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人間仁科のブログ・八重山見聞録外伝

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2007.12.22
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カテゴリ:島ネタ
自己責任という言葉が一時期巷間を
賑わせた。イランで日本の青年ら数
名が捕まったりした時分である。

巷間では、自己責任なる言葉を振り
かざし当該青年らを糾弾。曰く。身勝
手である。とか、戦争と言うものをわ
かってない。とか、くそガキ。とか、大
日本帝国の恥部である。とか色々と
言いたい放題の方が多かったように
記憶しているが、八重山-石垣島で
も自己責任を問われるケースが時折
ある。

土地柄、言うまでもなくそれは飲酒後
の始末についてである。

ま、時折と言うよりは毎日。毎晩。く
る日も、来る日も。あいも変わらず。
ってな感じであるわけだが、ま、それ
はさておき。
以前も八重山見聞録に書いたように
島では泥酔者の常として帰宅するま
で持ち堪えられず、処構わずに睡眠
をむさぼってしまったりする。

立小便まみれの路地裏だろうと、見
知らぬ他人の家の軒下だろうと、幹
線道路上だろうと、アパートの階段の
踊場、警察署の正面玄関前、車のボ
ンネットの上、ホテル周囲の植込み
の中、などとまぁ身体を横たえられる
なら何処でも寝る。

ここに挙げたケースで自己責任が問
われるのは『立小便まみれの路地裏』
と『幹線道路上』だろう。

幹線道路上で眠る泥酔者は大抵の場
合、何故か縁石を枕とする。泥酔して
道路に寝るンでも枕が必要なのが妙
に生活感が滲み出ていて面白いなぁ
などと私は感ずるわけだが、正味これ
は危険である。

車に轢かれるからだ。

で、交通事故だから当然責任問題に
なる。轢いたほうは当然加害者となり、
前方不注意、業務上過失致傷なんか
の罪に問われるのであろうし、問われ
た加害者が加入している自動車保険
を運営している保険会社は少しでも
保険金の支払額を抑えるべく轢かれ
た泥酔者の責任を問うてくるのである。

あんな所で寝やがって、てめぇも悪い
だろ。自己責任だ自己責任。自己責
任って知ってか、この野郎。事故責任
じゃねぇぞ自己責任だぞ。ダジャレ
じゃねぇんだからな、この野郎。

しかし、ま、自己責任自己責任と騒い
でも所詮は金の問題であり、責任に
あまり深みのない責任である。しかし
これが『立小便まみれの路地裏』とも
なると自己責任にも悲哀の色が帯び
始める。文学的な睡眠である。文学
的自己責任なのである。

立小便は大抵、どこか路面の低いと
ころへと溜まり、泡盛の黒麹菌やアル
コールの入り混じる饐えたアンモニア
臭を漂わせつつ数分間もそこへ留ま
る。

週末や盛大な催し物のあった夜とも
なると盛り場は当然の如く賑わうから
小便横丁にも人波が途切れることな
く押し寄せ、同じ場所に五分おきに小
便が射出されることとなる。

水たまり…?
いやいや、それは小便池だ。
池のそばで独りの泥酔者が力尽き、
やがて彼はわりと深い眠りに落ちる。
自分の吐く息が十分に臭いし、舌も
喉も鼻もみんな酒焼けして使いもの
にならず、どんな臭いも端っから不
覚なんである。

やがて彼は着用の作業着のよじれが
首を絞め、苦悶のすじが眉間や口元
なんかに浮かび出す。見ていた夢は
悪夢となる。いつもぶん殴っていた妻
が片手に包丁、逆の手には鉈を振り
かざして追いかけてくる。くそっ。逆ギ
レかよ。酔いが醒めたらタダじゃおか
ねぇからな。目が覚めたらぶっ殺して
やるからな。覚えとけよ。

そう毒づいて振り返ってみると、追い
かけてくる女は、いつの間にか妻では
なく鬼の形相の母親に変わっている。
その手に持っている刃物もさっきまで
の包丁や鉈ではなく、長尺の日本刀
だ。刀身にまとわりつく鈍き光り具合
が妙に怖ろしい。

息が切れ始める。もう走れない。で
も母ちゃんは怖い。息ができないの
も苦しいが、母ちゃんに刀で切られ
たりしたらもっと苦しい。痛そうだ。
痛いのは嫌だ。母ちゃん、勘弁して
くれよ。いつの間にか流れ出した汗
が顔中を濡らして気持ち悪い。彼は
走りながら汗をぬぐった。

でも拭っても拭っても顔の汗が拭け
ない。拭き切れない。いつまでも、い
つまでも汗がまとわりつく。顔が気持
ち悪い。顔が。なんでだよ。畜生め。
汗が。顔が。
汗が。

汗。

泥酔の彼はそれでも目を覚まさない。
何度も寝返りをうち、ごろごろと転が
りころがり辿り着いたるは小便乃池。
彼の上半身と右頬は池にとっぷりと
漬かり込み、寝ながら幾度も幾度も
顔をぬぐったのである。

顔中を他人の小便で濡らしたまま泥
酔の彼は眠り続ける。やがて朝が来
て彼が目を覚ましたとき、小便池は
蜃気楼のかなたロプノール湖よろし
く跡形もなく消え失せているのである。
ま、そうは言っても小便臭さだけは
残ってるけどね。

で、自己責任を問おうにも彼は何も
覚えていない。いつもとは違う変な気
持ち悪さも、いつもの二日酔いとしか
断じず、今夜もまた盛り場へと繰りだ
し、そして今夜もまた何処か見知らぬ
場所で眠るのである。











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Last updated  2007.12.22 07:12:02
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