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テーマ:たわごと(26898)
カテゴリ:ショート・ショート
昨日の日記で、イギリス/タイの合作映画「バタフライ・マン」
についてレビューしましたが、 書いているときに思い出したお話など~ -----日本語、わかりません。----- それは、南中を過ぎた陽射しがじりじりと 肌を焦がすような夏の暑い午後だった。 20代半ば少し前の私は、とある街のとある 駅前でお付き合い中の彼氏と待ち合わせをしていた。 都心から離れたその街は、海にも近く元々は漁師町。 潮の香りが、たたずむ私の鼻腔にも届いてくる。 ふと時計に目をやると、珍しくいつもよりも早くに 待ち合わせ場所に着いてしまったことに気がついた。 どちらかというと、南方系の顔をしている私。 はっきり言うと、地黒。 夏の陽射しを浴びれば、散歩しているだけでも こんがりと良い色に焼けてしまうような 日焼けサロン知らずの女である。 言うまでもないが、冬の陽射しでも焼ける。 美白は諦め、とことん焼いてやる~と、 その日も二人乗りのヨットでセイリングの予定? もしくは、ボディサーフィン(ただの海遊び) の予定であった。 しかし、時間はまだまだある。迎えは来ない。 じっと待つのが苦手な女は、ふと横を見た。 賑やかな音楽、きらびやか?言い換えれば やや悪趣味な看板。 視線の先にあるパチンコ屋に気づいた私は、 吸い寄せられるように、店内に入った。 紫煙でもうもうとしている店内は、一種独特な 熱気で盛り上がっていた。 時間つぶしのつもりで、空いている椅子に 腰掛け、100円玉5枚ほどでパチンコを始めた。 すると・・あれよあれよ~という間に 7が三つ揃ったのであった。 俗に言うスリーセブンである。大当たり!!!! そして、またまた続けて~大当たり。 ものの15分ほどで連続ヒットのラッキーな昼下がり。 予期せぬ出来事に呆然としていた私の元へ、 パチンコ屋の店員が駆け寄り「打ち止めだよ~」 と告げた。 予想外の展開に唖然とし、言葉を失っている 私の顔をのぞきこんだ店員の表情が変わった。 あっ、そうだったのか~ という様なピカット君の 表情で少し大きめの声、大胆な身振りを交え、 再度、色黒の女に向かって声をかけた。 「This マシーン~ ゲームオーバー!!よ!」 「わかりますかぁ~? オーバーオーバーよ!」と・・ 一度胸の前で交差させた腕を左右に伸ばし、 身体でもゲームの終わりを告げようとしていた。 涙ぐましい努力である。仕事熱心な店員である。 ことの次第がようやく飲み込めてきた私だったが、 どうしてよいか判らずにいた。 ここでいきなり日本語を語るのも、申し訳のないような 気になってしまったのである。 途方に暮れていた私に店員のトドメの一撃・・ 「ユー・・タイ、フィリピンどっち?」と~ あ・ん・ぐ・り・・・Angryではなく~ えっ?そこまで言うか・・・という感じだった。 今でいう、どんだけ~という感覚だろうか? ここまで言われると、意地でも日本人ですと 言えなくなってしまう。 もうどうにでもなれ~の心境で、私は呟いた。 「Thank you. I can't speak japanese~」と 親切な店員さんは、カウンターまで重いパチンコ玉を 運んでくれた。 そして、両替用のチップを受け取った私に、 明るい微笑みとともに、「まぁた、来ぃてねぇ~」と 英語っぽい日本語で言った。 店を出て、眩しい陽射しに目を細めた私は 懐具合もよろしく、待ち合わせ場所へ。 今回は立場は逆転し、遅刻状態であった。 「どこにいたの?」と尋ねる彼氏に 私はただただ聞いた。 「あたし、タイ人に見えるかね~?」 「フィリピン人には、見えるけどね~ なんで?また間違えられた?ギャハハ・・」 絶対おごってやんない・・・ 懐をきつく締めなおした夏の昼下がりであった。 The End お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.02.02 00:06:03
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