|
テーマ:おすすめ映画(4068)
カテゴリ:ドイツ映画
≪統一後のベルリンを舞台に一人の青年の悪戦苦闘ぶりと母親への愛情を描いた作品≫
1989年東ベルリン。子供の頃宇宙飛行士になるのが夢だったアレックスは今はテレビの修理の仕事をして、母と離婚した姉とその娘と一緒に暮らしている。 父親は10年前女をつくって西側に亡命。母親は悲しみのあまり打ちひしがれ、そして社会主義の発展に身を尽くす。 愛国心の強い母親に隠れてアレックスは反体制デモに参加したが、逮捕されるのを偶然母親が見てしまい心臓発作を起こし倒れてしまう。昏睡状態が8ヶ月も続いた母親。その間にベルリンの壁が崩壊し、社会は大きく変わっていた。母親が長い眠りから覚めた時、医師は僅かのショックで叉発作を起こし命取りになるという。母親がショックを起こさないように、昏睡状態前と同じ状況をつくりだそうとするアレックスだが… 20年前まさかソ連が、ベルリンの壁が崩壊するなんて私は考えた事すらありませんでした。それが一度社会の大きな波が押し寄せると、あれよあれよと言う間にそのうねりは奇跡とさえ思えるような動きをして多くの社会主義国を呑み込んでいきました。 もしも自分が知らない間に今の体制と全く異なった体制の国になっていたら、誰だって浦島太郎状態です。そんな驚く状態にさせない為にアレックスは母親に悟られないよう必死で裏工作をします。実は街も、人も資本主義の世の中になってからあっという間のスピードで変わってしまっているのに、母親の周りはそんな事は微塵も感じさせないようにしなくてはならないのです。その為のアレックスの東奔西走ぶりがおかしかったり、いじらしかったり。特に友人と以前の東ドイツの頃のようなニュース番組を作るところは笑えます。でたらめのニュースで全て我が国がナンバーワン、資本主義の国々は社会主義国家を羨んでいる、と言った感じです。でも当時の東ドイツ、同じように作ってニュースを流していたんだと思いますが。 最後まで嘘をつき通す事が良かったのか、そうでないのか、いろんな考えがあると思いますが、私なら真実を知って死にたいような。でも自分自身でなく親にだったらどうするか、とか考えると難しいですね。この映画の場合は自分が逮捕されたのを見た事によって母親が発作を起こしてしまうわけですから、アレックスの自責の念もあるでしょうし。 でもこの母親も実は大きな嘘をついていて、そのあたりはなるほどな、と頷けます。 知り合いに旧東ドイツ出身の人がいますが、彼女は統一前は常に家の内と外では二枚舌を使わなければならなかったと言っていました。心許せる家族にだけしか本音を話す事は絶対になかったのです。 この映画でも母親の打ち明け話にはその時代の恐怖の面影を感じられました。 着るものが変わり、コカ・コーラやハンバーガー・ショップが建ち並び、流通の仕組みを実感でき、西側の文化にショックを受ける。そんな様子が当時の映像を交えながらドキュメンタリーを観ているような感じで進みます。 でも何でも手に入るようになった今、自由になった時人はフッとノスタルジックになるのでしょうか。この監督は旧東ドイツ出身の方かどうかはわかりませんが、不自由だったけどちょっぴりあの頃が懐かしい、という思いで作られた映画のような気がしました。 GOOD BYE, LENINI! 2003年 ドイツ 監督:ヴォルフガング・ベッカー 出演:ダニエル・ブリュ-ル、カトリ-ン・ザース お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ドイツ映画] カテゴリの最新記事
|
|