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カテゴリ:フランス映画
≪人生の終着駅に立つ時、今までと違った人生を歩いてみたいと思うのだろう≫
この映画ルコント監督作品だったのですね。そうとは知らずに観始めて途中で気付いたのですが、とっても味のある作品でした。 見るからに堅気ではなさそうな初老の男が、列車に乗ってフランスの田舎町の駅に降り立った。シーズンオフでホテルは休業中。泊まる場所を探していた男は、町の薬局に偶然居合わせた元文学の教師の屋敷に週末まで泊めてもらうことになる。実はこの男銀行強盗を計画しているのだが、それを知った元教師はその決行の日が自分の心臓の手術日と同じ日だと知り、二人の間には次第に友情が芽生えてくる。 ルコント監督の作品は『仕立て屋の恋』しか観た事はありませんが、あれが何とも言えない後味の悪い印象で、決して好きではなかったのだけど妙に未だに心に残る作品だったのです。本作品を観ていく途中でルコント監督の映画だと知って、又後味悪いのか、と思って観ていたのですが、これはちょっと違いました。 男はこの銀行強盗を最期に足を洗おうと思っています。そして元教師は手術の恐怖や、もしかしたら自分の命はそう長くはないかもしれない、と思っています。生い立ち、外見、性格から正反対のふたりですが、それぞれ自分の人生の終わりに近づいて、全く自分とは違うものへの憧れ、やり残したことへの後悔も強いのです。一見相容れなさそうなこのふたりの間に奇妙な友情が芽生え始め、そしてラストはおそらく人生の終着駅で今まで成し得なかった事をしているような気がしました。 ラストは観る人によって感じ方はいろいろあるのかもしれません。 私はちょっと悲しいけれど、でも決して後味の悪いものではなく、むしろ全く違った自分というものをあのふたりが実践しているようで清々しい気もちになりました。 ふたりの会話が面白いです。 特にパン屋の店員の件や、シューマンの音楽の件。シューマンとかショパンの音楽をそういう風にとらえているのか、と。そう思って今度両者の音楽を聴いてみようかな。 屋敷のりっぱな家具や調度品。初めてふたりが出会い、元教師の家まで歩く朝もやの中の色合い。独特の色で、以前観た『仕立て屋の恋』が陰鬱な感じのグレーだとしたら、この作品はそれよりほんのり明るいグレーもしくは、ちょっと深めのブルーと言う感じ。 タイトルも意味深で、あ~、フランス映画だなあ。 L'HOMME DU TRAIN 2002年 フランス 監督:パトリス・ルコント 脚本:クロード・クロッツ 出演:ジャン・ロシュフォール、ジョニー・アリディ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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