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カテゴリ:フランス映画
≪都会の青年達と山のお針子の愛と友情の物語≫ これも以前から観たいと思っていた映画ですが、やっと観る事が出来ました。 文化大革命の最中。親が医者という知識階級と言う事で、反革命分子の子としてチベットとの国境にある山奥の村へ再教育の為に送られたマーとルオ。彼らはそこで仕立て屋の美しい孫娘と出会う。二人とも同時にこのお針子に一目ぼれだったが、積極的に出たルオは文盲の彼女を無知から救いたいと、当時は禁書だった西洋文学を読み、字を教えようとする。同じく再教育でこの村に来ていた別の青年が西洋書物を隠し持っていると聞き、それを盗もうとするが… 中国の言わば暗黒時代とも言える文化大革命。金や知識は悪とされ、西洋的ブルジョア主義と非難され、知識人のほとんどはことごとく監獄に入れられたり、その子供達は山奥やとても不便な場所に再教育という名の下、過酷な労働を強いられたと聞きます。 そう言う背景がありこの映画が作られたのですが、文革と言うとユン・チアンの「ワイルドスワン」を思い出し、さぞかし過酷で恐ろしいものだったかと想像してしまいます。しかし、ここではちょっとだけ顔を背けたくなる場面はあっても、それほど恐ろしかったり労働の過酷さをつぶさに描いたシーンはなく、どちらかと言えば文明とはかけ離れた場所でのんびりと過ごす村人と、再教育とは言っても比較的自由な生活を送っていた青年達が描かれています。ただ、監督の自伝的部分がある作品とは言っても、これは中国で撮影された事もあり中国当局の厳しい審査を通らなければならなかったわけですから、そのあたりはありのままを描く事は許されなかったのだろうという想像はつきますが。 でも意外とこの映画のように、都会っ子の青年達は時には悪知恵を働かせ苦難を潜り抜けてきたのかもしれません。そして、もしかしたら監督はその辛かった思い出を敢えて描こうとはしなかったのかも。 何にも知らなかったお針子が一冊の本に出会ったことにより何かに気付いてしまった。そして、それは青年達の予想もしなかった事を招く結果になってしまう。彼女の身の上に起こった全ての事は青年達がこの少女に恋したことにより、何とか無知から救いたいという思いからの行動だったのだけど、彼らの思い描いた未来より、影響を受けた少女の気持ちはそれをしのいだものだったということでしょう。彼女の身に起きたルオに責任のある行為が一番それを後押ししたものだったのかもしれません。ただ、あのお針子の最後の行動があまりに唐突に感じてしまいました。「彼女はどうなったのかなー」と後のマーとルオの気持ちが私にもわかります。まだ一冊の本を知っただけの知識がなくて美しい少女が・・・想像が出来なくもないです… ただ、その一冊は彼女に夢と希望を与えた事は事実なわけで、その辺りが何とも言えない気分になるのですが。 仙人でもいそうな天空の村。そこにヴァイオリンの音が心地よく響いていました。 抑圧された中にも夢を語り合ったり、文学に触れたいと思ったりした事は誰にもあるはず。そしてそれに一旦触れてしまったら、欲望はどんどん増していくはず。もちろんそれを恐れて毛沢東は禁書にしたのでしょうが。 お針子を演じた女優と、二人の青年達がとても瞳が澄んでいて良かったです。 ルオは要領良く振舞うタイプで、女性にも積極的。マーの気持ちがわかっていたにもかかわらず、自分が留守の間マーにお針子の事を頼むあたり、ずる賢いかな。 マーを演じた俳優は『山の郵便配達』に出ていましたが、女性に対して引っ込み思案だったけど彼の愛し方の方が誠実で好きです。でも若い頃ってその誠実と言うものの良さがわからず、ルオタイプの人に惹かれるものです。その辺りはお針子も同じだったのですが、後にマーの気持ちがわかったのじゃないかと思います。 その二人の間を何となくどちらにも気を持たせるような素振りの最初の方は、三角関係になるのではないかとドキドキしてしまいました。 制作はフランスと言っても、監督も出演者も中国人で中国語、ロケーションも中国とくれば中国映画にしても良いのでは、と思いますが、しかし、現在の中国ではいろいろ制約が多くてこの映画は撮れなかったでしょうね。監督は在仏十数年。3人の若者の関係もどこかフランス映画を思い出させるものがありました。だからやっぱりフランス映画なのですよね。 BALZAC ET LA PETITE TAILLEUSE CHINOISE 2002年 フランス 監督/脚本/原作:ダイ・シジエ 出演:ジョウ・シュン、リィウ・イエ、チュン・コン、ワン・シュアンバオ、ツォン・チーチュン お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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