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「洋次郎は私の弟です。弟なのですが、生まれてすぐに別れ別れになっていて、行き来はありません」
「洋次郎さんは、二年ほど前に、事故で他界しました。この子は父親の死を理解できないでいます」 そうだったのか、だから、かおりが私を「お父さん」と呼ぶのか、浩一郎は母子の様子が分かってきた。 「別れ別れになったのは・・・・・・・」 浩一郎は養親から知らされていたことをさち子に話した。 「私も洋次郎さんから聞いたことがありましたが、多くを話しませんでした。話したくなかったのかもしれません」 「私も同じです。話したくても、何の記憶もありませんから、話しようがないのです」 「ねえ、何のお話をしているの?」 かおりが浩一郎の袖を引いた。 「あ、ごめんなさい。お母さんとばかりお話をしていて」 「さあ、ハンバーグを食べましょうね」 「おとうさん、かおりのハンバーグ、小さく切って」 「まあ、おとうさん、おとうさんって」 浩一郎は、ハンバーグを口にしながら、『そうだったのか』と、何回も小さく頷いた。 『そうだったのよ』さち子も、相づちをうつように、小さく頷いた。 『そうだったのか』 (この短編は、2008年12月31日から、大晦日と翌元日に書いています) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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