カテゴリ:映画・TV
アメリカが日本をどう描いているのかが気になって見に行った。
数年前ある雑誌で、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)のお孫さんである小泉凡さん(島根県立大学短期大学教授)が、自分の名前の由来について書いてあるものを読んだことがあった。 小泉八雲の長男である一雄さんは、交流のあった敬愛するボナー・フェラーズにあやかって、息子に「凡(ぼん)」と名付けたということが書いてあり、その時は「へぇ~、変わった名前をつけたものだな」と思ったが、ボナー・フェラーズの名前はすっかり忘れてしまっていた。 この映画の主人公は天皇でもマッカーサーでもなく、このボナー・フェラーズという親日的な准将の物語だった。 フェラーズ准将はマッカーサーの軍事秘書官で、特命を受け極秘調査をすることになる。 フェラーズ准将: マシュー・フォックス マッカーサー元帥: トミー・リー・ジョーンズ 昭和天皇: 片岡孝太郎 東條英機: 火野正平 近衛文麿: 中村雅俊 木戸幸一: 伊武雅刀 関屋貞三郎: 夏八木勲 鹿島大将: 西田敏行 鹿島の妻: 桃井かおり アヤ: 初音映莉子 通訳の高橋: 羽田昌義 公開されたばかりなので、詳しい映画の内容は書かない。 終戦前後の日本側の出来事は、本でだいたい知っていたことが忠実に描かれていたと思う。 アメリカ側の偏見で、日本が不自然な描かれ方をしているのではないかと思っていたが、史実とフィクションを上手く織り交ぜた、とても自然な作品に仕上がっていた。 私にとっては宣伝文句のような新たな驚くべき真実は特になかったが、まだ終戦当時の事を知らない若い人たちには、フィクションとノンフィクションを見極めて見てほしいと思う。 帰宅後にパンフレットを読んでみると、原作は日本人で、映画をプロデュースしたのも奈良崎陽子さんという方だった。 『ラストサムライ』など多くの映画を手掛けていて、この方の祖父である関屋貞八郎さんは天皇を補佐している宮内次官だったという史実があった。 その方の役を、今年亡くなった夏八木勲さんが演じている。 なるほど、天皇の側近のお孫さんが企画した映画でしたか。 奈良崎さんは脚本を、日本の高校で教壇に立ったことのあるイギリス人のデヴィッド・クラスに依頼し、もう一人の脚本はブラジル出身のヴァラ・ブラシが書いている。(二人で書いている) 監督もイギリス人のピーター・ウェーバーに依頼した。 音楽の担当者もイギリス出身で、美術、衣装、編集の各担当はニュージーランド出身者である。 主役のボナー・フェラーズ役のマシュー・フォックスと、マッカーサー役のトミー・リー・ジョーンズの2人がアメリカ出身。 ハリウッド映画は、日米双方をイギリス人という客観的な目で描いていた。 イギリスにはロイヤルファミリーというものがあるので、日本人の感覚が理解できるのだろう。 ボナー・フェラーズという方がいたことは、日本にとって本当に幸いであった。 ほんのちょい役だったが、桃井かおりが凝縮した日本の味を出していたし、西田敏行さんの英語も自然で良かった。 アヤ役の初音映莉子の涼しげな顔が、昔の日本女性という雰囲気を醸し出していて適役であったし、出演者全員に違和感がなく、配役が上手いと思った。 一つだけ気になったことは、エンディングロールで流れた歌が、日本語訳で字幕で映し出された中に、「野望」という言葉があった。 まるで野望に敗れた日本というニュアンスだったが、日本は野望の戦争をしたわけではない。 日本を追い詰め、戦争に引きずり込んだのは、間違いなくアメリカの野望だった。 それは先日読んだ、GHQのメンバーとして戦後処理に参加したヘレン・ミアーズの『アメリカの鏡・日本』にも「私たちの戦争目的は、日本を征服することだった。戦前、戦中を通じて日本の本土を占領することが私たちの目的だったのだ」とちゃんと書いてある。 そして日本はアメリカに解体されてしまったのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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