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カテゴリ:フランス映画
≪アラン・ドロンの危険な香りとイタリアの美しさを舞台にした極上のサスペンス≫
ご覧になった事がある方は多いと思います。私の大好きな映画でビデオも持っていますが、もうDVDを買った方がいいでしょうね。アラン・ドロンが見たくなって夕べ久しぶりに観ました。 貧乏なアメリカ青年トム・リプリーは、幼馴染でお金持ちのドラ息子フィリップ・グリーンリーフの父親から5000ドルの約束で、フィリップをアメリカへ連れ戻す為にイタリアまでやって来た。彼の家来のようにくっついていたトムだが、フィリップはトムを小間使いのように扱い邪険にしていた。そしてある日フィリップから裸でボートに放り込まれたトムは全身火傷のようにひどい日焼けをしてしまう。トムは決意する。フィリップを殺し、お金もフィアンセのマルジュも何もかも彼から奪ってしまおうと。そして実際に計画を練りフィリップを殺して海に死体を放り投げる。 観終わってため息が出てしまう映画です。やるせなさ、緊張から解きほぐされた開放感、でも、それでもまだ残る緊張と余韻、そして良い映画を観たという満足感。今思い出しても又ため息が出そうです。 燦燦と太陽の降り注ぐ紺碧の地中海のヨットの上での殺人。サインの練習、偽造パスポート、アリバイ工作。フィリップになりすますためにトムが仕掛ける様子や、二つの殺人の後に平然と物を口にするところなど、演出の巧さが光ります。二度目の殺人の後、死体を階下へ運ぶ時にらせん状の階段下からのアングルで撮る死人の手。ナポリの市場を散策する何気ない風景。ホテルを逃げる時に玄関先に置いておいた旅行鞄を取りに行くところなど、今思い出してみてもカメラワークの素晴らしさに感心します。二度の殺人とも血を見せませんが、そこでの事が起きたであろうと想像させる巧さもさすがです。 この主人公はアラン・ドロンより他に考えられません。なんて美しいのでしょう。だけどその瞳はあまりに暗く、そして野心を帯びた卑しい瞳なのです。彼のアップになるとカッコ良さにポワーっとなりそうですが、その瞳の奥に潜む妖しい、危険な信号に思わずハッと我に返ってしまいそうです。 こんなに危険で冷酷でしかもカッコイイ殺人者が主人公だと、彼に同情すらしてしまいます。 何もかも手に入れて成功したかのように思えたのも束の間、陸に揚げられる船のスクリューに絡まったロープの先にあったものは…。 「太陽がいっぱいだ」というトムの台詞。そして最後まで見せないで、観客に想像させ、美しい地中海が映し出されるラスト。この素晴らしいラストを観たら、ため息が出るのも無理はない、と思うでしょう。 これは『リプリー』と比べてはいけない作品なのです。 クレマン監督とアラン・ドロンのコンビが生んだ名作に、ニーノ・ロータの甘美なメロディーが切な過ぎます。 PLEIN SOLEIL 1960年 フランス/イタリア 監督/脚本:ルネ・クレマン 原作:パトリシア・ハイスミス 出演:アラン・ドロン、マリー・ラフォレ、モーリス・ロネ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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