人生の汚点 歌手まがいと同級生たち
ソウルミュージックに耳も心も奪われてからこの夏で二十年になるのである。まだたった二十年なんてヒヨっ子じゃないか。甘ちゃんだ。あまりに恥ずかしくて数字なんて出したくなかったのだが、もう出してしまったものは仕方ない。ま、それでもソウル歴20年なんてお話しにもならないのは間違いない。たかが二十年でソウル音楽の何がわかると言うのか。そう。何もわかったもんじゃない。入門編もいいところだ。ま、ともあれ20年前の23歳の時分に東京は六本木TEMPSで衝撃的に出会ったのがIsley Brothersであり、Marvin Gayeであり、Bobby Womack,Otis Redding,Aretha Franklin であり、で勿論ジェームスブラウンである。私は80年代に彼らの音楽と出逢っているわけで、70年代にピークを迎えていた彼らの一番濃いところはリアルタイムで知らないのが実に口惜しい。しかしながら日本で70年代にピークを迎えていたピンクレディなどの歌謡曲にも安易に流れていないのが消極的自負でもあったりする。だって同級生どもは男も女もこぞってそれらに流れていたのである。それらって、つまりピンクレディだキャンディーズだヒロミ郷だマッチだトシちゃんなんかのB級タレントさんたちである。彼らをB級と呼ぶになんら語弊はないものと思うが、一応格付けラインについて言及しておくと、いくら売れていても流行っていても電波芸者(テレビタレント)として決定的弱点があるのはやはりB級タレントといわざるを得ない。決定的弱点って勿論歌が下手だということである。歌が下手だから結局バラエティ番組なんかに出てはひたすら騒ぎ立てたり、コメンテーターみたいなことをやるか、ドサ回りで地方のせこいホテルでディナーショーなんかで20分歌って1時間喋ってお茶を濁すか、それでも駄目だと『あの人は今』に出るしかなくなるのである。だが、これが歌える奴だとそう簡単には消えたりはしない。歌というぶっとい背骨が一本通っていればウンコみたいな番組でパラノイアみたいに騒ぎ立てずとも済むのである。地方のホテルでディナーショーをやっても最低1時間は真っ当に歌って地方紙のコラムで絶賛されたぐらいにして歌手の面目躍如ともなるのである。でも同級生たちの大半はと言えば、まともに歌も歌えない歌手まがいに無防備にも入れあげたりしているから、小学生の当時から私は同級生たちをなんて恥ずかしい連中なんだ。こんなアホどもと同級生とは我が人生の汚点である。これから長い人生を生きていかねばならぬがこいつらと同級生だったとは口が裂けても明かすまいと心に決めていたのであるが、今ここでカミングアウトしてしまったのでやっぱり私は恥じ入るばかりである。嗚呼すっかりテーマが見えなくなってのでここでやめておこう。