テーマ:囲碁全般(743)
カテゴリ:囲碁
☆クレージー・ストーン(CrazyStone) 週刊碁に掲載された世界最強の囲碁ソフト・クレージーストーンに興味を持ち実際に対局したいと考えていたところ、思いがけずきっずファイブの社長またみつさんの仲介で実現することになった。 クレージーストーンはフランスの情報処理研究者が開発したソフトであるが、このソフトが置いてある電通大電気通信学部村松研究室で対局できることになった。 対局に備えてネットで情報収集した。村松研究室は、「最適化理論」の研究の最先端を行く研究をしているようだ。従来何が最適かを評価するのが難しいような事柄を理論化しコンピューターで計算するような分野とのこと。 囲碁ソフトの研究は情報処理分野の発展に役立つ可能性があり、注目されているようだ。 最先端のソフトは、ランダムに膨大な数の道筋を短時間にシュミレーションして勝率の高い手を選択するという方法(モンテカルロ碁)を利用している。これに、能率良く無駄な手を読まないシステムも組み合わさっているらしい。
☆事前調査 ネット上では、青葉プロが8子と7子で負けた2局を見ることができた。8子の碁は、序盤から中盤にかなり得をして、人間相手なら完全に碁になった形だったが、終盤しっかり打たれて黒が逃げ切り。7子の碁は、序盤白が隅で紛れを求めようとして、意外にしっかり打たれて逆に苦しくなってしまい、その後中盤までにかなり儲けたが追いつかなかった。 青葉プロはプロとして無理はできなかったのだろう、2局とも律儀な打ち方で紛れが少なかったと思う。9路盤で王メイエンプロが向先で負けた碁もあったが、選択範囲が少ない場面では完璧に近いようだ さらに研究するため、お願いして事前に学生との棋譜を10個送っていただいた。 序盤から中盤は独特の中央重視の打ち方で甘い手や悪手があり損を重ねるが、終盤からは恐ろしく強い。7子8子の碁は最後は全部クレイジーストーンが勝っていた。面白いのは、確率重視なので、勝ちを読みきると自分の地の中の切りをなくすような損な手を打ってくること。 中盤からすでに勝ちが見えているのか?と心配になったが、6子の碁で敗戦があったので、そこまでではないようだ。棋譜を見ると、判断力という言葉が適当かわからないが中盤までに価値の高い手を選択する能力と、長い道のりの読みには弱さがあるように感じた。 弱点はあるものの終盤での逆転は困難であり、中盤までに勝ちにしなければならないのは相当なプレッシャーである。盛田、佐々木を擁したかつてのベイスターズのようだ。 ひたすら勝ちに向うシステムの囲碁マシーンであり、弱点と強さを併せ持つ。その強さの部分は、王メイエン九段の9路の碁で見せつけてもらった。今回の対決では、クレージーストーンの弱点を徹底的につき、真の実力と可能性を測るとともに、19路の碁の深さを確認するのが目的である。とにかく今までに対戦した誰よりも一番読めない相手である。
☆対決クレージー・ストーン 7子局 2月某日正午に、またみつさん、ネット仲間のヘキサさん、興味を持ち飛び入り参加となったOプロ、私の4人が調布駅に集合。讃岐うどんを食べながら、Oプロにクレージーの特徴を説明した後に、いよいよ出陣。駅から歩いて5分ほどの電通大キャンパス内は緑が多く静かで落ち着いた雰囲気。その西奥にある村松研究室の門を叩いた。 村松教授自ら迎えてくれ、互いに自己紹介。教授は大の酒好きとの情報を得ていたので、持参した上等の地酒を差し上げた。早速対局の準備をしていただき、その後も仕事の合間にソフトの設定などしていただきたいへん恐縮した。 コンピューターは普通のパソコン8台分の性能で、ソフトも含めて性能は青葉プロの時と全く同じ条件。対局条件も同じ一手30秒として、早速7子で対局開始。 クレージーは一手目からすべて30秒かけて打つ。クレージーにしては珍しく普通の出足で以下の図。シマリなどの常形を覚えさせてあるわけではなく、シュミレーションの結果、桂馬や2間シマリを選択することもあるらしい。 局面図1
各所に石をばら撒き、特に中央を制圧されないように気を使う。これはかなり成功し、黒に大きな地ができそうな所はなく、紛れのある広い局面に導けたと思った。相手が人間ならジワジワと終局までに差し切れる流れだが、ここからが違った。 中央の弱点を補強する厚い手や、白の薄みに迫るなどして圧力をかけてくる。これは差すのは厳しいと思った瞬間、トラブル発生。突然クレージーがノータイムで打ち出したのだ。その途端、クレージーにミスが続出して白が逆転、中断とした。ただ、興味深いのはほとんどゼロコンマ何秒の考慮時間でもそれなりの意味のある手を打っていたことで、これは驚いた。この碁は、あのまま30秒で考慮されていたらおそらく負けていた可能性が高い。 トラブル発生時点の局面図2 仕切りなおしで再度7子。秒読みの設定にトラブルが生じたようで40分切れ負けの設定に変更した。今回はクレージーは序盤から1分以上の小考を重ね、最初の碁と違い中央を制圧してきた。 局面図3
ただ、大サバキに出ると黒はあっさり攻め合いを放棄して望外の大地が完成。その後も局地戦で得を重ね形勢は中盤までに接近。ただ、完全に抜き去るところまで行かず焦る。何とか大ヨセあたりでギリギリ逆転したようだ。ここからは、黒が勝負手連発し玉砕してしまった。黒の残り時間が10分を切っていたので、30秒秒読みの設定に比べてやや甘さが出たかも知れない。 局後にクレージーの思考内容記録を見せてもらった。序盤の一手に数十万通りものシュミレーションをしている。ただ完全に手当たり次第のシュミレーションをしているわけではなく、途中から白が着手した地点の付近など勝率の良さそうな手を中心にシュミレーションをするシステムになっているらしい。下の局面図がその場面。 局面図4
クレージーは1と打ったのだが、他に重点的にシュミレーションしていたのはM4・3の地点。P5のような人にとっての普通の手をほとんどシュミレーションしないのは面白い。外回り重視で石が下に入らないクレージーの傾向が思考内容としても記録されていた。 クレージーの弱点が露呈したのが以下の局面。 局面図5
シチョウに弱い。単純な緩みシチョウが読めなかったようだ。一局目にも取れないシチョウを二つほど追いかけた場面があった。 総譜 (白中押し勝ち) 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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