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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:フランス映画
1968年、五月革命の頃。南仏の田舎町ヴューザック家の夫人がなくなり、長男のミルは娘や兄弟たちに連絡する。しかし、集まった身内の話題は革命や遺産配分の事ばかり。そして革命の影響で葬儀屋までストをすると言う。 1960年後半、学生運動は世界中で盛んだったのですね。フランスのその五月革命の頃に亡くなったブルジョアの夫人。しかし、その死を悼むと言うよりは、みんなの頭にあるのは革命や遺産、挙句の果てにはこの邸を売った方がいい、とまで。人の死に対して何の尊厳もないようで呆れ、うんざりするのはミルだけで。 人生最大の儀式は葬式、だとは私の父が昔よく言っていた言葉ですが(今は自分も年老いてその事について口にはしませんが)、そんな言葉を聞いていた私にはこの登場人物の有様は当然理解できず、ミルが気の毒でなりません。しかし、葬儀屋のストで一日葬儀が延期になって自分たちで遺体を埋めようと言う話になったり、空いた一日でピクニックに行ったりする彼らを観ていると、このフランスブルジョアのお気楽さとか享楽主義に逆に感心してしまいます。 伊丹十三監督の『お葬式』でもそうだったように、葬儀では隠していても本心が出てしまう、と言うそこに悲しさや滑稽さが見え隠れしてしまうものなのでしょう。普通の家庭より、ブルジョアジーにはそれが顕著かも。ルイ・マル監督はそのあたりを皮肉って描いたのかもしれませんね。 でも、ラストに何事もなかったかのように又それぞれの場所へ帰っていく人たちを見送り、一人そこに残るミルの何とも寂しそうな顔が物語るのは、結局跡取りは大変だな、と言う事。 五月革命のさ中、一人の死に対して巻き起こるドタバタ劇。不快に陥ることなく、クスッと笑わせていただきました。 それにしても、ピクニックでの身内同士の恋愛模様は、さすがおフランスです。 MILOU EN MAI 1989年 フランス 監督:ルイ・マル 脚本:ルイ・マル、ジャン=クロード・カリエール 出演:ミシェル・ピッコリ、ミュウ=ミュウ、ミシェル・デュショーソワ、ドミニク・ブラン、ポーレット・デュポスト 他 【23%OFF!】五月のミル HDニューマスター版(DVD) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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