『 最後の一球 』 島田荘司
1993年秋、母親が自殺を図った理由を探ってほしいと依頼された御手洗潔は、彼女が悪徳ローン会社に債務があることを突き止めたものの、借金自体はどうしようもなかった。だが、ある二番手投手だった男の投じた友情と惜別の一球が、思わぬ解決を招く!表紙はこの夏話題沸騰のハンカチ王子を思わせるものです(笑)。私は御手洗さんのシリーズは数冊しか読んだことはないのですが、この強烈なキャラクターと石岡君とのやりとりはスケールのでっかい漫才ですね。そしてこれは前回読んだロシア幽霊軍艦事件から続くロシアものか?!と思わせる出だしです。でもこの表紙にこの題名…、いったいどんな展開なんだ????と思っているとすぐさまこの話題は断ち切られ本題に入ってゆくのでした(笑)。この話のほとんどは、小さいころから野球に人生のすべてをかけた一人の投手の物語でした。それはそれは長い人生を語ったものでした。ふと、ハンカチ王子のように野球の大舞台で活躍しプロへと進んでゆくのはほんの一部の人間なのだな…。プロに入れたからといってそのスポーツだけで生きてゆけるものではないのだな…。そしてその家族もたくさんいるのだな…。と、考えさせられました。でも何かに自分のすべてをかけられるということは誰にでもできるということではなく、それに出会えてひと時でも夢中になれたということは幸せだな。という思いへともつながってゆくのでした。はっきり言ってこの事件は先が私にも読めてしまいました。しかし彼の人生の物語としてとても興味深く私の心に残ったのでした。一つだけ難を言えば…さすがに今この表紙では、カバーなしで電車の中では読めませんでした(笑)。