父)ではないです。 正体は次回!
これまでのおはなし↓
<お花畑>
フローラルブーケの香りだお( ^ω^) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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