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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:中国映画
≪それぞれがHEROだった≫ チャン・イーモウ監督のアクション映画ですが、所謂香港系のアクション映画とはちょっと違います。 紀元前200年、戦乱の中国。秦で一番小さな村の官吏である無名は、3人の刺客を殺した功績で、後の始皇帝、秦王に拝謁を許された。無名は秦王に刺客を殺した経緯を話し始めたが… 秦王は、自分の命を狙う暗殺者を避ける為、百歩以内の距離には誰も近づけようとしません。無名にも最初は百歩離れた距離から話を聞き始めます。無名は刺客を暗殺した経緯を話し始めますが、秦王が疑問を持ち問いただすと、彼の話は二転三転します。 その逸話毎に描かれるシーンの色合いが変わります。赤、白、青、緑、そして秦国は黒。色のテーマと物語を絡めるアイディアとその美しさは絶品。特に、黄色いイチョウの舞う中、赤い衣装で戦うシーンは見事。その他のそれぞれの色合いの美しさは幻想的で、本当に目を見張ります。 一斉に放たれる矢、数万にも見える秦国の兵士達、どこまでも計算し尽くされた映像美。細部にまで凝った一糸乱れぬ音。そして、湖、山、砂漠など、中国の素晴らしい風景がその色合いに、ストーリーにマッチして素晴らしいし、中国の広大さとその国土の多様さにも改めて驚かされます。 無名が語るストーリーが変わるごとに、初めはあまり判らなかった登場人物の想いが次第に理解できるようになっていきます。そして、無名の熱い想いとは、平和な世の中を願う、ただそれのみだったということなのでしょうか。登場人物それぞれの関係、想いが深い。 「剣の極意は人を殺める事にあらず。人を生かし、天下の為にあるべし。」正に日本の武士道にも通じる言葉です。昨年の大河ドラマの中で、武田信玄が似たような事を言っていたように記憶しています。 中国、香港のスターが集結した見応えある映画でした。それぞれの役柄にマッチした俳優の人選、特に秦王役のチャン・ダオミンの冷静な感じが後の偉大な始皇帝を思わせます。偉大だけど冷淡で、怖ろしくもあったわけですが。まるで今の中国政府のよう。 マギー・チャンの貫禄には、いくらチャン・ツイィーでもここではまだ適わない、とも感じました。 大儀の為に命を落とす。現代においては、こういう信念は果たしていいのかどうか疑問ですが、戦国の世においては美しいと感じられます。 これだけの作品を作れる中国映画界は素晴らしい。ただ、ワイヤーアクションがどうも…すごいアクションを見せてはくれるのだけど、一つのワイヤーアクションがあまりに長すぎて私はちょっとダメ。まるで、星飛雄馬が大リーグボールを投げる時、脚を高く上げたまま目の中の炎がグラグラと燃え、なかなかボールを投げない時のような、「ウソーッ!」と言う気分や、笑ってしまうのと似ています。 2002年 中国 監督:チャン・イーモウ アクション監督:チン・シウトン、トン・ワイ 脚本:リー・フェン、チャン・イーモウ 衣装:ワダエミ 出演:ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツイィー、トニー・イェン、チャン・ダオミン 他 DVD お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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