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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:フランス映画
≪貧しいけれど温かい。切ないけれどやさしい≫
旧ソ連のグルジアが舞台という珍しい映画です。 エカおばあちゃんは娘のマリーナと孫娘アダと一緒に暮らしている。フランスで働く息子のオタールから手紙が来るのを楽しみに待つ毎日だ。ある日オタールが事故死したとの知らせが届くが、それをおばあちゃんに知らせる事が出来ないマリーナとアダ。おばあちゃんを悲しませないようにと、オタールの振りをしておばあちゃんに手紙を書き続けることにした。 グルジアはお相撲さんの黒海の出身地として有名ですが、ソ連が崩壊してからは財政難で豊かな国ではなくなったようです。この作品の中でもお風呂のお湯は止まるは、停電はしょっちゅうというシーンが出てきますが、それが実情なのでしょう。貧しい暮らしの中、マリーナは家にあるものを次々と売ります。グルジアでは医者をしてたらしいオタールも、今はフランスで肉体労働に従事している模様。時々電話をかけてくれ、仕送りもしてくれるオタールはおばあちゃんにとって自慢の息子なのです。 そんな中女三世代の家族の、口げんかしながらも仲が良いというよくある風景が描かれています。 おばあちゃんはスターリン信望者でありながら、フランス語を話し、いざと言う時は物事に固執しない結構先進的な考えの持ち主。 マリーナは何も疑わずに生きてきた世代の代表。今の情勢に不満はあるものの行動を起こす事はしない。 そしてその娘のアダはソ連崩壊後に育ち、フランス語に堪能で違う世界を見たいと思っている若者。 二組の母娘は同じ家に暮らしながらも、生きた時代背景の違いから考え方も違う。でも、衝突をしながらもおばあちゃんを思う気持ちは同じで、やさしくも本人達にとっては辛い嘘をつくのです。 そしてこのおばあちゃんが実に賢明な人なのでした。 『グッバイ、レーニン!』に似た展開もありますが、ラストのアダのとった行動は…。アダよりもあの時のおばあちゃんの表情にむしろ胸が詰まりました。 みんなが思いやりのある人たちなのです。だからこんな嘘もつけるし、つかれた側もその嘘に上手くのってあげられる。 とっても地味なのですが、温かい気持ちになれる作品でした。 DEPUIS QU'OTAR EST PARTI / SINCE OTAR LEFT 2002年 フランス/ベルギー 監督:ジュリー・ベルトゥチェリ 脚本:ジュリー・ベルトゥチェリ、ベルナール・レヌッチ 出演:エステール・ゴランタン、ニノ・ホマスリゼ、ディナーラ・ドルカーロワ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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