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テーマ:映画から何かがはじまる(571)
カテゴリ:ショート・ショート
ラストを飾るワ行ですが・・
数が少なすぎますね。もともとワで始まる映画というのは あまりないのでしょうが、1年でご紹介したのは2作。 ドッヒャ~な少なさですね。でも、なんとか・・・ 明日への希望も込めて・・この作品をチョイスしました。 「ワールド・トレード・センター」 あらすじ、感想は↑クリックしてね。 2006年 アメリカ 監督 オリヴァー・ストーン「天と地」「7月4日に生まれて」 出演 ニコラス・ケイジ他 ---ショート・ショート--- 約束 人の為に命を顧みずに、闘う人たち。 ワールド・トレード・センターだけに限らず、 人命を救う仕事に携わっている人たちというのは、 精神的にも、肉体的にもさぞかし、大変なことだろう・・ そういう仕事に携わらなかったとしても、 意外と、身の回りに精神的な救いを得られたと 感じられることはあるのかもしれない。 高校生の頃、急性虫垂炎(盲腸)で入院した。 17歳の期末試験前の頃だった。 痛みに耐えながらも、この入院生活は、 期末試験免除、友情、お年寄りとの触れ合い など、多くのことを学んだと同時に 精神的に救われたと感じられた出来事だった。 近所のそれほど大きくない病院という こともあり、地元の友人が連日押しかけてくれた。 平均すると、手術の翌日から退院までの6日間で、 日に平均8人ほど(リピーターも含め)来てくれた。 同室は、2人のお年寄りの女性。 さぞかし煩かったことだろう、毎日毎日、 病室は溜まり場と化していたのだ。 申し訳ないという思いで、母と姉が来るたびに お詫びをしていた。 3日目の頃、一番近くのお年寄りが声をかけて くれた。 「あなたは、恵まれているね、あんなにたくさんの お友達、みんなの元気な声と生き生きとした 顔をみると、こっちまで元気になれそうだ」 言われた言葉はそのまんま受け取る私なので、 ご老人が内心、どう思っていたかは考えず、 「じゃ、明日から会話に加わって下さいね!」 などと答えた。 次の日から本当に、そのご老人は話に時たま 加わってきた。 小学校からの幼馴染のS君は、その頃恋愛問題に 悩んでいた。どうすればあの子と仲良くなれるか? みたいな・・手紙書こうか~などなど、 にわか人生相談のような病室・・ S君の友人のK君は、これまた毎日一緒にやって来た。 私とS君が色々と話しをしているので、 少々手持ち無沙汰のK君は、そのうち彼女の 話相手に・・・ 彼女は日に日に元気になっていった。 K君が来るのを待ちわびている様子、 そして、K君が来ると待ってましたとばかり スピーディに起き上がる。 他にも小学校からの友人Hちゃん、Oちゃんなども 毎日やってきては、喫茶店のように他愛もない おしゃべりをしていた。 そして、病室は花に囲まれ花瓶も 足りなくなったので、姉や友人が2人の ご老人の周りも飾り付けたりして、 病室は華やかな雰囲気に変貌した。 明日が退院という日、彼女は私に向かって こういった。 「あんなにたくさんの良い友達、これからも 大切にしなさいね、長く生きていて感じたことは、 人間、天に向かってつばを吐けば、必ず 自分にかかる。そういう生き方をしないで、 今のまま、幸せに過ごせるといいね・・ 明日から、寂しくなっちゃうけれど、お花も おしゃべりもありがとう。とっても嬉しかった よ。久しぶりに元気になったような気がしたよ」 涙もろい私、既に涙腺は緩みながらも、 「退院して少ししたら、私がお見舞いに来るから、 もちろんK君も連れて・・(勝手に)」 「そうかい、そうかい、それは楽しみだね~ ねぇ、○○さん!」とその女性は、 もう一人のご老人にも声をかけた。 「ほんと、楽しみだね、待っているからね!」 もう一人の老人。 そして、嵐が過ぎ去ったように、私は病院を 後にした。 しばらくして、K君を呼び出し 「かくかくしかじかで・・お見舞いに・・」 と告げると、K君は嫌な顔せずに 「いいよ~行くいく!」と明るく答えてくれた。 そして待ち合わせして、病院へ。 病院の一番近くの花屋さんへ寄ったとき、 店主の女性が、K君の顔を見てこういった。 「あら、お友達は退院したんでしょ?今日は 誰のお見舞い?あの時はお世話になったわね~ ○○ちゃんは、うちでは有名人だったわ。 毎日、お友達がお花を買っていってくれるので 嬉しかったわ~」 「私が○○です。お世話になりました。」 やや照れ気味に呟いた。 そして病室へ・・・ 病室へ入ったとたんに、その張り詰めた空気に 驚いた。あの彼女が酸素ボンベをしているでは ないか・・・ もう一人のご老人が呟いた。 「あ、○○ちゃん、来てくれたの~ あなたが退院してから、数日して○○さん、 元気なくなっちゃってねぇ・・」 なんだか、居たたまれない気持ちで彼女に近づき、 K君と2人で顔を覗き込んだ。 「大丈夫ですか、○○さん!」とK君。 「花持ってきたよ~」と私。 目を開けた彼女は嬉しそうに呟いた。 「あ~来てくれたの。お花まで持って。 自分のとこにお見舞いに来てくれるなんて 嬉しいね~ 本当にありがとう。」 花を花瓶にさし、少しおしゃべりをして、 身体に障らないようにと、早めに病室を 後にした。 なんともやりきれない思いと、元気だった 時の彼女の言葉が思い出されて、 帰り道の足取りは重かった。 まとまらない気持ちのまま歩いていた 私だったが、K君が呟いた、 「会えて良かったよ、病状はどうあれ、 喜んでくれたじゃない、お花も俺たちにも」 深く考えるのはよそう、K君が言うように 笑顔が見られただけで、良かったのだし、 この日お見舞いに訪れたということで、 多くの友人たちが、辿ってきた花屋経由の 道のりを知ることが出来たのだし、 友人たちの訪問が、私の救いでもあった のだから。 期末試験は逃れたが、彼女の 「天につばを吐けば・・・」 この言葉は一生忘れられない言葉となった。 The End ---オマケ--- 余談ですが、深夜の病院内、泊まりで看病に 来ていた姉は、何度か病院内を徘徊し、 (霊感強いため) 違った意味で、病院内の有名人になった。 そして、人生相談をしていた幼馴染のS君は 2人で考えたお手紙の成果で、なんとか その子とデートにこぎつけたらしい? K君にはその後、オレンジ色に染まった夕暮れ時、 自転車の後ろに私を乗せているときに なにげに告白された。 (今まで生きてきた中のベストショットな景色) 若いっていいわね・・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.11.29 22:09:22
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