カテゴリ:旅ネタ
と読点も碌にないままに長ったらしく書くまでもないが、要するに旅にバスは欠かせない。バスなしの旅など考えられないのである。個人旅行だろと団体グループでのパッケージツアーだろうとバスに乗らずに済む旅はない。ま、三泊四日とかの個人旅行で滞在中の全移動をタクシーしか使わなかったという場合もあるだろうが、それは旅と言うよりはむしろ『見学』とか『出張』などに類するのでここでは言及しない。 旅行中の移動手段にバスは常であるが、殊に隣国への国境へ向う道はたいていバスに乗っていた。そんなバスにはいつも数十名の者が同乗していたが、隣国へ抜けようなんて連中は皆それぞれにmustな理由があるらしく、どこのバスでも必ず何名かは国境の入国審査や国境前後の検問あたりでひと悶着を起こして脱落していった。ヴィザがなかったり、所持金がなかったり、荷物検査で引っ掛かったりして入国要件を満たさないわけであるが、ついさっきまで車内で談笑していた者たちがポリスやアーミーに引っ立てられていく姿を見るのは決して気安くない。そんなときはどうしようもなく重く嫌な気分になるが、そんなことばかりあるわけでもない。 写真はパキスタン西部の町にあるバスターミナルである。写しきれていないが町外れのターミナルには数十台の極彩色のバスが居並び、とても壮観な絵づらだったわけであるが、そのうちの一台に乗って私はイラン国境を目指したのである。 午後遅くに出発したバスは日没を迎えて砂漠のど真ん中に突如停車し、私以外の数十名の乗客らは静かに整然と外へ降り始めるから私は呆気にとられた。誰かが何をアナウンスしたわけでもなく、誘導するでもないのに皆なにかに導かれたようまっすぐに歩き出すからだ。そうして彼らが向う先を見通せばそこに石列があって砂漠が四角に小さく囲まれていた。外へ出た者達は皆そこへ整列し、祈りを捧げ始めた。彼らが跪く先にあるのは勿論メッカである。 私も外へ出た。砂漠の真ん中で大地の神様に一言断ってから立小便をし、彼らのほうを振り返ると祈りはまだ続いていて、祈りの景色の端には極彩色のバスが一台停まっていて、その周りには乾ききった大地と青い闇色絵具を溶かした夜空が広がっていた。旅はなんて素敵な絵を見せてくれるんだろうと私は思ったのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.05.05 11:40:30
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