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カテゴリ:小説
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!注意!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 今日の話は暴力的内容を多く含みます。苦手な方は読まないようにして下さい。 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「ああ、すまない。いきなりこんなことを言っても混乱するだけだな。」 口調は優しいが、その声から彼の持つ狂気は隠せない。 強力な睡眠薬を飲まされ、地下牢に閉じ込められ、モンスターの群れに襲われ、そして突然目の前でウォルが殺された。あまりのことに思考が追いつかず、涙すら出てこない。 動脈を切られたのだろう、いくら傷口を押さえても血が勢いよく溢れて出してくる。日に焼けて健康そうだった肌がどんどん青白くなっていくのを止められなかった。 「ウォル・・・。ウォル・・・。」 「何故そんなに悲しむ?そこで聞いていたなら分かっただろう。その男はお前を裏切っていたんだよ。」 裏切った?この人は一体何を言っているの・・・? 「まだ分からないか?モンスターの襲撃事件はお前をここに呼び寄せるための罠だ。私が計画を立て、ウォルとモルビリが遂行した。」 けい・・・かく?ウォルとモルビリさんが? 体から全ての力が抜けて、そのまま崩れ落ちそうになった。 「バリアートはあまり冒険家にとって魅力のある街ではないうえに、交通が不便な陸の孤島だ。よほどのことがない限り、お前はこの街へは来ないだろう。それゆえ一計を案じることにした。モンスターを使って騒ぎを起こし、それをビスルのロマのせいにする。それがお前に伝われば、きっとこの街に調査に来るだろうとね。 Akimiさんが話していたビショップはモルビリさんだったんだ・・・!赤山でタイミングよく声をかけてきてビスルへ送ってくれると言ってくれたこと、なんの利害もないのに襲撃事件の調査に進んで協力してくれたこと、今思えばなにもかも上手くいきすぎていた。 「本来ならすぐにバリアートに連れてくるはずだったんだが、初めて村の外へ行けることに浮かれたのか、この馬鹿者がおかしなことを言い出した。おかげで余計な時間がかかってしまったよ。」 フードの男はつま先でウォルの体を転がした。 「この男はもう用なしだが、まだ使える部分は残っている。もう少し私の役に立ってもらおう。」 「・・・っ!」 そう言うと男は背後のウェアゴートに何か合図した。するとウェアゴートがウォルの体に近づいて腕を切り取り、大きなビーカーを受け皿にしてしたたる血を集め始めた。透明で口の広い容器はみるみる真紅の液体で満たされていった。 「お前を傷付けずに捕らえるためには、街の人間と諍いを起こすことなく、上手くこの館へと誘導しなければならない。しかし暴動を起こしたバリアートの人間を統べるメディチ家の邸内に入れることは、初対面のモルビリではなかなか難しいだろう。すでに親交があってお前が無条件に気を許す人間の協力が必要だ。モルビリが配達でビスルに出入りするうちに、最適の人間を見つけた。それがウォルだ。 ウォルが・・・。村で再会してからこの街に来るまでのことを思い出した。村へ帰ったときに久しぶりに会った私を抱きしめたウォル、必ず私を守ると村長に宣言したウォル、ロマジカルバンドの演奏で私の手を引いて踊りの輪へ誘ったウォル。彼が見せた私への優しさは全部嘘だったんだ・・・。 堰を切ったように急に涙が溢れてきた。悲しいわけでも、くやしいわけでもない。何も知らずに浮かれていたことが、ただただ恥ずかしくてたまらない・・・。涙と一緒に心に溜まった澱を吐き出し、何もかも洗い流して全て忘れたい気持ちになった。 「メディチ家に連れてきた後、かねてより打ち合わせていた通り毒見役を買って出て、こっそり解毒薬を飲んでから睡眠薬入りのお茶やお菓子に手をつけ、お前たちを安心させた。おかげでぐっすり眠ったお前をメディチ家の地下にあるこの場所へ捕らえることが出来たというわけだ。 くっくっくと再び青白く薄い唇を震わせて笑った。 「その点モルビリは使いやすかった。どんな悪事を頼んでも、元天使とは思えない迷いのない行動を見せてくれたよ。 「モルビリさんは・・・どうしたの?」 「ああ。ここに来る途中で見かけなかったか?翼を引きちぎった後、アレの餌にくれてやったんだが。」 地下牢を出たところにあった大量の白い羽と血。大きな鳥だと思っていたけれど、あれはモルビリさんだったのか・・・。 もはや驚きはしなかった。目の前にいるこの男は、今まで見たどんな怪物よりも卑怯で狡猾で残虐で冷酷だ。美味しいエサを目の前にちらつかせていいように人を使い、最後には表情一つ動かさずに易々と殺してのけるのだ。 「ウォルにしてもモルビリにしても、願いはちゃんと叶えたつもりだよ。死ねば自由にどこにでも行けるし、天界へ帰ることも出来るだろう?」 嘲りを含んだ歪んだ笑みが更に崩れ、堪え切れず次第に高らかな笑い声を上げ始めた。どこか引き攣れてひび割れた、耳障りな高い声が地下全体にこだました。 この人の笑い声、どこかで聞いたことがある。嫌だ、これ以上この声を聞きたくない。 懐かしくておぞましくて恐ろしい・・・。思い出したくない記憶が一気に溢れ出しそうになり、あわてて蓋を閉めた。 考えちゃダメ。はやく逃げなきゃ・・・! でも足が竦んで動けない。見えない何かに押さえつけられたような感覚にとらわれた。何故私はこんなにも怯えているのだろう。 ダメ、ちゃんと考えて、動いて! このフードの男は何者なのか。ウェアーゴートを従えているということはビーストテイマーなのだろうか。でも男はテイマーにはなれないはず。 そして何故ウォルとモルビリさんはこの人が冒険者の能力を授けたり、翼を与えたりなんてことが出来ると思ったの? 「・・・あなたはいったい・・・?」 「私の名はフィロウィ。闇に生を受けたもの。」 そう言って深くかぶっていたフード付きの青鼠色のマントをするっと脱ぎ落とした。 フードの下からは意外なほど若く美しい顔が現れた。すっと線を引いたように伸びた鼻梁、銀色の前髪に半分隠れた藤色の瞳はスウェルファーの明かりの下で妖しく煌めいている。しかし左半分が赤褐色に隆起した硬い腫瘤に覆われ、左目は潰れていた。 「醜いだろう?ビスルで全身を炎に包まれたあの日から、この傷はずっと疼き続けているのだ。痛みなど感じない不死の身だというのに・・・。」 ビスルで炎に焼かれた男のビーストテイマー。 目の前の人物がマスタークエストを終えて家に戻ったときにパパから聞いたアンデッドだと気付くのに時間はかからなかった。 ⇒つづき
モルビリとウォルが組んでプッチニアを騙していたことに気付いていた人は何人くらいいるのでしょうか。実は結構前から伏線を張ってたりしてたんですよ・・・(´゚∀゚`)
~フィロウイルス科(Filoviridae)~
映画『アウトブレイク』の殺人ウイルスのモデルになったり、ノンフィクション小説『ホット・ゾーン』で出てきた恐ろしいウイルスです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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