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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:フランス映画
以前から観たいと思っていた作品です。 今は亡き両親の家を売るために、カミーユは生まれ故郷のブルターニュ地方、ウェッサン島に帰って来た。そこで一冊の本を手にした彼女は、両親の秘密を知る事になる。その本は1963年から始まる。灯台守のイヴォンとその妻マベの元に見習いのアントワーヌがやって来る。 イギリスのケルト人を先祖に持つ島の住民達は、厳しい自然に打ち克つために強い結束を持ちそこで暮らしていたのですが、排他的で、一年前にこの島にやってきた神父も、なれない釣りをする事によって溶け込もうと必死です。アントワーヌも冷たい仕打ちに合いますが、彼はいつも穏やかで、どんな仕打ちにも歯向かうことなく、むしろそれを受け入れているかのように見えます。はじめは冷たい目で見ていたイヴォンもアントワーヌの誠実さを見るにつけ、次第に心を許していきます。仕事仲間、と言う意識が次第に芽生える。 そして又、イヴォンの妻マベもアントワーヌに惹かれていく。 アントワーヌ、イヴォン、マベのそれぞれのキャラクターが丁寧に描かれていて、それを演じる俳優達もそのキャラクターを上手く演じています。 堅実な妻がよそ者のアントワーヌに惹かれる様子。特にこれ、と言ったきっかけがあるわけではありませんが、アルジェリアからの帰還兵で手が不自由な、よそ者で皆から煙たがられ、だけど、元時計職人で器用なアントワーヌが父親の形見のアコーディオンや壊れた時計を修理した、そんなちょっとした事に胸をときめかせ、同時に胸を痛めてしまう。気づかれないように、でも心配なような、熱いような微妙な眼差しをアントワーヌに向ける大人の女性を、ボネールが実に上手く演じています。 実は最後の方で分るアントワーヌのある秘密。痛みを背負っているからこそ、島でよそ者扱いされても、いつもにこやかでいられる彼の雰囲気はデランジェールという俳優だからこそなのかもしれません。 そして、意外にも一番印象深かったのがイヴォンのトレトン。無骨で無愛想なイヴォンですが、マベへの一途な愛とアントワーヌへの思いと彼への態度の変化など、揺れ動き葛藤する様子がとても切なかった。 灯台というと海に佇みライトを照らす、なんとなくロマンティックな印象さえ持ってしまいますが、灯台守はそこで荒れ狂う波と対峙し、船の安全を守る孤独で、厳しい仕事と言うのもこの映像は教えてくれます。 1人の女性を巡ってどういう結末を出すのか、ちょっとハラハラするのですが、観ながらある程度予想はつきました。 邦題の『灯台守の恋』の「恋」部分よりも、私は原題の方のイヴォンとアントワーヌの仲間と言う意味合いの方がより強く感じられました。結局一番の懐の深かったのがイヴォンなんだと思います。 不倫の恋の物語の切なさと言うよりも、男同士の友情の切なさの方が胸を打ちました。 L'EQUIPIER 2004年 フランス 監督:フィリップ・リオレ 脚本:フィリップ・リオレ、エマニュエル・クールコル、クリスチャン・ジェジェ、クロード・ファラルド 出演:フィリップ・トレトン、グレゴリー・デランジェール、サンドリーヌ・ボネール、エミリエ・デュケンヌ、アン・コンザイ二ー ハピネット 灯台守の恋 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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