テーマ:八重山的随筆(111)
カテゴリ:島ネタ
八重山では一昨年、昨年と相次いで強烈な台風に見舞われ、屋根はぶっ飛ぶ、電柱は曲がる、信号は落ちるし、一週間も断水したり停電したりで挙句いくつかの家屋が根こそぎ消滅したりして二年連続で散々な目に遭ってるわけだが、ここ最近、島の重鎮どもが重鎮然として重々しくも言うのである。
今年もデカイのが来るってよ。 何がデカイって、ナニがデカイわけじゃなく、デカイのは無論台風である。ま、くだらないシモネタは気にしないでいただき話を先へ進めると、島の森羅万象を知り尽くす重鎮どもは確信しているのである。必ずや今年、ドデカイのが一発来ると。 予兆。前触れ。きざし。暗示。何がどうしてどうなってそのような確信を得たのか、そこんところの種明かしをしてくれる重鎮はいないのだが、自分の推理洞察鑑識の種明かしを簡単にしないところが重鎮の重鎮たる所以であるから種明かしは敢えて聞くまい。もしかしたら根拠など何もない当て推量なのかも知れない。しかしである。これまで14年ばかしこの島でやってきた経験則を持ち出せば一定数の島の重鎮どもが言うことは一見テキトーくさく見えても、結果、的を得ているとはよくあることだ。 「え?なんでわかったんですか?」 「わかるんだよ。ボクには。ふふふ」 「いや、だからどうしてわかったんですか」 「どうしてかは教えられないさ。ふふふ」 「いや、ふふふじゃなくて、理由を教えて下さいよ。お願いしますよ」 「ふふふふふふ。今度な」 斯くも不可思議な能力を持つ島の重鎮が口を揃えて言うのである。「デカイのが来るってよ」と。島にお住みでない読者におかれましては、どうぞ他人の不幸は蜜の味とばかりに今後沖縄を襲う台風情報に留意していただければ実はこちらとしましてももっけの幸い。我ら島に住む者どもが壊滅的被害を受けましても指をくわえて見ていてくださる皆様がおればこそ、我らは本土の皆様が救助に来てくださるその日その時まで石に噛り付いても生き延びて見せましょうぞ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[島ネタ] カテゴリの最新記事
|
|